過去に類を見ないほど高クオリティーのノミネート作品群


【画像94点】「福岡ゲームコンテスト“GFF AWARD 2019”最終審査会&CC2松山社長×ファミ通.com三代川編集長の赤裸々すぎる!? ゲーム業界トークショーリポート」をファミ通.comで読む(※画像などが全てある完全版です)

 2019年3月9日(土)に、福岡県福岡市の福岡市科学館6階サイエンスホールにて、第12回福岡ゲームコンテスト“GFF AWARD 2019”が開催された。同コンテストは、全国の学生や若きクリエイターたちによる応募作品(ゲームソフト部門、ゲームグラフィック・アート部門、ゲーム企画部門)の中から、優秀な作品を選考・表彰するために2007年から開催されているもの。

 主催となるGFF(GAME FACTORY'S FRIENDSHIP)は、九州・福岡のゲーム制作関連会社が加盟している団体のこと。レベルファイブ代表取締役社長/CEOの日野晃博氏が会長を、サイバーコネクトツー代表取締役の松山洋氏、ガンバリオン代表取締役社長の山倉千賀子氏が副会長を務めている。


 開催から12回を迎えたGFF AWARD。今年の応募はゲームソフト部門309作品、ゲームグラフィック・アート部門が468作品、そして昨年から新設されたゲーム企画部門には267作品と、合計1044作品に。ゲームソフト部門では第1次審査を通過した64作品の中から、第2次審査を経て絞られた優秀賞受賞4作品による公開最終プレゼンテーションが行われ、その結果から大賞が選出されることとなる。ゲーム企画部門とゲームグラフィック・アート部門については、優秀賞はすでに決定しており、会場ではプレゼンテーションと受賞式が行われた。


 会場には、ゲームソフト部門の最終審査を行う審査員として、日野晃博氏(レベルファイブ)、松山洋氏(サイバーコネクトツー)、山倉千賀子氏(ガンバリオン)、松隈浩之氏(九州大学 大学院芸術工学研究員 コンテンツ・クリエーティブデザイン部門 准教授)が登場。ことしはゲスト審査員としてファミ通.com編集長の三代川正(Gzブレイン)が登壇した。

 GFF AWARDでのゲームソフト部門の受賞作は、公開プレゼンテーション後に会場にて審査員による投票と協議が行われ、その場で大賞受賞作品が決定。表彰が行われる。ノミネートした学生たちには3分間の最終プレゼンテーションの時間が与えられ、プレゼンテーション後には、日野氏、松山氏、山倉氏、松隈氏に三代川を加えた5名の審査員による講評と質問が行われることに。その一部始終が目の前でくり広げられるため、観覧に来たお客さんたちの中には、思わず固唾を飲んで見守る人もあったほど。今回、そんな緊張の最終審査の模様と併せて、コンテスト中に開催されたサイバーコネクトツー松山洋社長と、ファミ通.com編集長三代川による“ゲーム業界の今がわかる”特別トークショーで語られた内容についてもお届けする。


ビジュアルと企画部門 優秀賞受賞プレゼンテーション


 まずはゲームソフト部門の最終公開プレゼンテーションに先立ち、“ゲーム企画部門”と“ゲームグラフィック・アート部門”の表彰が行われた。“ゲーム企画部門”は、昨年から新設された賞で、企画のみでの応募が可能となっているのが特徴だ。またゲームグラフィック・アート部門は、イメージビジュアルだけで作品を表現するというもの。どちらも直接ゲーム制作のノウハウがなくとも応募が可能な賞だからか、ことしも多くの応募があった。そんな中で見事優秀賞に輝いたのは、以下の2作品だった。


ゲーム企画部門 優秀賞


タイトル:『いそげ!モグロボ』
制作チーム名:総合学園ヒューマンアカデミー名古屋校 平松 早紀さん

 地中を掘り進むモグラのロボットになり、都市に飛来する隕石からビルなどの建造物を守るパズル要素の強いアクションゲーム。隕石が落下する前に、建築物の周囲の地面を掘って建物を沈めることで衝突を回避していく。飛来する隕石の順番から最適なルートを考えて掘り進むのがポイントとなる、という企画。マルチプレイで楽しめる要素も企画に盛り込まれており、隕石の飛来にみんなで声を掛け合って対応するといった、ワイワイ複数人で楽しめる企画にもなっていた。


 本作の企画を生み出す際には、平松氏が通学中に目にしていた風景が発想の源泉になったという。「あの大きなビルを沈められたら迫力があるだろうな」とふと考えたことから、隕石から建物を沈めて守るというアイデアが生まれたそうだ。いつもの通学ルートも、目的によって微妙に変化するといった日常の体験が大きく影響を与えたのだとか。


 平松氏のプレゼンテーションを受けて、山倉氏の講評として「企画書から伝わる世界観にブレがまったくなく、すぐにでも作り始められるレベル」だと、審査員一致での受賞だったことを明かした。また、企画書を読むだけで、プレイヤーにどんな風に楽しんでもらうのかが明確だったことも受賞の大きな要素になったという。


ゲームグラフィック・アート部門 優秀賞


タイトル:『WEBBIT』
制作チーム名:宇都宮ビジネス電子専門学校 尾形 晃希さん


 グラフィックやアートだけでゲームの世界を表現する、ゲームグラフィック・アート部門。今年の優秀賞に輝いたのは、尾形氏が手掛けたSF的な作品『WEBBIT』。


 尾形氏は、“宇宙を舞台にお掃除ロボットを操作して惑星のゴミ(スペースデブリ)を掃除していく”という架空の作品を、イメージビジュアルで見事に表現。自身もかつてゲームショップの店頭などでゲームのパッケージを見て“ひと目ぼれ”をしてワクワクした経験があり、今回その感覚をビジュアルで表現したいと考えたと語った尾形氏。「ゲームの内容を具体的にイメージしてもらえるようにするため、キャラクターをゲーム中で登場するであろう3Dで描いた」のだという。

 九州大学の松隈氏は、「狙い通りにひと目ぼれしてしまった」と好評価した。「リサイクルという社会問題がテーマになっている点も、ビジュアル一枚で考えさせられてよかった」と主題の選択についても評価した。


 ゲーム企画部門と、グラフィック・アート部門の優秀賞の授賞式を終えて、いよいよゲーム部門の最終プレゼンテーションと最終審査へ。ノミネートされた優秀賞受賞作4作品の公開プレゼンテーションが行われることとなり、4チームそれぞれが持ち時間3分で作品をプレゼンテーションしていった。最終審査は、毎回作品の総合的なクオリティーの高さに加え、プレゼンテーションの印象も加味して、審査員が「クリエイターとしてもっとも期待が高い」と思ったチームに投票するというルールのもとで行われている。ここからは、最終候補に残った4作品のプレゼンテーションの模様をお伝えしていく。


公開プレゼンテーション ノミネート作品1


タイトル:『Devil's Slave』
制作チーム名:ECCコンピュータ専門学校 Project Liberator


 最初のプレゼンテーションは、ECCコンピュータ専門学校のチームProject Liberatorによる3Dアクションゲーム『Devil's Slave』。プレゼンテーションを担当したProject Liberatorの谷氏は、AAA(トリプルA)級のグラフィックと、“回避”に重きを置いたシームレスなアクションをテーマに掲げて開発を進めたことをアピールした。


アンリアルエンジンで制作されたという本作は非常に高い完成度を誇っており、審査員一同も、学生の作品としてではなくプロ目線で吟味したとのことで、松山氏からは「ジャンプからの縦切りのモーションには、ヒットストップは不要なのでは?」など、細部にわたるアドバイスが入ったほど!

