中国のキャッシュレス決済は大股で前に進んでいる。近年、中国では、人工知能(AI)の発展が進み、スマートフォンに顔認証のテクノロジーが搭載され、各分野で顔認証のサービスが普及し始めた。決済分野は「顔をかざすだけ」で、スマホを取り出すまでもなく決済ができるようになってきている。数多くの店舗で顔認証決済が導入され、地下鉄などの公共機関では顔認証で切符が購入できるなど、日常生活がさらに便利になっている。

 中国メディアの新華網は4月16日、顔認証について報じる記事を掲載した。記事によると、「顔認証」の技術が既に金融、セキュリティー、航空、教育、医療など様々な分野で活用されている。たとえば、中国科学技術大学付属第一病院でも顔認証が導入され、受付やカルテ検索などが顔認証で可能になるなど、「顔をかざして受診」が実現されているという。

 記事は、顔認証決済の最大の強みは利便性だと強調した。何もデバイスを出す必要がなく、簡単に、かつ、スピーディーに支払いができる点が評価されている。顔認証決済のサービスプロバイダーは、「携帯電話を使った支払いは、平均して11ステップ必要だが、顔認証だと1ステップで終わる」としている。ある飲食チェーン店が、去年年末までに300余りの店舗に顔認証決済サービスを導入したところ、会計の効率が60%近く上がったという。

 また、マンション賃貸においても、顔認証を利用することで、安全性やセキュリティー面の強化が期待される。宅急便の受け取りも顔認証で可能となっている。銀行でもATMを顔認証対応にし、キャッシュカードがなくても、顔と暗証番号だけで現金を引き出せるなどのサービスが導入されている。

 しかし、顔認証サービスは本当に安全なのだろうか? 中国では顔認証機能が不完全であったために、就寝中に顔認証が悪用され、スマートフォンから預金が不正に引き出されたという事件も起こっている。また、化粧するとうまく認証されない場合があるなど、顔認証技術の精度には、まだまだ向上の余地があるというのが実情のようだ。そして、顔は暗証番号のように簡単に「変更」できないことから、顔認証のシステムがセキュリティー攻撃された場合、安全面のリスクが非常に大きく、その対策には依然として一抹の不安は持たれている。

 それでも、中国での決済革命は前のめりで進んでいく。昨年12月にアリババグループが発表した新型顔認証システム「蜻蛉(トンボ)」は、顔を読み取る機械を小型化・低コスト化し、コンビニのレジの横にも無理なく設置できる手軽さが受け、急速に普及が進みそうだ。利用者はスマートフォンで認証手続きを行っていれば、顔が財布になってしまうため、その利便性は格別だ。日本でもNECパナソニックなどがコンビニと提携して顔認証システムの実験を開始したと伝えられるが、既に街中で普通に利用が始まっている中国とは、大きな隔たりが感じられる。(イメージ写真提供:123RF)

長足の進歩を遂げる中国の決済革命、もはや「顔が財布」は当たり前!? =中国メディア