新年度がスタートし、各企業では、新たな仕事や目標に取り組んでいる方も多いのではないでしょうか。
企業の目標設定・管理の方法として、近年GoogleFacebookなどが導入したとして、非常に注目を集めた「OKR(Objectives and Key Results)」というメソッドをごそんじでしょうか?

今回の記事では、組織の目標と個人の目標を連動させるOKRの考え方と、KPIやMBOとの違いについて、詳しく解説していきます。

目次

1OKRとは?意味や考え方

2OKRの階層イメージ

3指標の例・サンプル

4OKRとKPIとの違い

5OKRとMBOとの違い

6OKRのメリットデメリット

7OKRの導入・運用方法

8OKRのよくある課題

9OKRの導入事例

10OKRの関連用語

11OKRの管理ツール

12OKRの参考書籍

13まとめ

1.OKRとは?意味や考え方

OKRは「Objectives and Key Results」の略で、日本語では「達成すべき目標と、目標達成のための主要な成果」と表すことができます。
アメリカIntel社が初めて採用し、GoogleFacebookLinkedIn、メルカリなどのグローバルな成長企業が次々と取り入れたことで、非常に話題となりました。

OKRには、従来の目標管理方法と異なる、3つの大きな特長があります。
1つは、目標設定の仕方です。OKRでは、まず組織全体やチームの大きな目標を掲げ、その目標にひもづいた複数の中規模・小規模な成果を「個人(またはチームなどの下位組織)の指標」として設定します。
こうすることで、企業・チーム・個人の方向性を統一し、具体的に取り組むべきタスクの優先順位を明確にすることができます。

2つめは、従来の方法に比べてレビュー頻度が多く、評価のスパンが短いことです。
そして3つめの特長は、求める達成度が100%ではなく、個人の評価(報酬)と切り離して考える点です。

2.OKRの階層イメージ

では、それぞれの特長について詳しく見ていきましょう。下記の図はOKRの目標設定方法をわかりやすく表した図です。
下図のように、まず会社組織全体として達成すべきゴールが掲げられ、その下に部署・チーム単位、個人単位の目標と成果がぶら下がります。
このようにOCRは、ひとつのO(目標)に対し、複数のKR(主要な結果)がひもづく形で成り立っています。

OKRの階層イメージ

(1)目標設定の方法

OCRのObjective (目標)とKey Results(目標達成ための主要な成果)は、下記のような条件で設定します。

Objective (目標)

  • 定性的な目標であること
  • 組織全体の意識を高め、社員全員がワクワクするような高い目標であること
  • 簡単すぎる目標は避け、全社をあげて取り組んだ結果、達成度が60~70%程となること
  • 1カ月~四半期で達成できる目標であること

Key Results(目標達成ための主要な成果)

  • 定量的な(数字で測ることができる)指標であること
  • 1つのObjectiveに対し、2~5個程度のKey Resultsを設定すること(多すぎてはいけない)
  • ベストをつくせば達成できる」くらいの負荷がかかる、達成可能性50%程度の難易度の目標であること

(2)評価の方法と頻度

OKRは、1カ月~四半期ほどの短期間でレビューを繰り返し、目標の見直しや評価をすることが推奨されています。
また、評価の方法は、各社によって異なりますが、達成度をスコアリングする方法が一般的です。

ひとつひとつのKR(Key Results)に対して、達成度を0~1.0の点数や、%で採点し、その平均点をO(Objective)のスコアとします。

また、運用のなかで、決定した目標や評価を社内に共有し、各々の役割や進捗状況を明確化するのもOKRの特長です。
これらの特長から、OKRは組織全体のコミュニケーションを活発化させ、同じ目標を皆で追う一体感を高める効果もあります。

(3)達成度の期待水準

OKRが他の目標管理方法ともっとも大きく異なるのが、目標に対し、60~70%の達成度を成功とみなすことです。

従来型のMBO方式(後述)のように、必ず100%を達成することが個人の報酬を左右するような評価方式では、「達成するための低い目標しか設定できない」「経済動向など、自身でコントロールができない事情に配慮できない」「達成できないときに『高すぎる目標』が言い訳となる」などの問題が生じがちでした。

その点でOKRは、OKRの達成度と個人評価(報酬)と切り離して考えることが基本のため、社員一人ひとりの目を組織全体の「高い目標」に向けさせることができます。

3.指標の例・サンプル

それでは、OKRでは具体的にどのような指標を設定すればよいのでしょうか。エムタメ!運営会社を行う企業を例に考えてみましょう。

●企業OKRの例

Objective (目標)

「マーケティングの力で、世の中をもっと楽しく!」する

Key Results(目標達成のための主要な成果)
  • 営業部門の売り上げXXX円を達成する
  • MAツール導入企業数XXXを達成する
  • マーケティングメディアの月間PV数XXXXを達成する など

