■ワームホールによる移動は理論的には可能であるが、直接行った方が早いという学会発表
■ブラックホールが量子もつれを起こした場合の、量子テレポーテーションのほうが早い
■ブラックホールの情報保存に関する問題や、重力と量子論の対応について、新しい解決法をもたらすかも
ワームホールでの移動が遅いってどういうこと?
ハーバード大学の物理学者が、ワームホールは存在可能で、時空の曲線でつないだトンネルを通って旅行することも可能であることをアメリカ物理学会で発表する予定です。
しかし、銀河の反対側への旅行準備をするのは気が早そう。ワームホールを使ったワープ航法は理論的に可能ではあるのですが、研究を行ったハーバード大学のダニエル・ジェフェリス氏は「役には立たないだろう」と話しています。
ワームホールを使って反対側へと移動するよりも、直接そこまで行くほうが早いというのです。
銀河間航行の役には立たないという結論なのですが、それでも量子論の発展を加速させることはできます。ブラックホールには情報パラドックス問題や、重力と量子論の間の関係性も解かれていません。こういった問題の解決に役立つかもしれないというのです。
この新しい理論の元になっている考え方は、ブラックホールが量子もつれを起こした場合を公式化したER=EPR対応です。それが意味しているのは、ブラックホール同士の直接の接続のほうが、ワームホールの接続よりも短いということで、それ故にワームホール航法は近道ではないということです。ワームホールを使った移動というのは結局、量子もつれを起こしたブラックホールでの量子テレポーテーションと同等に見えるのです。
量子論の役に立つってどういうこと?
ワームホールが横断可能であるということは、ブラックホールから情報を取り出すことのできる例外ということです。事象の地平線に隠れた因果を調べるために外部からアクセスできる窓となりうるのです。
現在、交通可能なワームホールを考える上での障害になっているのが、負のエネルギーが必要になるということです。そのため、量子重力論との一貫性がとれません。ジェフェリス氏は、カシミール効果に似た量子効果を計算して量子場理論のツールとすることでこれを解決しています。
これによって、ゲージ・重力対応や量子重力論に対する深い理解が得られ、あるいは全く新しい量子力学が生まれるかもしれませんね。
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