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 雷が頭に直撃したら、急に天才になっちゃった――。 

 このマンガのような話は、完全な与太話でもないのかもしれない。実際に脳に損傷してから天才になったというアーティストや学者も存在する。

 今回発表された研究によると、脳に電気刺激を流すことで、高齢者の作業記憶を若い頃と同じくらいまで回復させることに成功したという。

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年齢とともに衰える作業記憶

 「作業記憶(ワーキングメモリ)」とは、ある状況でものごとを判断するために、名前や電話番号といった関連性のある情報を一時的に保持して、いつでも使えるようにしておく能力のことだ。

 大切な認知機能なのだが、残念なことに、この能力は年齢とともに衰えてしまう。なにも認知症にならなくても、誰だって年をとれば普通に低下してしまうのである。

 ところが、この作業記憶の衰えは絶対不変のものではないというのが、今回研究を行った、アメリカボストン大学の神経科学者のロバートラインハルト氏だ。

 年齢による作業記憶の低下は戻すことができるし、さらには若い時よりも優れた作業記憶を蘇らせることも可能だという。

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photo by pixabay

作業記憶を衰えさせるシンクロ率の低下


 加齢によって記憶力が衰えるといっても、年齢は能力が低下する理由の一側面でしかない。

 じつは作業記憶低下の裏には、リズムがうまく噛み合わなくなるという、もう一つの要因がある。

 これらのリズムは、脳が情報と記憶を別の場所に伝達する手助けをするものだ。

 脳科学者によると、作業記憶が効率的に機能するためには、前頭前野と側頭部の間で、「シータ波」というゆっくりとした低周波リズムと「ガンマ波」という速い高周波とがきちんとシンクロする必要がある。

 このシンクロを「位相振幅カップリング」というが、これが年齢とともに低下してしまうのである。その結果、作業記憶も低下する。

 ところが、「経頭蓋交流電流刺激」という電気刺激を用いることで、シンクロ率をアップさせられるらしいのだ。

非侵襲的な電気刺激で作業記憶が向上したことを確認

ラインハルト氏の研究では、非侵襲的(体を傷つけない)電気刺激を与える前後で、高齢者(60~76歳)42名、若者(20~29歳)42名に画像の間違い探しを行なってもらい、その間の脳の活動を測定した。

 通常なら若者のシンクロ率は高齢者よりも高い。そのため認知テストの成績も優れている。

 しかし、たった25分間、高齢者に経頭蓋交流電流刺激をほどこすと、脳波のシンクロのズレが雲散霧消してしまったのだ。

 その効果は、高齢者と若者の認知テストの結果を比べても、統計的な差異が認められないほどである。そして、この効果は50分ほど持続した。

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左から20歳の人(刺激なし)、高齢者(刺激なし)、高齢者(刺激あり)の作業記憶を表したもの

記憶力の弱い若者にも効果的


 ちなみに作業記憶の改善効果は、高齢者だけでなく、若者にも発揮されるようだ。記憶テストの成績が悪かった若者に経頭蓋交流電流刺激をほどこすと、成績が改善されたのである。

 したがって若者の作業記憶についても、位相振幅カップリングは重要であるようだ。

 さまざまな応用が考えられそうな有望な結果であるが、これを実際の医療の現場で活用できるようにするためには、まだまだ研究が必要である。

 ラインハルト氏は今後、繰り返しこの刺激を受けた場合の影響や、このような効果が得られる具体的なメカニズムを調査する予定だそうだ。

 この発見は『Nature Neuroscience』に掲載された。

References:Electrical jolts to brain restored memory of elderly to that of 20-year-old | Ars Technica/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52273192.html
 

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