「かぐや様」について、語りたいことがたくさんある。 

 3月に放送が終了した2019年クールにおける最高峰のアニメをあげるなら、僕は圧倒的にかぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~だったと思う。この作品、とにかく語りたいことがたくさんあるのだ。

 この作品の魅力について全てを語ろうとすると、いくらスペースがあっても足りない。なので今回は、

①OPの鈴木雅之
②3話のED「千花ダンス
パロディオマージュ
かぐや様かわいいんじゃ!

という4つのポイントに絞り、ガッツリと語っていきたいと思う。


文 / 草野虹(
@kkkkssssnnnn
編集 /金沢俊吾(@shun5ringo

ポイント① あまりにも意表をついた鈴木雅之の起用

 僕がまず目を疑ったのは、あのオープニングテーマである。今作のオープニングテーマを歌ったのは、あのラブソングの帝王とも評される鈴木雅之。楽曲ラブ・ドラマティック feat. 伊原六花は、鈴木さんにとって39枚目のシングルであり、もちろん自身初のアニメ主題歌である。

 鈴木雅之1970年代中頃からシャネルズとして田代まさし桑野信義らと活動をともにし、デビュー曲である「ランナウェイ」はオリコン初登場1位を記録、100万枚を超える売上を達成した。
 その後、ラッツ&スターとして改名後の「め組のひと」、カラオケの定番となっている「ロンリー・チャップリン」、ソロデビュー後は菊池桃子とのデュエット曲「渋谷で5時」など、大ヒット曲を多数生み出している。

ベストアルバムALL TIME BEST~Martini Dictionary~』はオリコンチャート1位を獲得。
画像はamazonより引用。

 このラブソングの王様が、アニメの世界に登場したのは大きな衝撃だった。ニコニコでの放送時、OPでの「鈴木雅之なわけないよな…」→「鈴木雅之じゃねーか!」の弾幕は、いかにこのチョイスが意外で特別なことであるかを物語っている。

 このキャスティングの真意は、アニプレックスプロデューサーである石川達也さんが語っている。

 「『かぐや様』は恋愛作品なので、まずオープニング楽曲をどうしようかと考えたときに「ラヴソングにしたい」という答えにたどり着いたんです。そして、『かぐや様』の持つ“ギャップ”や“ドラマ”などのイメージを、ラヴソングとして表現していただくのであれば「“ラヴソングの王様”とも呼ばれる鈴木さんしかいないだろう!」

「アニメ!アニメ!」石川達也さんインタビューより引用)

 曲のタイトルもズバリラブ・ドラマティックだ。ファンキーなブラスサウンド、ゴスペル由来のコーラスなどのソウルミュージック的なサウンドに、艶やかな鈴木雅之の歌声が込められた、上品かつ情熱的な名曲に仕上がっている。
 全体的にコメディーテイストの本作だが、鈴木雅之の登場によって、作品の根底にあるのは「2人のラブストーリーであるということが、しっかりと印象付けられるのだ。

ポイント② アニメファンをイチコロにした「千花ダンス」

 今作が一気に注目を浴び、僕自身も度肝を抜かれたのは、第3話が終わって、このEDが流れた時であろう。「始まったな・・・2019年アニメシーンが・・・」などと、デカイことを考えてしまったほどだ。
 元京都アニメーション所属、「Free!」や「響け!ユーフォニアム」などで動画・原画を担当していたアニメーター中山直哉が、絵コンテから原画までをすべて一人で描ききったという。その逸話は、本人のツイートからわかる。

 このEDの映像は、実際の人間を撮影し、それを線画としてトレースするというロトスコープ手法を取り入れている。
 とはいえ、あまりにもヌルヌルとダンスし、動きまくる藤原千花。原画枚数は845枚、作画枚数は1124枚というED映像として使用するにはブッチギリの枚数を積み上げ、丹念かつ大胆に描いてみせた中山氏の力量には圧倒されてしまう。