 三代川からは、「このまま商品になっていてもそん色のないレベルのグラフィックと、操作感に驚かされた」と話しつつも、攻撃がXボタンとYボタンに振り分けられながら、回避もRボタンで行う操作系統から、「右手に操作が集中するのが気になった」とひと言。しかし、それくらいしか難点は見当たらないほどの完成度だったため、「この先の作り込みについての構想なども気になってしまった」と質問を投げかけた。高評価をもらえたことに「正直うれしいです」と答えた谷氏だが、現状の状態がすべてを出し切ったもので、今後の展開は白紙なのだそうだ。


公開プレゼンテーション ノミネート作品2


タイトル:『DEEP HOLE』
制作チーム名:アミューズメントメディア総合学院 TEAM FERRET


 続くアミューズメントメディア総合学院の学生によるTEAM FERRETより、縦穴を下へ下へと降りながら探索していくアクションゲーム『DEEP HOLE』のプレゼンテーションが行われた。チーム代表の皆川氏は、本作を通じて、プレイヤーが大きな穴を探険していく体験をしてほしかったと話した皆川氏。本作は上に進んでいくジャンプタイプのアクションではなく、その逆として“穴を降りる”点こそに特色があると考えたが、それだけでは単調でつまらないものでしかなかったという。

 そのため、穴を降りるうえで障害となる、偵察する“ドローン”の導入と、ジェットパックで、落下速度の調節ができるようにして、状況に併せて少しずつ穴を降りながら探索していく緊張感を持ったゲームデザインに落とし込んだと解説。


 皆川氏は、本作ではパッと見たときに感じられる世界観作りと、レベルデザインにはかなり気を遣って調整をしたのだそうだ。とくに道中に配置したライトの光で進むべき道をプレイヤーに示すなど、細かくレベルデザインを組み上げていくことで、じわじわと穴を降りていく感覚をプレイヤーにもたらすべく調整したという。


 また、本作の開発期間は8ヵ月だったが、こうした調整については東京ゲームショウで開催される日本ゲーム大賞のアマチュア部門にも先行して出展し、そこでプレイした人たちの意見をフィードバックしてブラッシュアップを行ったのだそうだ。


 こうしたプレゼンテーションを受けて、日野氏から「アマチュアのレベルではないゲームに仕上がっていて、遊んでいて深く世界に入り込んでしまったほどだった」との講評がなされた。しかし、作品の特徴である穴を降りるというゲーム性については、「人生は上を目指すことに価値を見出すことが多いですが、どうして下を目指すゲームにしようと考えたのですか?」と、ちょっと変わり種の疑問も投げかけられた。

 皆川氏は、本作のテーマは“重力”の遊びにあると説明。下を目指す理由は、降りていく方が重力を感じられるゲームを作れるのではないかと考えたためと話した。また、ネタバレになるので詳しくは説明できないが、本作の穴の奥底には“とあるもの”が眠っており、穴の底を見たいと思う好奇心や、そうした遺跡発掘のような楽しさも描き出したかったためだという。


 山倉氏も、本作の世界観について「プレイ中に穴の下を覗くたびに、底知れない雰囲気があってかなり怖さが出ていていい」と講評した。また、東京ゲームショウに出展した際の感想をフィードバックしたという点に言及し、具体的にはどのような点に反映したのかについての質問も。

 皆川氏は、以前のバージョンでは、穴の下は何も見えないように真っ暗にしていたが、あまりにも“怖さが高まってしまった”ことに加えて、どこに降りればいいかもわからず、下に進む気が起きなくなってしまったのだそうだ。そこで、穴の下の暗闇について、プレイヤーの意見からちょうどいい暗さを模索したのだとか。


公開プレゼンテーション ノミネート作品3


タイトル:『CURTAIN ADVENTURE』
制作チーム名:北海道情報専門学校 カーテン同好会


 北海道専門学校のカーテン同好会。そのチーム名の通り(?)、本作は“カーテン”がカギを握るアクションパズルゲーム。探検家の主人公を操作して、どこか懐かしいクラシックゲームを彷彿とさせるサイドビューのステージ内を進み、ゴールとなる宝の下を目指していく。本作最大の特徴は、プレイ中にいつでもカーテンを閉められること。ステージ全体をカーテンが覆うことで、ステージ内のものはすべてがシルエットになる。光を透過させるガラスのブロックは、カーテンを閉めると影ができないので、消えてしまう……といったように、カーテンを利用して影を生み出すことで新たな道を切り拓いていくという内容だ。


 チームを代表する新谷氏は、カーテンの開閉アクションへ力を入れたことはもちろんのこと、操作方法やギミックの説明などの細かい部分でプレイヤーをつまづかせないようにするために、プレイ中にていねいなガイドを挿入したことについてもアピールした。


 一風変わった本作については、松山氏がそのレベルデザインについて「イージー、ノーマル、ハードと用意された難易度も、イージーではステージをあえて小さくしてシステムに慣れてもらい、ノーマルから一気にステージを拡大するといったプレイヤーの遊びのテンポに合わせて、ゲームが目指している遊びへムリなく導いている」との講評を行った。「ゲームはつきつめると“おもてなし”の心が大事になる。その気持ちがなく、作り手の押しつけばかりだとプレイヤーには“もういいや”と投げられてしまうから」と話しつつ、「そういった意味で本作は大絶賛ですよ」と高評価。

 松隈氏からは、チームメンバーは4人だが、プランナーふたりにプログラマーがふたりという編成でひとりもデザイナーがいないチームであることを知り、なぜデザイナーをチームに入れなかったのかと質問。新谷氏は、デザイン作業については、人に頼むこともできたが、自分たちで作るゲームなのだから、出来る限り自分たちだけで作ろうと4人で手分けをしたのだそうだ。しかし、だからこそキャラクターや敵、ステージの構造物にいたるまでに深い愛着が生まれたのだという。「僕らはゲームクリエイターを目指していて、最後にはプロになるつもりなので、まずは自分たちだけでデザインも企画もプログラムもできなくてはいけないし、自分たちだけで作りたかった」とアツく語った。


公開プレゼンテーション ノミネート作品4


タイトル:『RE:DOLLY』
制作チーム名:日本工学院専門学校 to 4(ツーフォー)


 最後のプレゼンテーションは、日本工学院専門学校のチームto 4による独特なテーマを持った横スクロールのアクションパズル『RE:DOLLY』。本作は、羊のドリーを操作してステージを進んでいくのだが、ステージ中には触れると即死する針の床や外敵が存在している。これらの回避方法については、ゲーム中ではいっさいのヒントは与えられないが、ドリーには自分と同じ姿の“クローンを生み出す”という特殊能力が備わっている。プレイヤーはステージを進むためには、唯一の能力であるクローンを利用することになるが、それはプレイを進める中で、高い壁を超えるために“クローンを積み重ねて踏み台にする”といった行為から、次第に“針の床にクローンを投げて足場にする”など、クローンを“犠牲”にする必要が生じてくる。

 チームto 4の岡山氏は、本作はこのような“犠牲”についての考え方や判断をプレイヤー自身がどのように感じるか、そして“犠牲にしているという感覚に気づいてもらう”ことが大きなテーマになっていると解説。そのため、あえてゲーム中ではクローンを利用する方法をひとつも提示していないのだと話した。


 外敵がいて進めない場所ではあえてクローンを食べさせて、その間に逃げるといった方法でなくては進めない場所も用意されていた。また、ラストにはプレイヤーに“犠牲”についての大きな決断を迫る場面も用意されているなど、テーマ性に重きを置いたゲームデザインが印象的な作品に仕上がっている。


 本作の独特な世界観について、「『LIMBO』や『INSIDE』を手掛けた開発会社Playdead作品のようなテイストを感じた」と三代川が講評。プレイ中は、製作者の前で解法に悩むのはなかなかに恥ずかしかったが、「本作はクローンの利用方法を段階的に学んでいけるパズル部分のレベルデザインがよく考えられている」ことに感心したとして、その制作の苦労について質問が投げかけられた。答えた岡山氏はアクションパズルの制作方法について、「とにかくチーム内で何度も何度もディスカッションを重ねて、少しずつ調整しながら制作していった」のだと、地道な努力の積み重ねだったと苦労を吐露。

 さらに日野氏からは、素朴な疑問として、本作の主人公は“羊”の設定のはずだが、「見た目がどう見ても……ブタやん、と思えてしまいます」とひと言。緊張した空気の張りつめた会場は笑いに包まれた。その疑問について岡山氏は、「主人公は羊に見えなくて、ピラニアとかブタに見えるという意見はありました」とデザインについての難点について解説。主人公の羊は世界初のクローン羊“ドリー”にちなんで命名したが、ブタのように見えてしまうのは、クローンを足場として利用することになるためにどうしても長方形にしなくてはならなかったという制作上の理由があったのだそうだ。

 日野氏も、「本作が非常にすばらしい世界観を表現していて没入してプレイできたので、つい細部についてのいじわるなツッコミをしてしまってすいません」と笑顔で話したほど、本作は独特な雰囲気を湛えていた。


大賞発表!