●マーケティングメディアチームOKRの例

Objective (目標)

Webメディア「XXXX」の認知拡大と、メディアを通じた収益拡大

Key Results(目標達成のための主要な成果)

上記のように、OKRを設定する際に注意しなければならないのは、「チームや個人のOKR」と「組織の OKR 」との整合性です。
チームや個人の優先事項が、組織の目標達成の可能性を高めるものでなければなりません。

4.OKRとKPIとの違い

OKRより以前に、一般的によく知られた業績管理の方法としてKPI(Key Performance Indicator)があります。

KPIは「最終目標を達成するための経過目標」を管理する方法で、設定したマイルストーンにおいて、重要な成果が確実に実行されているかどうかをチェックすることが目的です。

KPIが「目標に対して、現在の状況が順調であるかどうか」を客観的に測定するための「診断書」なのに対し、OKRは「最終目標を達成するための道のり(プロセス)」をチームで共有したり、「見える化」したりするフレームワークであることが大きな違いです。

5.OKRとMBOとの違い

また、もうひとつ、従来からの評価手法のひとつとしてMBOManagement By Objective)があります。
これは、1954年ピーター・ドラッカーが提唱したメソッドで、従業員が目標を達成するためのタスクを自分で設定する「セルフマネジメント」の手法のひとつです。

MBOは成果主義のさきがけとして、多くの日本企業に人事考課の手法として活用されてきました。
OKRとは異なり、目標に対して100%達成を成功とみなし、1年に1度、報酬を決定するために評価されるのが一般的です。

(表)OKR、KPI、MBOの違い

スクロールでご覧いただけます。

OKR KPI MBO
目的 目標達成までのプロセスの管理
チーム力や生産性の向上
目標に対する現状の進捗状況のチェック 人事考課
(報酬を決定する評価)
目標の共有範囲 全社員 部署、チーム単位 本人と上司
なにをもって成功とみなすか 60~70%の達成 100%の達成 100%の達成
レビュー、評価の頻度 1カ月~四半期に1回 逐次 一般的に年に1回

これらの違いを比較してみると、OKRが「変化へのすばやい対応」や「組織の方向性を統一して生産性を高めること」が求められる現代の事情にあわせて開発された考え方であることがよくわかります
ただし、これらの目標管理方法、評価手法は、一概に「どれが一番いい」というものではありません。
次の項目では、OKRのメリットデメリットを見ていきましょう。

6.OKRのメリット・デメリット

メリット

  • 企業全体の目標と、個人の行動がリンクする
  • 従業員の組織に対するエンゲージメントが向上できる
  • やるべきことの優先順位が明らかになる
  • 人事評価と切り離すことで、大きな目標に挑戦しやすくなる

デメリット

  • 従業員数が少なく、1人がマルチタスクを求められる環境では機能しにくい
  • 短期間でのレビュー・見直しなどの運用が重要な手法のため、その時間がとれない企業では機能しない
  • 高い目標を設定するぶん、未達成のストレスがかかる可能性も高まる

短いサイクルで目標を更新・管理していくことを考えると、マネジメント部門の体制に余力があることが重要なようです。

7.OKRの導入・運用方法

では、OKRはどのように導入・運用するのがよいのでしょうか。その手順の例を見ていきましょう。

(1)企業(組織全体)OKRの設定

(2)チーム(部署)OKRの設定

(3)個人OKRの設定

(4)週に1度短いミーティングを行い、進捗を確認
今週の優先事項、達成の自信度、阻害要因などを確認し、1週間のKRをコミット。
チェックイン・ミーティング」といわれる場合もあります。

(5)週に1度、チームで成果を報告
小さな進捗でもよいので、1週間の成果を発表しあい、チームで祝いあう。
ウィンWin)・セッション」といわれる場合もあります。

(6)全体レビューを行う
わかりやすい成果を設定していることが特長のため、評価に時間をかけすぎないこともポイントです。

→次の四半期に向けて(1)にもどる

8.OKRのよくある課題

前項からもわかるように、OKRは運用してこそ成果があがる仕組みです。
しかし、現実には、これらの管理は手間のかかるものであることは事実。

OKRのよくある課題をまとめました。

  • 週ごとのフィードバック、四半期ごとの設定が運用しきれない。
  • 最初からフレームワークの整合性を気にしすぎ、現実ばなれした設定をしてしまったり、設定に時間をかけすぎたりしてしまう。
  • マネージャーや管理部門の理解が追い付かない。
  • 部署や職種によっては、定量的なKRが設定しにくい。

