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Point
■宇宙で最初に誕生したと考えられる「水素化ヘリウムイオン」という分子の特定に初めて成功
■最初期に誕生した化合物のため、星や銀河の形成に大きな影響を与えたと考えられる
■天体望遠鏡を高度1万3700mにまで持っていくことで、鮮明な観測を可能にした

初期宇宙形成の解明に一歩近づく快挙だ。

1970年代から続けられていた「水素化ヘリウムイオン(HeH+)」の探索。「水素化ヘリウムイオン」は宇宙で初めて誕生した化合物であると考えられていたために、星や銀河誕生の謎を解く鍵であると期待されていた。しかし数十年の探索もむなしく、現在に至るまで一度も見つかっていなかった。

ここにきて、マックスプランク研究所のRolf Güsten氏と研究チームが「宇宙空間で初めて水素化ヘリウムイオンの特定に成功した」との快挙だ。研究は4月17日付けの「Nature」に発表された。

宇宙形成の鍵「水素化ヘリウムイオン」

「水素化ヘリウムイオン」はヘリウム原子と陽子からなる化合物で、「宇宙最初の分子」だと考えられるのには理由がある。

ビッグバン直後の宇宙には、鉄や炭素といった重い元素が存在しなかった。最初にあったのは水素やヘリウムのような軽い元素だ。

そして宇宙が徐々にクールダウンしていく過程で、ヘリウム原子と陽子が互いにくっついて「水素化ヘリウムイオン」ができたと推測されている。

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「水素化ヘリウムイオン」が星の形成に関わったとすれば、星が寿命を終える際に放出されるガスの中に含まれているはずと研究チームは考えた。星から出るガスは大きくなり、「ネビュラ(星雲)」となる。

つまり必然的に「ネビュラ」が探索のターゲットとなるわけだ。

こうして研究チームは長年の苦戦を乗り越えて、地球からおよそ3000光年離れた「NGC7027」という惑星状星雲の中に、微量ながらも「水素化ヘリウムイオン」を特定することに成功した。

特定に長年苦戦してきた2つの理由とは

「水素化ヘリウムイオン」の特定に長年の間苦戦していたのには2つの理由があった。

ひとつは地球大気層が大きな壁となって、地上にセットされた天体望遠鏡では鮮明な観測ができなかったということ。

もうひとつは「水素化ヘリウムイオン」が発する波長と「炭素と水素からなる分子」が発する波長がほぼ重なって見分けがつかなかったということだ。両者の波長はおよそ149µmとほぼ一致。

また旧式望遠鏡解像度が低かったことも相まって、波長の正確な識別が不可能だった。

天体望遠鏡「GREAT」を高度1万3700mの高さへ

この難題に対し研究チームは、NASAの主導していた航空観測ミッション、通称「SOFIA(= Stratospheric Observatory for Infrared Astronomy)」と協力。

このミッションには、ボーイング747-SPを改造した大型旅客機が使用されており、高度1万3700mという地球上の水蒸気層を上回る高さにまで達することができる。

ボーイング747SPの改造機/Credit:NASA/Jim Ross

研究チームは旧式よりもはるか解像度の高い天体望遠鏡「GREAT(=German Receiver for Astronomy at Terahertz Frequencies)」を製作し、この望遠鏡を上記の航空機に搭載することで、観測の鮮明度を増すことに成功した。

そして2016年5月に行われた3度のフライトを経てデータを分析。その結果「水素化ヘリウムイオン」の特定に成功、類似する波長も問題なく識別することができた。まさにGREATな望遠鏡だ。

ラッキーが重なった。「NGC7027」はおよそ600歳と非常に若く、初期宇宙の状態に近い。宇宙形成の謎を解く研究対象としては最適なのだ。

 

初期宇宙の解明に一歩近づいた今回の発表。エキサイティングな研究の今後に期待したい。

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