 ノミネートされた4組のプレゼンテーションが終了し、いよいよ最終結果の発表だが、その前に毎年恒例となっている、GFF AWARDへ協賛しているPCメーカーTSUKUMOが選出する“TSUKUMO賞”の発表が行われた。

 今年のTSUKUMO賞を受賞したのは、独特な世界観を描いた『RE:DOLLY』! 受賞プレゼンターを務めたTSUKUMO代表取締役の大堀陽一氏は、「じっくり考えながら自分のテンポで進められた点と、自分に与えられた限られた能力を駆使して進んでいくというゲーム性が高評価のポイントでした」と受賞理由をスピーチしつつ、賞金の授与が行われた。チームto 4には、副賞として高性能なゲーム開発用にチューニングされたPCセットも贈られることに。


 続いて、いよいよ第12回目となるGFF AWARD 2019の大賞の発表へ! 毎年恒例の、緊張の瞬間を演出するドラムロールが鳴る中、実行委員長の日野氏の口から受賞作品が読み上げられた。

 ことしの大賞に輝いたのは、チームProject Liberatorの『Devil's Slave』! 「操作感、ビジュアルともに製品レベルに達していたことが、審査員の満場一致での大賞授賞となりました」と受賞理由について語った日野氏。チームProject Liberatorには、賞状と賞金、そして豪華副賞が授与された。続いてゲスト審査員を務めた三代川より、トロフィーの授与も行われた。


 見事大賞を勝ち取った、Project Liberatorのメンバーはそれぞれ「とにかくすごい……!」と茫然としつつも、「今回のゲーム制作はアンリアルエンジン4のおかげだった。このメンバーで集まることができたことに感謝したい」、「GFF AWARDの歴史に名前を刻めたことがうれしい。これからチームメンバーは社会に出てバラバラになるけれど、どこかで思い出してほしい」と、感動の言葉を語った。


“GFF AWARD 2019”総括


 受賞式を終えて、今回特別ゲスト審査員として参加した三代川は「ゲームコンテストの審査を務めさせていただくことも多い中、初めて参加したGFF AWARDのノミネート作品のクオリティーの高さに心底驚かされました」と、年々レベルの高い作品が集う本コンテストの水準への驚きを語った。

 「大賞を受賞した『Devil's Slave』は、とくに爽快感や遊びやすさに気を遣って制作されていたように感じたのですが、その他のノミネート作品も、非常に遊び手の気持ちを考え抜いて作られていたのが印象的でした」、「このことは、ゲームクリエイターを目指す若者たちだけでなく、これから社会人になるすべての人にとっても、“ただ作りたいものを作るのではなく、受け取り手のことを考えたもの作りをする”ことは大切だと思います。我々メディアを始めとする情報発信者にとっても関係のないことではなく、記事製作では読者がどう受け取るのかということを意識しなくてはいけないとあらためて感じました」と、クリエイティブに関わるすべてのひとに共通する要素が感じられたコンテストだったと話した。


 実行委員長の日野氏は、今年のコンテストを総括して「完成度という意味で、最後の最後まで作りきった作品ばかりが残った最終選考になった」と語った。

 「ゲーム開発は、70点までの完成度の作品は、わりと簡単に作ることができるものです。でも、そこから100点になるまで磨き上げていくのは、非常に多くの苦労がかかるもの。100点に到達するには、たしかな技術力に加えて、チームワークも必要になる。今回の作品は、高い完成度から審査員もプロ目線で厳しくチェックをしたため、いくつか気になる点も散見したけれど、どれもが圧倒的にこだわりぬいており、100点に迫るものばかりだった」と、同じく高い水準でのもの作りを実現したチームを評価した。


 昨年のコンテストでも、商用作品と並んでもそん色のないクオリティーのゲームが見られたのが印象的だったが、今年はさらにそのレベルが高まり、もはや最終審査ではプロ目線でのジャッジが行われたほどに、高レベルな戦いを見せたGFF AWARD 2019。過去の受賞者は、実際にレベルファイブやサイバーコネクトツー、ガンバリオンを始めとする福岡のゲームメーカーに就職して最前線でゲーム開発に携わっている人材も多いという。

 コンテストの最後には、早くも翌年のGFF AWARD 2020の開催が発表された。来年は、さらなる高品質な作品が応募されることになるかもしれない。そんな期待を否応なく抱いてしまう公開最終審査となった。



松山社長×三代川編集長が“業界の今”を語った特別トークショーリポート


 毎年恒例となる、最終審査と併せて開催される特別トークショー。今年はサイバーコネクトツー代表取締役の松山洋氏と、ファミ通.com編集長三代川正による、“ゲーム業界の今がわかる特別トークショー”と題した対談が行われた。

 ヒットするバトルロワイヤル系ゲームから、VTuberにVR、eスポーツ……ゲーム業界をにぎわすホットなキーワードを始め、ゲーム業界の進む先について俯瞰することとなった対談では、松山氏が仕掛けるマンガ展開による、新たなエンターテインメントビジネスへの展望についても構想の片りんが明らかに……!?


地方展開で大きく動いたeスポーツ


三代川 松山さんとは何度もお会いしているにも関わらず、じつはこうして一対一で話す機会は、なかなかなかったですね。

松山 しかも福岡でね。東京の番組で三代川さんがMCで、私がゲストというパターンは多いけれど、今回は逆だからね。

三代川 珍しくて、なんだか妙な感じがするくらいです(笑)。

松山 ちょっと妙な感じやね(笑)。でも今回は、“ゲーム業界の今”がテーマなので、業界のニュースを追い続けているファミ通ドットコムの編集長という立場でいっしょに話したいことがたくさんあります。まあそんなに堅苦しい話ではなく、ひと言でいうと「いろいろな話題が飛び交っているけれど、ゲーム業界全体はこれからいったいどんな風に進んで行くのか」ということをざっくばらんにお話できればなと。ではさっそくなのだけれど、まずはeスポーツとVTuberあたりの盛り上がりについて話したいよね。

三代川 なるほど。去年はとくに、eスポーツ元年、VTuber元年と呼ばれていましたからね。

松山 実際のところ、eスポーツのほうってどうなんですか? セガさんの展開されている『ぷよぷよ』のeスポーツ展開などは、個人的に観戦していてもおもしろくて注目しているんです。

三代川 パズル系の試合は増えてきていますよね。eスポーツについては、Gzブレインとしても注力しているところではあるのですが、とくに去年は大きく動いたかな、と思います。

松山 おお。


三代川 JeSU(日本eスポーツ連合)という団体が活発に活動したこともあるのですが、なんといっても国内でいろいろなeスポーツの大会が行われました。それだけではなく、いくつもの地方自治体でもeスポーツ部門が生まれ、それぞれが地域独自の大会を開こうという動きが出てきましたから。そうした同時多発的な活動が起こったことが、盛り上がりを見せている要因として大きかったと思っています。

松山 地域独自の大会ね。まさにここ福岡にも“福岡eスポーツ協会”というのが新しくできました。もともと福岡市の職員だった中島賢一さんという方が会長を務められているのですが、今後JeSU副会長の浜村(弘一)さんとも打ち合わせをするという話を聞きましたよ。今年はさらに全国規模で、本格的に地元に根差したeスポーツの流れが来るように感じますよね。本当に楽しみだなと思います。


三代川 福岡でも活発化しているんですね。このいい流れのまま、あとはどんどん普及をしていくことになるのかな、というところなのですが……eスポーツにはひとつネックがあると感じているんですよね。

松山 というと、ルールがゲームごとに違うとか?

三代川 まさにそうだと思います。野球やサッカーといったスポーツは、観戦するお客さんもルールをすぐに理解できるのですが、ゲームとなると、競技に使用されるゲームごとのルールを理解していないと、なかなか一般のお客さんが楽しめる試合にならないというか……。

松山 ルールの理解の難しさは、eスポーツの課題ですよね。

三代川 『実況パワフルプロ野球』とか『FIFA』や『ウイニングイレブン』などの試合が行われたとしたら、誰でもそのままスポーツとして見られますよね。でも、そういった既存のスポーツと同じものだけでは、eスポーツならではの盛り上がりは生まれづらいですし。

松山 たしかに、スポーツが題材のゲームだからなあ(笑)。ところで、いまだに「eスポーツはスポーツなのか」みたいなしょうもない意見を見かけるじゃないですか。そもそも、もうちょっと辞書で言葉の意味を調べたらどうですか、と言いたくなってしまう。“スポーツ”という言葉の本来の意味は。“競技”ですから。なので競技性のあるものは、すべてがスポーツと言える。つまりスポーツ=競技が行われる場所は、秀でた才能が集う場所になるんですよね。ゲームに携わるものとして、そうした才能のぶつかり合いを見るのは楽しいことですし、応援しない理由はないと思います。


競合との争いが激化していくVTuber市場


松山 これまた話題をかっさらったVTuber。メディアとしてどう見ました?