 実はこのED、歌詞も、ダンスの中にも、3話時点では描かれていない藤原千花にまつわるネタがいくつも差し込まれている。
 単行本2巻表紙のポーズ、「ドーンだYO!」、ポクポクポクポクポクポクポ・・・、「うかうかしてたらすぐ卒業」、「ラブ探偵チカ」など、「こんなにも原作のネタを取り入れていたのか!」と驚かされた。ここまで原作ネタをねじ込んできたエンディングも珍しいのではないだろうか。

 この曲は、福島節が作曲、福島真希が作詞を務め、ロトスコープを元にしたダンサーは菅尾なぎさもしもこの記事を読んでいる人で、乃木坂46がお好きな人がいれば、もしかすればわかるかもしれない。乃木坂462017年に引退した伊藤万理華を主役に撮ったCM、『伊藤まりかっと。』の制作に携わったスタッフ陣なのだ。

 福島節さんと福島真希さんは、『伊藤まりかっと。』制作がきっかけでお付き合いを始め、ご結婚されたという。そんなお2人によって「千花ダンス」が制作されているのだから、きっとかぐやさんと白銀さんも純粋なお付き合いが起こりそう・・・・起こるのだろうか?

ポイント③ 作品に散りばめられたパロディとオマージュ

 今作は、様々な角度からパロディオマージュを取り入れている。
 まずは劇中のBGMに注目したい。どう考えても「ラブストーリーは○然に」や「○のソナタ」に似せたBGMがココぞとばかりに出てくる。往年のラブストーリー作品へのオマージュリスペクトには、本当に頭が上がらない。最初は気づいてなかったのだが、2度目の視聴で気づき、「まさか他にも使われてるのか?!」と3度目の視聴をしてしまったくらいだ。

 次に、第7話での、ち○ち○ネタでのBGMを挙げたい。
 このときに鳴っている古めのシンセポップは、Dead Or AliveYou Spin Me Round(Like a Record) 」にソックリだ。「キミはレコードのように僕をぐるぐるとまわす」と歌い、「キミがあまりにも魅力的で混乱させられてる!」というメッセージが込められた楽曲をオマージュすることで、かぐやと白銀の関係、そしてこのシーンでは藤原の手籠めにされているという意味が加わっている。

 ちなみにこの後に白銀が藤原の思惑に気づき、「ち○ち○!?」と叫んだ瞬間に、「ラブストーリーは○然に」風なBGMがテケテーンと入ってくる流れは、反則級に面白い。満員電車では絶対に見てはいけないシーンの筆頭であろう。

 続いて最終話
 タクシーを降り、かぐやのモノローグが入ってくるシーン。ここで流れているBGM小泉今日子の「木枯しに抱かれて」に似ている。「せつない片想い あなたは気づかない」という一節がしたためられたこの曲をオマージュし、ここで使ってくるあたり、本当に心ニクい演出だ。
 ちなみに、この後にも「ラブストーリーは○然に」風なBGMがテケテーンと入ってくるのだが、このシーンの白銀はカッコ良すぎる。その後の演出ではBGMは無く、かぐやのモノローグが入るのみ。花火の音が聞こえない・・・・!!!

 こういったオマージュパロディは、OP映像にも盛り込まれている。しかも、作品内容を暗示するような内容となっており、見応えたっぷりだ。

 曲冒頭の歌詞「踊らせて ドラマティックはこれから いじわるな恋の予感 しびれる」にあたるシーンでは、白銀とかぐやがそれぞれ4度もリプレイを重ねて相手へ素の表情を見せるあたりは「ドラマ感」を煽ってみせている。その直後、互いの影からの中から銃を構えるシーンは、白銀vsかぐやという対立を煽るようになっている。

 サビに至ると、極彩色にサイケデリックな映像へと映るが、これは70’sのファンクバンドブラックミュージックのMVで、こういったヴィデオ・フィードバック的な手法を取り入れたものが多かったことをリスペクトしているのだろう。

 劇中でいくつものトリックを仕掛けあううちに、どんどんと混乱していく2人の様を見事に表現している。過去へのオマージュリスペクトの意識が細部にまで渡りつつ、作品内容をしっかりと伝えるものになっているのだ。

他にもサラっと封じ込まれてるオマージュネタ、今後2期があったとき、どんなネタが仕込まれているのか、とても楽しみである。