エチオピア南部の諸民族州ゲデオ地域では、国内避難民キャンプに身を寄せる多くの人びとの中で、深刻な栄養危機が起きている。国境なき医師団(MSF)は、緊急援助を開始するとともに、国内の人道援助機関に対し、同地域に避難する人びとへの対応を早急に拡充するよう求めている。

ゲデオの教会に身を寄せ、医師の診察を待つ国内避難民の家族 (C) Markus Boening MSF
栄養状態は悪く、安全な飲み水も手に入らない

MSFは2019年3月、エチオピア南部で国内避難民に対する調査を実施。その結果、数万人にも及ぶ人びとの栄養状態は悪く、生活環境は未整備で、安全な飲み水はほぼ手に入っていないことが判明、人びとの健康が危険な状態にあると懸念している。

ゲデオ郡ゲデブで、3月に実施した5歳未満児のスクリーニングによると、重度急性栄養失調率と全急性栄養失調率は、緊急事態を示す値を大幅に超えていることが明らかになった。調査対象には含まれなかったが、妊婦の栄養失調率も高いことが分かっている。

「今すぐ栄養失調児の治療を拡充する必要があります。現地にある数少ない医療機関では、全く対応が追いつかなくなっている上に、合併症のある子どもの専門治療はできないからです。問題のひとつには、栄養失調児が手遅れの段階で運ばれてくることで、地域のアウトリーチ活動(※)が届いていない所があることを示しています」と、MSFのプロジェクト・コーディネーター、マーカスボーイングは話す。
※医療援助を必要としている人びとを見つけ出し、診察や治療を行う活動。

新たな感染症流行の可能性も

現在、MSFは栄養治療を中心に地域保健局を支援している。これまでに、2ヵ所ある栄養治療センターで200人以上の5歳未満児に重度急性栄養失調治療を行ったほか、50人以上 の小児患者を診ている。

MSFは数日以内に対応をさらに拡大して、複数の国内避難民キャンプと仮設キャンプで給排水・衛生環境を整える。清潔な水の供給を拡大するためで、給水設備とトイレを増やしていく。一方、地元の保健当局は、ここ数週間で数千件の水様性下痢の症例があったことを報告している。

ボーイングは、「キャンプは人口過密で生活環境はよくありません。そこで暮らしている人たちの間で、いつ病気が流行してもおかしくない状況です。度重なる避難によって体調も崩しやすくなっています」と話す。

援助の拡充が必要

MSFは2018年末、ゲデオで過去最大級の緊急援助活動を終えたばかりだった。この時の援助活動は、民族間の暴力によって多くの人びとが避難したためだ。エチオピア当局によると2018年7月のピーク時には、100万人近くが自宅を追われたとしている。それからわずか3ヶ月で、MSFは再びゲデオで活動することになった。

2018年12月までに、人びとの健康指標は改善し、病院への入院件数も減った。多くの人びとが自宅に帰るか、避難所を離れるかした。だがそれ以後に、事態は悪化。暴力への脅威や支援不足のため、人びとはゲデオに戻らざるを得なくなった。

MSFは調査を継続し、栄養・医療面の不足度合いの把握に努めているが、 医療提供だけでは、人びとが直面している多くの問題を解決できない。

「引き続き、現地、州、連邦レベルで対応の努力を続けることが重要です。援助を拡充し、医療、避難所、給排水・衛生設備と食糧などの差し迫ったニーズに応えていく必要があります。同時に、避難民の国内の移動制限をゆるめることで 、人道援助を受けやすくすることも重要です。ゲデオだけでなく、エチオピアの他の地域にいる国内避難民に対しても言えることです 」とモルチドは話す。

配信元企業:国境なき医師団(MSF)日本

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