OKRは、はじめて導入する企業は「たいてい失敗する」というほど、最初から完璧な運用はむずかしいといわれています。
しかし、大切なのは、1度の失敗であきらめないこと。
理想のフレームワークにとらわれすぎず、自社の事情に合わせてカスタマイズやブラッシュアップを繰り返しながら、柔軟に取り組むのがいいようです。

9.OKRの導入事例

では、すでにOKRを導入しているのは、どのような企業でしょうか。
外資系企業と日本企業の例をご紹介します。

10.OKRの関連用語

OKR

「Objectives and Key Results」の略。「達成すべき目標と、目標達成のための主要な成果」を表す、企業の目標管理の手法。
組織の目標と個人の目標を連動させるフレームワークであることが特長。

Objectives

目標

Key Results

目標を達成するために必要な、主要な成果

MBO

Management By Objectives」の略で、目標管理制度と訳される。従業員が自ら目標を管理するセルフマネジメントの考え方で、日本では多くの企業で人事評価に取り入れられている。

KPI

Key Performance Indicator」の略で、重要業績指標などと訳される。目標に対する、現在の好調・不調を表す指標。

ムーンショット

「月に届くほどのショット」の意味で、非常に挑戦的な、高い目標を表す比喩。60~70%の達成度で成功とみなす。

ルーフショット

「屋根に届くくらいのショット」の意味。ムーンショットより現実的な、実現可能な目標の比喩。100%達成で成功となみなす。

SMART

OKRの目標を設定する際に意識すべき5つの要素の頭文字をとったもの。Specific=具体的であること、Measurable=測定可能であること、Attainable=達成可能であること、Relevant=関連性があること、Time-bound=期限があること。

1on1

上司と部下が定期的に行う1対1の面談のこと。OKRの過程でも、個人の目標管理や成長促進のために取り入れられることが多い。
チェックイン・ミーティング:OKRを解説した書籍「OKR:シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法」の中で推奨されている週に1度のミーティング。同書のなかでは月曜日に実施することが勧められており、その週の優先事項、達成の自信度、チームに知らせるべき今後4週間の予定、業務の健康状態などを評価する。

Winセッション

その週の業務の進捗を報告し、各チームが見せられるものをなんでも見せ合い、褒めあうミーティング。上記書籍では、毎週金曜日に行うことが推奨されている。

P1、P2

OKRの進捗確認に使われるタスクの優先度を示すラベル。今週やるべき最重要事項を、P1=やらなければならないこと、P2=やるべきこととし、優先順位順に記載する。

11.OKRの管理ツール

OKRの導入にあたっては、各社からリリースされる管理システムを活用することも有効です。いくつかのツールをご紹介します。

HITO-Linkパフォーマンス

HITO-Linkパフォーマンス

https://www.hito-link.jp

日々の1on1ミーティング、フィードバックを即時に人事評価に活用できるパフォーマンスマネジメントシステム。OKR進捗管理機能あり。

カオナビ

カオナビ

https://www.kaonavi.jp

顔写真が並ぶ、クラウド人材管理システム。OKR用のテンプレートが用意されています。

BetterWorks

BetterWorks

https://www.betterworks.com

海外のツール。グローバル企業で多く導入されており、知名度の高いサービスです。

Resily(リシリー)

Resily(リシリー)

https://resily.com

OKRコンサルティングのためのクラウドツール日本語対応が可能。Sansanなど日本企業の導入事例も多くあります。

goalous(ゴーラス)

goalous(ゴーラス)

https://www.goalous.com

チーム力をたのしく上げるをコンセプトとした社内SNS。OKRの考え方をベースに「GKA(Goal-Key Result-Action)」というモデルを開発しています。

12.OKRの参考書籍

OKR: シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法

画像引用:Amazon

OKR: シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法

OKRの考え方を前半は物語、後半はノウハウで解説した書籍。

メジャー・ホワット・マターズ: 伝說のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法OKR

画像引用:Amazon

メジャー・ホワット・マターズ: 伝說のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法OKR

AmazonGoogleなどに初期から投資したシリコンバレーの伝説的なベンチャーキャピタリストジョン・ドーア氏が説くOKRの手法が解説されています。

最短最速で目標を達成するOKRマネジメント入門

画像引用:Amazon

最短最速で目標を達成するOKRマネジメント入門

「OKRとは?」からの初心者でもわかりやすく、体系的に解説された入門書。

世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法

画像引用:Amazon

世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法

Google社のOKRの取り組み方法と、生産性を上げる仕組みのつくり方が書かれています。

13.まとめ

これまでまとめてきたように、OKRは、変化に富んだ時代に、組織と従業員の意識を合わせ、より高いパフォーマンスを発揮させるための目標管理方法です。

日本企業がこの新しいメソッドを活用するには、OKRのよいところと、従来型の評価方法のよいところをうまく組み合わせ、柔軟に運用することが、成功の秘訣といえそうです。