「株価の値動きを先読みすることはできないが、配当動向はある程度は予測可能」

 株式投資による利益は「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」に分かれます。キャピタルゲインは「保有銘柄を買った値段より高く売ることによる利益」を指し、インカムゲインは「配当」を指します。

 一般に「株で儲けた」という場合、株価の上下動を当てて(先読みして)キャピタルゲインを得たというイメージを持つ方が多いでしょう。一方のインカムゲインは大きく儲かるものではなく、どちらかといえば地味な印象を持たれがちです。

 しかし、理論株価を軸にする成長株の投資手法とは「長期的に配当の成長が期待できる株を購入し、投資額を早期に回収する」というものです。

 言い換えるならば、短期の株価の上下動を気にせず、配当が数倍、数十倍になる業績拡大が見込まれるような成長企業を選び、運悪く不景気になっても、財務内容に余裕があり、配当が維持される企業を見つけるということです。

 当たり前ですが、「短期の株価の値動き」をすべて当てることは(インサイダー情報を持つ人を除き)誰にもできません。株価は短期的にはランダムな動きをするからです。しかし、配当は財務内容と経営者の意思で決まる側面が強く、株価と違ってランダムには動きません。

「株価のランダムな値動きを先読みすることはできないが、配当動向はある程度は予測可能」ということです。

 株価の動きに一喜一憂しがちな方のために、株式投資におけるもっとも重要な考え方のひとつを紹介したいと思います。

 それは株価の下落と投資の失敗とは違う!ということです。

 投資家は、株価の下落を失敗と切り捨てる人がほとんどです。でも、株には毎年の配当があるため、いつかは配当収入の総額がキャピタルロスを上回る時点がきます。

 株価下落は一時的であり、配当は永続的であるため、一時的な株価の下落は投資の失敗を意味しません。

 わたしたち、ファンダメンタルズ分析をベースにした投資家の場合、投資の失敗とは配当が減ることや配当がなくなること(無配への転落)を意味します。

JTは無配になったことがない優良成長株

 例として、無配になったことがない企業を紹介しましょう。JT(2914)です。配当利回りは現状およそ5%です。1990年代は1%に満たない利回りでした。大切なことはJTが過去無配になったことがないということです。無配にならなければ、配当を再投資することによって、投資家は資産を増やすことができます。

 配当をまたJT株に再投資する場合、たとえば10年間で税引き後5%の利回りがあれば、1.05を10回掛け合わせた1.63倍に保有株数は増えます。20年保有ならば、株数は利回り5%で2.65倍になります。

 このように、株式投資の果実はキャピタルゲインとインカムゲインなのです。日々上下動する株価は、企業のファンダメンタルズの実態を映す影にすぎません。影の動きに一喜一憂をするよりも、配当の安定性、事業の永続性の分析に時間をかけるべきです。

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