三代川 話題になりましたよね。でもそうですね……とくに大きなものとしてはキズナアイや電脳少女シロといったスター的なVTuberが出てきていますが、国内では早くも飽和状態になってきているかな、というのは正直な印象ですね。

松山 なるほど……ちょうど昨年の春くらいからか、爆発的に増えましたよね。

三代川 そうなんですよね。

松山 ただやはり、VTuberはここ2、3年の動きではあるとは思いますが、かつての“初音ミク”のような存在にはなりきれていないかな、とは思いますね。VTuber界の王座というか、“決定版”と感じる存在がいまいちはっきりしていない。もしかすると、時期的にYouTubeやネット上での表現における“リテラシー”や“コンプライアンス”がささやかれ始めた時期と重なるので、VTuberの方々は、表現上ももっともデリケートなタイミングで、自由に発言や表現を発信しにくくなっていて、それが飛び抜けた存在を生めない原因ではないかなと思っていますね。


三代川 新しい豊かな土壌には、つぎつぎといろいろなものが出てきます。それがおもしろいのですが、数が増えるということはすなわち競合が増えるということなので、「もっと目立たないといけない」と、差別化するため、次第に過激な表現になっていきがちです。YouTuberもそうですし、遡っていくと、ニコニコの“生主”や“歌ってみた”などの文化に近いものを、着々と踏襲しているかなと感じていて。

松山 まさに、そうなんだよなあ。

三代川 そもそもはYouTuberの派生としてバーチャルなVTuberが生まれたのですが、最近では大元のYouTuber自体にも、本田翼さんや、カジサックさんといった芸能人が乗り出してくるようになっていて、競合がさらに激化していますから。芸能人との競合になるような状況なので、国内ではVTuber含め、YouTuberさえもがかなり厳しい状況だと思います。なので、今後VTuberは競合を避けてワールドワイドに舵を切って、アニメ人気の高いアジアへの進出を狙う人が増えていくんじゃないかなと思います。

松山 国内では戦えない状況になると。さっき例に挙げた初音ミクは、ワールドワイドで人気になれたけれど、それは音楽だったからかもしれないね。

三代川 ええ。曲ならば、言葉がわからなくてもメロディだけで聴いて楽しめたのですが、YouTuberやVTuberの場合は、楽しむうえで言葉やモーションが必須になってきますので、求められる要素のハードルが上がっていくのかなと思います。何にしてもたいへんだな、と。

松山 バーチャルタレントのいいところってさ、見た目上は年をとらないじゃないですか。それだけ過酷な土俵での戦いとなると、どこかのタイミングで有名VTuberが絞られてくると思うんですよ。そうなったとき、市場そのものは定番化して盛り上がっていくと思うので、注目していきたいなと思います。怖い市場になりそうだけれど。


VRはアミューズメント施設へと移行する!?


松山 気になると言えばVRもです。昨年のGFF AWARD 2018ではVR作品が大賞を受賞したけれど、いまやVRは新しいもの、というイメージではないですよね。

三代川 PS VRも2016年に発売されていますし、新宿にあるVR ZONEも一昨年オープンしました。期限を切って運営されていた新宿のVR ZONEは期限通りに閉店になりますが、新たに大阪に作られていますね。VRは、数年前は個々の家庭への普及を目指しているイメージがあったのですが、今後はどちらかというと常設のVR ZONEのような、アミューズメント施設で高品質なVR体験を身近に楽しめるものとして展開していくことが多くなるのではないかと思います。もしかすると、ゲームセンターに置かれるタイプなども多くなってくるんじゃないかなと思っています。

松山 まさにバンダイナムコエンターテインメントさんのVR ZONEは、一番VR体験との相性がいい。完全にひとつのアンサーだなと思います。VRと言うと、どうしても弊社には『.hack』というRPGを作ってきたおかげで、お客様からは「『.hack』のVRゲームは作らないんですか?」と期待をかけていただけることも多いのですが……それはもう、『ソードアート・オンライン』があるじゃないかと(笑)。


 個人的には、家庭用ゲームとVRは、相性があまりよくないと感じています。VRのゲームで1時間以上連続で遊べる作品を作るのは非常に困難です。でも、VRのアミューズメント施設でちょっと並んで5分、10分遊んで、その施設でなくては体験できない特別な経験ができるというのこそが、一番の醍醐味だと思いますので。

三代川 もしかすると、より疑似体験を豪華にするという点で、映画館の4DXのような感じで、水しぶきや風なども相乗効果に含んだ展開が起きてくるかもしれません。そういうものが、各地に普及していくことで、VRはより身近で楽しいエンターテインメントになってくると思います。そういえば、最近ではNintendo Switchの遊びをダンボールで自作できる周辺機器で拡張する『ニンテンドーラボ』に、“VRキット”というものが発表されて驚きました。

松山 任天堂さんはVRに否定的だったと思っていたけれど。すごいよね(笑)。

三代川 前々から、VRについて研究しているという話はよく耳にしていたのですが、まさか『ニンテンドーラボ』で提案するとは思わず、驚きですよ。でも、コンセプト自体が一線を画していて、単純にVR市場に参入するというものではなくて、任天堂さんらしいアイデアが盛り込まれている。物自体が玩具に近いものになっていて楽しみですね。個人で没頭する、というVRの遊びよりも、まわりの人に自分が遊んでいる姿を見られることで、皆で楽しむような感じなのが、おもしろいなあと。

松山 そこまで計算されている。さすがは任天堂さんだなと脱帽ですよ。


個のクリエイティブが輝くインディーゲーム


松山 次の話題はインディーゲームですね。ここ数年、海外勢がとくに強いですよね。そんな中でもプレイステーション4やXBOX、Steamなどでもインディーゲームは数多くリリースされているのに、Nintendo Switchでのインディーゲームのダウンロード数がすごいんですよね。

三代川 群を抜いていますよね。

松山 そう。何を隠そう気がつくと私もインディーゲームは、Nintendo Switchで買っているから(笑)。

三代川 (笑)。松山さんは、なぜほかのプラットフォームで購入しないのですか?

松山 うん。やはり画面ごと持ち運べるという気楽さもあるし、インディーゲームはAAAタイトルのように、プレイステーション4 Proのような4K対応の大画面で遊ばなくてはその品質を堪能できない、というものでもないので、もっと気軽に遊べる感じがあるんですよね。話していて思いましたけど、このカジュアルな感じが、Nintendo Switchとの相性がいいのかなって思いますね。

三代川 ああ、まさにそうだと思います。今回の最終審査で遊ばせていただいた出展作品にも、AAAを目指した作品からインディーゲームらしい作品までが並んでいましたが、インディーゲームに近い雰囲気の作品は、どれもパズル要素に主軸を置いたゲームになっていました。パズル系のゲームはリトライがしやすいゲームが多いので、いつでも持ち運んで気軽に挑戦できるSwitchというハードに合っているのかなと思います。


松山 なるほどなあ。

三代川 インディーゲームについては国内の大手パブリッシャー、デベロッパーが社内インディーとしてのプロジェクトを立ち上げていくような動きも始まりましたよね。

松山 じつはサイバーコネクトツーでも、社内インディーと呼べるかはわからないのですが、短期間で開発する“C5”というコードネームのプロジェクトを動かしています。若いスタッフにも活躍できるチャンスを作るというか。3年、4年かかる大規模な開発だけではなく、短期間開発でスマッシュヒットを狙えるプロジェクトって、10年前や20年前のゲーム業界に近いんですよ。


三代川 プレイステーションやプレイステーション2の頃ですね。

松山 そうそう。そのくらいの時期の開発規模に近い。これくらいの規模のチームでの開発は、大規模開発と違って楽しさを味わえる部分が多いんですよね。もちろん大規模開発ならではの魅力もありますが、もっと個人の仕事が見えやすいというか。なのでうちでも始めたのですが、こういった楽しい開発環境は業界の若い人たちに大切だと思いますので、他社さんも含めてどんどん応援していきたいなと思いますね。

三代川 少人数のほうがフレキシブルに動けるところもあるんでしょうね。プランナーとディレクターだけが仕切るのではなく、例えばデザイナーの人のアイデアでゲーム性がちょっと変わったりといったように、スタッフ同士がお互いに影響されるところがインディーゲームや小規模開発ならではの醍醐味で、おもしろいところだろうなと思います。

