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Point
■降る雪と接触するだけで発電することのできる新装置が開発される
■「静電気」のメカニズムを利用することで、バッテリーのいらない発電が可能になる
■ソーラーパネルと組み合わせることで、降雪量の多い時期でも継続的な電力供給が可能になる

降れば降るほど暖かくなる。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究チームは、降る雪から電力を生み出すことのできる新装置を開発しました。雪と装置との間に起こる「静電気」を利用して電力をつくるので、バッテリーを必要とせず、どんな場所でも使用可能なんだとか。

装置は小さくて薄く、プラスチックシートのように柔軟で、防寒服の上につけることで体を暖めることができるようです。さらには降雪量や風向き・風速情報を知らせてくれる天気予報といった機能もついている優れもの。降雪の激しい地帯では大いに役立ちそうですね。

研究の詳細は、3月に「Journal Nano Energy」上に掲載されています。

All printable snow-based triboelectric nanogenerator
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2211285519302204

「静電気」を賢く活用

物というのはすべて電気を持っています。「プラス(陽子)」と「マイナス(電子)」の2種類があり、通常は両者が互いにバランスを取っているので「ビリッ」と来たりはしません。

しかし物同士がぶつかったり摩擦が加えられたりすると、バランスが崩れて「マイナス」の電気が他方へ移動してしまいます。要するに、物同士の間には「マイナス」の電気を「奪う側」と「手放す側」という関係性があるんです。

すると「プラス」の電気を多く帯びている側と「マイナス」を多く帯びている側ができます。このとき、バランスをもう1度取ろうとして「マイナス」が「プラス」の側に戻ろうとします。この「マイナス」が戻る動きを「放電」と呼びます。静電気のビリビリの正体ですね。

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こうした「静電気」のメカニズムをもとに設計は進められています。研究チームのRichard Kaner氏によると、雪というのは「プラス」に帯電しやすく、「マイナス」の電気を手放しやすい性質を持っているとのこと。

そこでチームは「マイナス」に帯電しやすい物質を探すため、アルミホイルやテフロンを含む多くの物質をテストしました。その結果、シリコンがどの物質よりも「マイナス」電気を多く受け取るということが判明したのです。

冬時期のソーラーパネルにも役立つ

同チームのMaher El-Kady氏は「雪からうまくマイナス電気を引き抜くことのできるシリコンを使えば、雪との接触時に電力を生じさせることができる」と説明します。

この仕組みをもとにチームは3Dプリンターを用いて、電気を捕らえる「電極層」および「シリコン層」でできた装置を設計しました。またシリコンの製造は比較的容易で入手も簡単であることから、かなり低コストで大量に製造することが可能です。

それからソーラーパネルと組み合わせて電力供給をすることもできます。毎年冬時期になるとソーラーパネルが雪に覆われて、正しく機能しないことがよくあります。統計では冬になると地球上の30%が雪に覆われるんだとか。

そんなとき、この新装置をソーラーパネル部分に設置しておけば、雪との接触によって継続的な発電が期待できるのです。寒さの厳しい北海道などで役立ちそうですね。

Credit:sci-news.com

さらにはウィンタースポーツを行うアスリートにも役立つ機能を持っているんだとか。例えば、靴の裏や肩部分などにつけておくことで、歩いているのか走っているのか、あるいはジャンプしているのかを細かく特定することができます。それをデータとして記録することでパフォーマンス向上にも使えるようです。

 

カイロに取って代わる日も近そうですね。ただし家の中では使えませんが…。

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reference: newsroomsci-news.com / written & text by くらのすけ

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