多くのビジネス調査で、武勇伝の多い上司は「嫌な上司」の上位にランキングされています。仕事の役に立たず、部下は「そんな話は聞きたくない」と思っていることが理由とされています。ところが、上司の武勇伝を聞くことは、上司との関係性を良好にする効果があることはあまり知られていません。

 今回は、筆者の新刊「波風を立てない仕事のルール」(きずな出版)の中から、武勇伝に関するエッセンスを紹介します。上司の武勇伝が始まったらどうすればいいのでしょうか。そんなときは、上司の自慢話に相づちを打ちながら、キラキラ輝く瞳で聞いてあげることが理想的といえます。

武勇伝はアナタを成功に導くお言葉

 上司になる人物は武勇伝が豊富ですが、多くの場合、自慢話に捉えられて嫌がられます。実際に、武勇伝を聞いて仕事に役立つことはありません。しかし、武勇伝をありがたく聞くことで自分の評価を上げることができます。

 これにはタイミングが重要です。「武勇伝を聞かせてください」と直球でお願いしても警戒されるだけです。武勇伝を聞くのは、上司の自分に対する評価を上げるためなのです。どうせ聞くなら、最も効果が高くなる聞き方をしなければなりません。

 筆者はこのように聞くでしょう。

「課長。先日、M商事に営業に行ったとき、もうちょっとのところで商談が不成立になってしまいました。課長は営業のスペシャリストだったと部長から聞いたのですが、今後の参考のために若い頃の営業列伝をお聞かせいただけませんか」

 ポイントは、上司(課長)よりも上位の役職者(部長)が上司を褒めていたことをさりげなく伝え、さらに「今後のために」上司の武勇伝を参考にしたいと伝えている点です。上司に「学ばせてください」とお願いしているのですから、快く受けてくれるでしょう。ただし、自尊心をくすぐることを忘れてはいけません。

「上司! 教えてください!」という定型パターンは使い勝手が非常にいいので覚えておきましょう。上司の自尊心をくすぐるからですが、このパターンはいくらでも応用がきくことに加え、いざという場面での「返しテクニック」としても使うことができます。

ヤバイ、売り上げが足りずに追及されそうだ

 売り上げが足りず、責任を追及されそうな場合、それを回避する方法があります。このテクニックを使えば、危機から逃れられる可能性があります。筆者はこのように聞くでしょう。

「課長、今月の目標達成が厳しい状況になってしまい、申し訳ございません。最後まで、諦めずに挽回するつもりでいます。そこで、課長に教えていただきたいのですが、自分に欠けているものは何でしょうか。今からでもそれを直して、少しでも目標達成に近づけるよう努力したいんです」

 部下がこんなアピールをしてきたら、課長としては悪い気はしないはずです。課長から具体的に悪い点を指摘されたら、それを直そうとしている点をアピールしてください。

「そんなこと言う前に営業に行け!」と身もふたもないことを言われたら、それはそれで、必死に営業している姿を見せてください。要は「自分は頑張っています」「課長から学びたいのです」などとアピールすることで、上司を自分の味方につけるのです。定型句をいくつかご紹介しておきましょう。

■自分が失敗したときは「すみません」+「自分のせい」+「教えてください」
(例)「すみません、課長。今回は私の不注意でこんな事態を招いてしまいまして。課長はこんなとき、どんな対処をされてきたんですか。後学のために教えてください」

■お酒の席ならば、「うまくいかない」+「持ち上げる」+「教えてください」
(例)「私はどうも最初の一言がうまくいかないんです。営業マンとして名高い部長に、ぜひ、今度教えを乞いたいのですが」

■上司が得意げに何かを自慢したら、「感動しました」+「ダメ」+「教えてください」
(例)「部長、感動しました! 僕なんかまったくダメなんですよ。今度、みっちりコツを教えてください」

あなたが上司になったらどうすべきか

 私たちが多くの人との関係を円滑にして過ごすためには、テクニックが必要とされます。その一つが「ゴマすり」です。会社で生き残っていくためにはビジネススキルではなく、コミュニケーションスキルが大切だということです。ゴマすりでも、極めれば、立派なテクニックスキルになります。

 もし、あなたが上司になったらどうすればいいでしょうか。職責とは、仕事上の役割に過ぎません。変化のスピードが激しい時代において成功は過去のもの。上司になったら、「武勇伝をひけらかす」のではなく、部下の話を聞くようにしてください。仕事のできる上司は、知らないことを誰からでも謙虚に学ぶことができます。

コラムニスト明治大学サービス創新研究所研究員 尾藤克之

上司の武勇伝は、ありがたい説法?