松山 ひとりひとりのアイデアや活躍が、開発中のタイトルに大きく影響するのも、インディーゲームのいいところだと思います。大規模開発だとどうしても役割分担に徹するようになり、おもしろい部分を決めるのは、組織の上の方……っていうことがどうしても起こってしまうと思うので。


世界のゲームコンテンツ事情について


松山 いやあ、一気に気になるトピックについて駆け足で話してきましたけど、いままさに話題をさらっているものでさえ、未来はどうなるかわからない……それくらいダイナミックに変化が起きている感じがしますね。ではここからは世界に目を向けて、世界のゲームコンテンツ事情について見ていきましょうか。私が知る限りですが、昨年の世界におけるゲーム業界の市場規模は、ざっくり15兆円くらいだと聞いてますよ。

三代川 数字を聴くだけでも活気を感じますね。

松山 世界のゲーム産業規模15兆円の内、約半分の7兆5000億くらいが家庭用ゲームで、残った同じくらいがスマートフォンのゲーム。でも、日本だけは、この比率がまるで違うじゃないですか。

三代川 そうなんですよね。日本は特殊ですね。

松山 世界規模で眺めると、スマートフォン用のアプリやオンラインゲーム、家庭用ゲームが拮抗している状態なので、すごく健全な市場のまま、右肩あがりで成長を続けているという! ゲーム業界は凄く調子良いなと思います。

三代川 いまや、ゲームに触れない人はいなくなっている。スマートフォンを含めれば、世界中の誰もが触れているんじゃないかと思います。いまの10代、20代の人たちは「ゲーム好きです」と公言せずとも、つねに触れているのが当たり前という状況になってきているので、しばらくゲーム人口はこのまま増えていくのかなと思います。

松山 そんな中、スマホのゲーム市場では、ほぼ中国が占めています。人口の多さも、もちろんあると思いますが。

三代川 やはりプラットフォームを新たに買う必要がない、みんなが持っているスマートフォンでそのままゲームができるというのが大きくて。ダウンロード数で言うと、現在は『PUBG MOBILE』が1位になっていまして、2位が『Subway Surfers』というランゲームと言われています。そういったあたりが人気です。ちょっと日本とは毛色が違いますね~。


松山 違うなあ。日本のモバイルゲームランキング1位は、かの『モンスターストライク』! 強いね~『モンスト』。まだまだ『モンスト』です。年間の売上は、なんと933億ですよ。たったひとつのアプリだけで。むちゃくちゃ凄まじい売り上げですね。

三代川 こうしてデータを眺めると、その凄さがわかります。

松山 この驚異的な売り上げとほぼ変わらないのが2位の『Fate/Grand Order』。一説には第2部で終わるみたいなウワサも聴こえてきますが、企業として考えたら、ふつうはこんな売り上げを叩き出しているのに、サービスを終了することはできなさそうですよね。

三代川 どうなるのかはわからないですが、もはやソニーさんとアニプレックスさんの株価を動かせるレベルの売り上げになっているので、すんなり終わらせるのは難しそうですよね。

松山 3位は『パズル&ドラゴンズ』です。もう7年くらい続いている。それでも500億も売り上げている。

三代川 その後は、『LINE:ディズニー ツムツム』や『グランブルーファンタジー』といったような、長年ランクインし続けている“定番タイトル”が多いのが特徴ですよね。

松山 そうだよね。定番もの以外だと、『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』も強いね。

三代川 やはり人気作品原作の“IP(知的財産)もの”は非常に強いですね。『アイドルマスター』シリーズも強いですし。むしろスマホゲームの市場は固定化してしまっているようですよね。インディーゲームの流入などを考えると、ひょっとして家庭用ゲーム市場のほうが、ヒットを狙いやすいのではないかと思えてくる。


松山 一周して、そうなっちゃいましたよね。スマートフォンを世界でもっとも普及しているゲーム機だと考えると、誰もがすぐに遊び始めることができるという点でゲーム人口は増えそうです。けれども、いま売られているゲームアプリって、じつは15万個くらいあるんですよ。15万個あるアプリの中から、お客さんにたった1個の自社製品へと手を伸ばしてもらうのって至難の業です。砂漠で落としたダイヤみたいな状態。なので、スマホ市場は、完全にレッドオーシャンを通り越して、もはやブラックオーシャンなんじゃないでしょうか?

三代川 そんな状況で、定番タイトルが上位を占める背景には、長く遊んでいるプレイヤーが課金を重ねていて、そこまで投資したゲームから離れて新しいゲームに移れないというところもありますからね。

松山 それだけ簡単に乗り換えられない状況もあるうえで、ゲームを知ってもらうためには何億、何十億という巨額のプロモーション費用をかけて、お客さんたちに基本プレイ無料の入り口に立ってもらわないといけない状態。……開発予算だけでなく、ほとんど宣伝広告費の打ち合い、テレビCMの打ち合い、ウェブ広告媒体の打ち合いになっている印象ですね。ファミ通さんでも発表されましたが、国内だけのゲーム市場は2018年は4343億円。トータルで見ると、2017年よりはちょっと下がっているんですけどね。

三代川 2017年はNintendo Switchが発売された年でもありますから、そこはいたしかたないですよね。

松山 あと『ドラゴンクエスト XI 過ぎ去りし時を求めて』の発売も大きかったですよね。でも、10年連続右肩下がりだった家庭用ゲーム市場っていうものが、Nintendo Switchと『DQXI』のおかげで、2017年にほぼ復活しましたから。2018年はそれに比べると少しだけ下がりましたが、ソフトの売上はむしろ上がっているんですよ。

三代川 2018年にはハードが普及して、みんなソフトも買うようになったと。非常に好循環が生まれているところだなと思いますね。

松山 Nintendo Switch、PS4、XBOX one、Steam、いろいろなハードがある中で、アマゾンやGoogleがゲームプラットフォームへ参入するという話があります。売り場が増えるのは凄く良いことだと思いますし、それだけ接触の機会が高まれば、家庭用ゲームの市場もどんどん盛り上がるんじゃないかと思います。


任天堂の超ロングセラーが席巻! 国内ゲームランキング


松山 では国内はどうなのか、と。2018年のゲームタイトルのランキングを見てみると、1位は『モンスターハンター:ワールド』。世界で1000万本ぐらい売れた内の約300万本が日本での売り上げでした。これはうれしい数字ですよね。

三代川 この数字にダウンロード版の売り上げは反映されていないので、もっと数は多いと思います。『モンハン』はくり返し遊ぶゲームなので、ディスクを入れ替えるよりも、ダウンロード版をインストールしておいたほうが早く遊べるっていう。

松山 ちなみに『モンハン』以外は、ほとんどが任天堂さんのタイトルです。我々業界人は、毎年年度末終わると、年明けの1月に週刊ファミ通をぱらぱらと見て、年間のランキングを確認するんですが、例年1位から10位の9個から8個くらいが、任天堂さんのタイトルなんですよね。


三代川 恐ろしいのは、2018年のランキングにも、2017年発売の『Splatoon2』や『マリオカート8 デラックス』、『スーパーマリオ オデッセイ』などがランクインしていること。

松山 『Splatoon2』なんて、発売から1年経っているにも関わらず、100万本売れているんですよ。累計でほぼ300万本ですが、Nintendo Switchが国内で700万台くらいだと考えると、ふたりにひとりが『Splatoon2』を買っている。恐ろしい話です。

三代川 『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』も入れたらどうなるんだって感じですよね(笑)。とくにお子さんに買い与える親御さんが多いので、「安心して買えるもの、よく知っているもの」として手に取りやすいという、売れれば売れるほどに安心して買いやすくなる好循環が生まれているんだと思います。

松山 話題が生まれることで、安心して手に取りやすくなると。しかし何にせよこうして見てくると、右肩上がりの部分も多くてゲーム業界は、まだまだ新しいことが生まれてきそうですね。


『チェイサーゲーム』から見えるサイバーコネクトツーの新マンガビジネス


松山 話題と言えば、手前味噌ですが、ちょうどいまファミ通さんといっしょに展開している新しい試みが、公開するたびにプチ炎上するくらいの反響を頂いていますよね(笑)。

三代川 『チェイサーゲーム』ですよね。おかげさまで。ご存じないかたのために説明しますと、現在、松山さんが原作で、マンガ家の松島幸太朗さんが描かれている、ゲーム業界を舞台とした熱血系のお仕事マンガをファミ通.comで連載していただいているんです。この内容が……かなり赤裸々で業界人を中心に話題になっていて。


松山 去年の年末からスタートしたばかりで、5話が掲載されたばかりですが、最近みんなの感想からキャッチコピーも考えました。“赤裸々すぎて、読むと胃が痛くなる”っていう(笑)。

三代川 業界人は痛くなりそうな話ですから(笑)。

松山 今日はGFF AWARDでゲームクリエイターを目指す人たちが多く集まってくださいましたけれど、このマンガはゲームクリエイターだけではなくて、アニメーターや映画ビジネスをしているかた、そのほかマンガ家さんに、出版業界、果ては広告代理店のサラリーマン……と、お仕事している人たちからのたくさんの共感を呼んでおりまして。自分で作っといて何ですが、“話題”になっている作品になっています。

三代川 自分で言った! でも、ほんとうに好評でありがたいです。

松山 じつはファミ通さんの生放送番組で弊社の戦略について発表させていただくのですが、サイバーコネクトツーはこれから全方位型のエンタメ企業になります。なので、ゲームソフトを作る本業に加えて、アニメ―ションとマンガの制作を自社で行っていきます。その1発目として、『チェイサーゲーム』を準備していたんですよね。その内容がゲーム業界を舞台としたマンガなのだから、掲載媒体は“ファミ通”しかないだろうと思って。それで、ファミ通さんに企画を持ち込んだんです。


三代川 自社でマンガの制作から販売までを行おうというお話をうかがって驚きましたよ。『チェイサーゲーム』のお話をいただいた際には、すでにここまで考えていたんですよね。プレゼンテーションの段階で企画もネームも完成していたものを見せていただいたのですが、おもしろくて。ぜひ掲載させてほしいとお願いしました。

松山 (会場に向かって)ね? むりやりお願いしてねじ込んだわけじゃないですからね(笑)。


チェイサーゲーム 掲載ページ https://www.famitsu.com/serial/chasergame/


三代川 それにしても、最初に見せていただいた内容から、かなり展開が変わりましたよね。

松山 初めてプレゼンテーションした段階よりも、もっと赤裸々でエンタメ然とした内容になったかなと思います。いまのところ、絵描きさんのほうがそんなに手が遅い人間ではないので、3週間に1回という更新日の継続的な状態でやっていますけど、このペースは崩さずに、できれば隔週で更新できるようにスピードアップも図っています。

三代川 松山さんは業界でも類を見ないレベルのマンガファンだと知れられていますが、いったいいつから原作を書かれていたんですか?

松山 1年前に企画書を書きました。ゲーム開発が本業ですが、土日はどこかの学校や地域で公演をしたりしていて、そういう仕事の隙間を見て書いていきました。

三代川 そんなタイミングで書いていたんですか? すごいなあ。でも『チェイサーゲーム』を読むと、「ゲームってこうやって作っているんだ」っていう細かい部分が見られるので、勉強になりますね。僕らメディア側も、そうした開発現場のリアルな様子までは分からないので。

松山 逆にファミ通さん側にも発見があった?

三代川 勉強になっています。今日集まってくださった学生さんやゲームクリエイターを目指す方にとっては、かなり現場の流れが分かるという意味でもいい参考書になるんじゃないかって。

松山 うれしいなあ。ありがとうございます。すでに原作は書きあげていて、いまのところ全13話で第1部が終了です。第14話からは第2部に突入する予定で、時間軸が過去に遡ります。主人公たちがゲーム業界を夢見て、どうやってゲーム業界に入っていけばいいのか、という学生時代が描かれるので、読者の視点に近い物語展開になるかなと。いまは“ゲーム業界あるある”みたいな身につまされるようなエピソードが見どころのひとつですが、今後はまた違った展開を見せていくので、ご注目いただければと思います。

三代川 サイバーコネクトツーの方々がよく行かれるお店なども登場しますよね。美味しそうな中華の店とか。夜に原稿をチェックしているときなどは、割と飯テロです。

松山 福岡の美味しいお店は、全部実在するお店です。なんなら登場人物の大半がうちの社員の顔と名前をモデルに使っているので、サイバーコネクトツーのことをよく知っている人間は、見せてはいけない裏のネタもわかっちゃっておもしろいのかなと思いますけど。これからいろいろな業界人も出していこうかな~なんて思っていますので、業界を目指す人はチェックしてみるといいかもしれません。ちなみに連載の公開週の翌週には、私が各話の解説コラム『デバッグルーム』も書いているので、併せて読むとさらに裏側が見えてくるかも。あ、裏が見えすぎて夢がなくなるなんてことはない……はずなので安心してください(笑)。


いまを読み解く注目ポイント“バトルロイヤル ネクストステージ”


松山 ……とか話してきたら、もう最後のコーナーにいかないといけない時間ですよ。最後は、ファミ通.com編集長の三代川さんにとって2018年のゲーム業界の見どころはいったいどこだったのかうかがいたいと。

三代川 いや、このコーナーは「ハードル高!」と思いつつも、考えてみました(笑)。キーワードとしては主に2018年の上半期が多いものではあるのですが、3つ挙げさせてもらいました。“バトルロイヤル ネクストステージ”、“ゲーム映画化”、そして“新世代プラットフォーム”。


松山 おお! いいところを突いてくるキーワード。バトルロイヤルものな~。

三代川 バトルロイヤル系のゲームって『PUBG』から始まり、『フォートナイト』、あと世界中でブームになっていますけど、Electronic Artsさんの『Apex Legends』というもの大きくがあります。『Apex Legends』は、すでに5000万人ものプレイヤーがいて、YouTuberを含めてブームになっていますね。『PUBG』や『フォートナイト』を踏襲しつつも、さらに仲間に指示を出しやすく、バトルロイヤルの難点であった1回やられるとリトライしないといけないというプレイ時間の短さを、“3人1組”というシステムでカバーしていて、かなりおもしろいゲームになっています。

松山 バトルロイヤルは配信とも相性がいいので、おもしろければ一気に広まるところも強みですよ。


三代川 ええ。そしてもうひとつ、任天堂さんから『TETRIS 99』という、誰もが知っているパズルの『テトリス』を99人でプレイするというバトルロイヤルが生まれたんですよね。もうバトルロイヤルと呼ぶべきか分からないんですが、『テトリス』単体でおもしろかったところが、99人のマルチプレイで遊んでみると、さらに未体験のおもしろさがあったかと熱中してしまうゲームになっています。こういった感じで、既存のジャンルがバトルゲーム要素を加えることで生まれ変わるということが、今後じわじわと増えていくんじゃないかなと見ています。


松山 そうした展開が、“バトルロイヤル ネクストステージ”というわけですね。なるほど。化けるな、と思いますよ。私自身も、バトロワ系は研究のために、ひと通りプレイしたのですが……できることが多いのは楽しいですが、正直UIがゴチャゴチャでもうちょっと整理できるんじゃないかと思ったんですよね。バトロワ系って、大人数で遊ぶところが間違いなくおもしろいと遊びです。だからこそ、もう少し任天堂さん的ゲームデザインというか……要素をある程度絞り込んだようなタイトルが出ると大きく普及するというか、楽しんでもらえるんじゃないかなと思いますけれどね。で次のキーワードは……ゲームの“リアル映画化”か~! わかる。まさに、いま来ているからなあ。


いまを読み解く注目ポイント “リアル映画化”


三代川 ええ。“リアル映画化”。これはもう、現在までにさまざまなゲームが映画化しているのですが、さらに今年は大きな話題になるものが目立ちましたから。

松山 たしかに、『ドラゴンクエスト』の映画化はインパクト大きかったですね。

三代川 さらっと急に発表しましたからね。『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』をベースにしたCGアニメーションの映画を、『ALWAYS 三丁目の夕日』の監督をされた山崎 貴氏が総監督を務めて制作するという。しかも今年の夏ですよ。なんといっても、『DQ』がついに映画化するのか、という感じもありますよね。そのほか、『モンスターハンター』や『名探偵ピカチュウ』とかですかね。

松山 『名探偵ピカチュウ』はいい形になっていますよね。いい意味で意表をつくというか。あの愛くるしいピカチュウじゃないっていうね。ここ数年では、『ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』もそうですし、本田翼ちゃんの『ゆうべはお楽しみでしたね』とか、ドラマ化することによって、ゲームのタイトルをある種、ファンの人たちだけのものじゃなくて、カジュアルな層に広げるきっかけになります。すごく好感を持てるなと思いましたね。

三代川 ドラマや映画の世界は、つねに原作を求めています。でもいまではマンガ原作も食い尽くされていて。

松山 単行本もまだ3巻しか出ていないのにドラマ化します! とか、ざらにあるからね。

三代川 そういった中で、ついに映画業界がゲーム原作に食指を伸ばそうと注目しているところなのかなと思っていて。

松山 『二ノ国』も映画化が発表されて驚いたけれど、この作品はもともとスタジオジブリのアニメ的な世界からゲームが生まれてきたようだけれど、今度はそれがアニメ映画化するんだから! って、この話は僕らよりも日野さんが喋れば良かったのにね(笑)。


いまを読み解く注目ポイント “新世代プラットフォーム”


三代川 続いて3番目が“新世代プラットフォーム”。プレイステーション4の発売から6年ほど経っているので、そろそろプレイステーション5の登場がウワサされています。その一方で、マイクロソフトさんのほうはE3で新世代のXBOXを発表するんじゃないかという噂も出始めているという状況ですね。さらにグーグルもクラウドゲーミングの新プラットフォームを立ち上げるんじゃないかと言われています。さらにSteamに対抗すべく、『フォートナイト』やアンリアルエンジンを生み出したEpic Gamesが、“Epic Gamesストア”というものを最近立ち上げまして、Steamとガチンコ勝負をしています。


松山 まあ群雄割拠ですよ。とくに、Epic Gamesストアはロイヤリティーの設定で無茶苦茶なことをしましたね。

三代川 ゲームメーカーがプラットフォーム側に払うロイヤリティーをかなり下げた。これまでSteamで発売していた海外メーカーのPCゲームも、独占でEpic Gamesストアで発売しますという宣言もしました。

松山 ロイヤリティーの設定って、ここに集まった皆さんはわかりますか。例えば、iPhoneやAndroid、PlayStationなどでゲームを買ったり、課金をしたりするでしょう? そうやってお客さんがゲームに払ったお金の約30%は、手数料としてAppleさんやGoogleさんが持っていくんですよ。これがロイヤリティーです。1000円のものを売ったとしても700円しか入ってこないんですね。でもEpic Gamesストアは、「最大88%返します」って言い出したんですよ。これはとんでもないことで、売上が一気に18%増えることになる。業界にとってかなりの価格破壊で、これはどこのゲームメーカーさんも心の底では思っていると思うんですよ。「必死に作って宣伝したのに、30%も持っていかれちゃうのか」って思っていると思います。もちろん、プラットフォームがあるからこそ販売できるので、ビジネスとして理解も納得もしていますが、感情としてね。


三代川 そうですよね。頭ではわかっていても、つい思ってしまう。そこを下げてきたのがEpic Gamesストアなんだから、事件です。

松山 70%の売上を少しでも増やしたい、とみんなが思っているけれど、なかなか変わらなかったところをEpic Gamesストアが大きく変えてきましたからね。プラットフォーマーの取り分が、たった12%って無茶苦茶ですよ!

三代川 すごいですよね。まあほかの部分で利益をたくさん得ているからこそ、できることなのだとは思うのですが。

松山 ある意味でEpic Gamesから業界に対する恩返しのような側面もあって、ゲームメーカーにとっては、非常にいい時代になってきたなと思いますね。

三代川 SteamもEpic GamesもPCプラットフォームですから、PC上でどっちでも買えるとなったら……きっとユーザーは独占ソフトの多いストアをよく利用するようになるかもしれません。

松山 Steamのゲームが世界中で売られているのは事実ですし、大ヒットしているように思えますよね。でも難点があって。Steamで販売されているソフトって、7万タイトルあるんですね。この7万タイトルの中からひとつのソフトを見つけるのは、至難の業じゃないですか。

三代川 スマホの話でも似た話を聞いた気が……。

松山 そうそう。ここでもけっきょく宣伝費次第になってしまう。だからこそ、Epic Gamesストアがやろうとしているのは、タイトルを絞ったうえで、良作しか基本的には売らないっていう姿勢で差別化をしていく。

三代川 そうですね。良作が独占販売されていれば、ユーザーもいいものが多いストアに自然と寄るようになる。そうやって差別化しつつ、アドバンテージを取っていくわけか……。


松山 そうだ、差別化という部分で急なんだけどひとつ聞いていい?

三代川 なんですか?

松山 ほら、プラットフォーマーも群雄割拠だけれど、メディアに置き換えてみると、最近では“電ファミニコゲーマー”ってあるじゃない。ファミ通さん的には、あの電ファミニコゲーマーってどう思ってんの?

三代川 うわー急に来た、台本にないパターンのやつ!


三代川 いやいや、どう思うって、そもそも悪い感情は何もないですよ。

松山 でもさ、元々ファミ通にいたメンバーも電ファミニコゲーマーに行っちゃってたりするじゃん。

三代川 大まかな話をすればグループ企業なので、出向していたりするんですよ。誌面の違いからすると、基本的に電ファミさんはカルチャー誌のような立ち位置で、ものすごく長いロングインタビューなどで、ひとつの記事にかけるコストが非常に高いんですね。

松山 ああ、たしかにそういった感じがするね。

三代川 ものすごく準備に時間をかけて、その分ひとつの記事に注力するという戦略をとっている。一方で、ファミ通.comの場合も、もちろん読み物にも注力していますが、それ以外にゲーム業界や、いま売れているゲーム、発売されているゲームが分かるような記事制作を目指しているんです。方向性がだいぶ違うんですよね。僕も電ファミニコゲーマーの記事もちゃんと読みますし、電ファミの編集者ともやり取りして、話もしますし。

松山 まぁ元同僚もいるからね。そういうつながりはできているし、住み分けもできているからグループの中でも仲良くはできているんだね。ゲームの新しいプラットフォーマー群は、そうはいかない熾烈な争いになりそうだよなあ。

三代川 でも、僕らも仲良くやりつつ、「あの記事はやられたー」みたいなこともありますから(笑)。競いながら切磋琢磨していくのはいいことなんじゃないかな。……っていきなり台本にない話が走り出すから、あーびっくりした。


福岡のゲーム産業のこれからを担う? 最後の質疑応答


松山 あっという間にお時間ですが、GFF……ゲーム ファクトリーズ フレンドシップとして福岡のゲームメーカーが集った団体として、我々が毎年開催してきたGFF AWARDも、もう12回目ですよ。応募作品のクオリティーも年々高まってきていると感じているのですが、今回ゲスト審査員として参加されてみて、数多のゲームを見てきたファミ通の視点からはどう感じました?

三代川 とにかく、クオリティが高くて本当に驚きましたよ。お世辞ではなくて。

松山 よかった。でも我々の課題としては今回応募してくれたチームは、ほとんどが関東の学校だったり、関西だったり、北海道だったり……おい、福岡の学生くんたちはどうした?(笑)

三代川 そういえば、地元福岡の入賞作品が少なかったのは意外でしたね。

松山 前に学生さんにヒヤリングしたことがありますが、ハードルが高すぎて尻込みするそうなんです。うーん、そんなことないんだけれどなあ。我々も、もうちょっと地元の学生さんたちとコミュニケーションをとって、直接福岡発の実績を生み出せるような能力の伸ばし方を模索していくべきだと感じています。

三代川 折角近くに有名なゲームメーカーがあるんですから、なんだったら松山さんに聞きに行けばいいくらいの感じで交流が出来たら理想的ですよね。

松山 ウェルカムなんですけどね。福岡の学生さんと話をするとよく言われるのが、「ゲーム産業に就職しようと思うと東京に行くしかない」。「マンガ家やアニメーターやゲームクリエイターになるには東京に行くしかない」というイメージがあったんです。でもいまそんなことないじゃないですか。マンガだって『キングダム』の原泰久さんや、『東京喰種』の石田スイさん、『ワンパンマン』の村田雄介さんも福岡ですし。もっともっと福岡でお仕事ができるっていう認知を広げていかなきゃいけないのかなと思いますね。最近はゲーム関連企業だけではなくて、アニメーションを作っているスタジオもちょこちょこ増えてきていて。実際にサイバーコネクトツーでも、福岡の“TriFスタジオ”と新作アニメ『メカウデ』を一緒に作っているので、これからも皆さんのお仕事ができる入り口を増やしていって、エンタメ産業全体に貢献できる土地にしていければと思います。


質疑応答 ひとり目

松山 お話はここで一区切りで、残るは質疑応答コーナーです。皆さんが質問あるようであれば受け付けます。なんでも挙手して遠慮なく聞いてください。……って言っても、質問なんてなかなかできないよね?


松山 そういえば、先日仙台の専門学校のイベントに出演したときの質疑応答でね、学生の方が「レベルファイブに就職するにはどうしたらいいですか」という質問をされて(笑)。「君! そこはサイバーコネクトツーに就職するにはどうしたら」だろ! と思ったけれど、「日野さんに訊いておく」と答えました。

三代川 律儀に答えたんですね(笑)。……あ、などと雑談が始まりそうになりましたが、お客さんで質問のある方が挙手されていますね。ご質問をどうぞ!



――ありがとうございます。自分は福岡大学の学生で、就活のつもりでこのイベントに来ました。



松山 就活とはあまり関係はないよね? このイベントは。



――レベルファイブの就活のホームページを見たら、GFF AWARDのことが書いてあったので、一応観に行っておこうかと思って。



三代川 この流れ、デジャヴかな(笑)。



――質問なんですけど、レベルファイブに就職するには……。



松山 わはははは、君もかい? よし。日野さん呼ぼうか! 日野さんに訊こう! 今日はいるから(笑)。

一同 (笑)


松山 あとで日野さん捕まえてさ、「どうやったらレベルファイブに入れるんですか」って聞いてきなよ。


――大丈夫ですか。日野さんに怒られないですかね。



松山 怒られないよ! そんな人じゃないよ日野さんは。でも、ちょっと待って、サイバーコネクトツーに入りたいって人はいないの? と、冗談はさておき、ちなみに職種は何志望ですか?



――企画職を志望しています。なので、今回のイベントでプレゼンテーションされた企画書のスライドはとても勉強になりました。ゲームメーカーの企業研究を始めたのは最近だったので、もっと前からGFF AWARDのことを知っていたら、ゲーム企画部門でコンテストに応募したかったです。ところで、松山さんはサイバーコネクトツーでいろいろな挑戦をしていく中で、マンガもやられるということでしたが、具体的にどのような作品を展開していくのでしょうか。



松山 お! そういう質問を待っていました。ありがとうございます。マンガ企画では、ミステリーやサスペンスも計画しているけれど、とにかくサイバーコネクトツーから、マンガを生み出したいんですよ。なので、今月発表することなんですが、社内にマンガ室という新しい部署を作っちゃった。そこでサラリーマンとして給料をもらいながらマンガを描いているスタッフが何人かいる。その部署で、マンガ制作から原作制作まで、順次動いていきます。ちゃんと出版社と組んで、ものによっては集英社さんだとか、別の会社さんから、みたいな形で組むパートナーをその都度変えて世に送り出していく。

三代川 まさに『チェイサーゲーム』はサイバーコネクトツーさんで原作から作画までやられていますが、松島幸太朗さんは、社員として描かれているんですよね。

松山 そう。なのでマンガを描きたいという人はサイバーコネクトツーに手をあげてもらえれば、採用面接がありますので。マンガ家さんって基本的に赤字ビジネスの個人事業主なので、誰からも給料をもらえずにとにかく自分のお金と労力でマンガを描いて、掲載されても掲載料しかもらえない。基本的に1ページ単価で考えると赤字なんですよ。だから、単行本で出版して、大きくヒットして初めて著者印税が10%入ってくる。でもこれも3万部とかだとまだ赤字なんですよ。最低でも5万部、10万部と累計で稼いでいかないとマンガビジネスってなかなか難しいんですね。

三代川 最初のヒットまでは困難な道ですね。

松山 さすがにそういうビジネスは、いまの時代にはちょっと違うんじゃないかなって思って。私自身、マンガ業界にもっとも精通しているゲームクリエイターだという自負があるので、今回、思い切って私が考えるマンガビジネスの新しい形を作っていきたいと思います。





――あと最後に、アニメ制作もされるということでしたが、僕は『ナルティメットストーム』シリーズが好きで、アニメよりもゲーム中で見られるCGアニメーションのほうが凄いと思ったほどだったのすが、サイバーコネクトツーでのアニメ制作は、そういったCGアニメーションをメインに作って行くのでしょうか。



松山 ものによりますね。CGの利点が活かせるのであればCGにするけれど、アニメーションっていう意味合いでいうと、俺は手描きのほうが好きです。いまアニメ業界で作られているCGアニメーションの多くが、制作工数を考えて、舞台劇であればロケーションがそんなに変わらないから、CGで同じ登場人物を使っていけば効率よくアニメーションが作れる……といったように、お客さんではなくて“予算”に向けたものの作り方が凄く目立ってしまっている。アニメはやっぱり人間が頭の中で思い描いたものを手で描いて動かすからこそ、お金払って一枚一枚観る価値があるわけじゃない。だから安易にCGアニメを作ろうとは思わないですね。うちの現場はいろいろな提案をしてくるとは思いますけど、そこにCGとしての利点がないようであれば、たぶんCGアニメにGOサインは出さないと思いますね。


質疑応答 ふたり目


――私は卒業したあとにゲーム業界に入りたいと考えていて、プログラマーとして入りたいのですが、いまはどのようなプログラマーが求められていますか。どんなプログラマーがほしい人材でしょうか。



松山 真面目な話をしますと、プログラム言語に何が使われているのかをちゃんと調べたうえで、必要な言語の基礎を勉強している人材が必要です。家庭用ゲームの多くは、基本的にC++という言語で書かれているので、まずこの基礎を抑えた状態で勉強してもらうのが第一条件です。いまの時代は、先ほど話題に出たEpic Gamesのアンリアルエンジンなどの優秀なツールもあるので、直接プログラムを組まなくてもゲームが作れたりもします。でも、実際はそんなことはないんですよ。アンリアルエンジンには“ブループリント”という機能があり、視覚的にゲームを組み上げていけるので、ゲームデザイナーや企画の人でもゲームが作れるようになっている。でもそれだけでゲームを作ると、プログラムソースコード的には無駄だらけになってしまい、最適化がまったくできない。プログラムは正しくなくても動いてしまって、“何故か動く”という状態が存在してしまうんです。けれど、いまのゲーム業界では、プログラマーたちがみんな書いたプログラムを持ち寄って、ひとつの大きいシステムを作るので、自分が書いたプログラムソースコードを他人が見ることになる。バグが出た場合は、他人が書いたプログラムから原因を追いかけていく作業……いわゆるのデバッグがあるので、プログラムは人に読まれることを前提に書かなければいけないですし、自分自身も人が書いたプログラムを見て「おかしい」とか「ここが弱点だ」とか分かっていかなければいけないんです。だから、まずはしっかりと基礎と応用ですね。



――基礎と応用……!



松山 そう。あとは、実際に“ゲームを作る”という実践を積んでほしいです。プログラムを書く以上は、ゲームを作るために書くわけじゃないですか。ひとつのタイトルをじっくり作るのではなく、ちっちゃいタイトルをいっぱい作って経験を積むことの方がおすすめです。分かりましたか?



――ありがとうございます。



松山 がんばってください! ちなみにこれでトークショーは終演となりますが、せっかくなので最後に訊かせてください。あなたの第一志望は……?



――え……あの、まだ決まってなくて……。



松山 ……(小声で)そこはレベルファイブですっていうところ!

一同 (笑)


 笑いを交えつつ松山氏と三代川が自由闊達に俯瞰した“業界のいま”と未来について、会場に集った将来のゲームクリエイター予備軍となる若者たちが、食い入るように聞き入っていたのが印象深かった。

 リポートの最後に、会場のホワイエに展示されていたゲーム企画部門とビジュアル・アート部門の優秀賞以外のノミネート作品をご紹介する。これらふたつの部門は企画やビジュアルのみでの応募が可能だ。もしも自分も“ゲームを作ってみたい”と少しでも感じたとしたら、ぜひ来年開催予定のGFF AWARD 2020の情報をチェックしてみてほしい。





© 2019 Nintendo
Tetris ® & ©1985~2019 Tetris Holding.
Tetris logos, Tetris theme song and Tetriminos are trademarks of Tetris Holding.
The Tetris trade dress is owned by Tetris Holding.
Licensed to The Tetris Company.
Tetris Game Design by Alexey Pajitnov.
Tetris Logo Design by Roger Dean.
All Rights Reserved.
Sub-licensed to Nintendo.
Certain new content developed by Nintendo, and any characters, sounds and video games originally owned by Nintendo: © 2019 Nintendo.