単なる"綺麗好き"と思われがちな「潔癖症」。人によって感じ方はまちまちだが、汚いものが目につき、その汚れに自分が汚染されたと思い込み、きれいにしなければという衝動に駆られてしまう。「ちょっと我慢すればいいだけじゃん」「過剰反応しすぎでしょ!」など、我慢すれば抑えられるもので、単なる本人のわがままとだ捉えている人も多いかもしれないが、当事者やその家族が厳しい生活を送っているケースも存在する。
 
 「外に出るために2時間シャワーして、帰ってきて、また2時間シャワーしてという感じで、それが面倒で外に出られなかった」。

 地面の汚れが気になり、それを避けて歩くうち、外出もままならなくなったと話すのが大阪在住の上田さん(29)だ。テレビの周りの埃が気になりだしたのを機に、部屋中の汚れを解消したいと思うようになったという。「洗濯しても汚れが落ちないような服は捨てちゃったり、売っちゃったりっていうのを繰り返してきた。"あれ?手が汚いんじゃないかな"というふうに思ってしまい、何度も洗い直すことを繰り返していた」。

 友人にも理解されにくく、一人で悩み、苦しんだ。「人生、楽しくないんじゃないかっていうふうに思い詰めてしまった」。
 

■トイレットペーパーを引き出す音が家中に…

 中学1年生の頃に症状が出始めた高校1年生のBさん。「自分のおしっことかうんちがすごく怖くて、拭いても汚い感じがして、いっぱい拭いてしまったり」。なぜそう思い始めたのかは自分でもわからず、ただ自らを汚いと思い込み、何時間もトイレに籠もった。

 母親は「拭く時の1回の量もおびただしく、引き出す音が家中に響き、その音でお兄ちゃんと私は半分ノイローゼになってしまうくらいだった。普通におしっこしただけなのに、トイレットペーパー1~2ロール使い切らないときれいになった気がしないようだ」と証言する。

 当初、母親はBさんの娘の症状を正しく把握することができず、潔癖症との診断を受けて初めて理解したという。「誰も笑わなくなったし、地獄を絵に描いたようだった。日々この子と一緒にどうやったら死ねるかなっていうのを考えた。つらいの一言だった」と振り返った。
 
 紗倉まなも「実は小学生の頃、母親がすごく心配性で、少しでも菌のありそうなものには触れさせないようにしていた。そのせいか潔癖症になり、鳥の糞が跳ね返って自分に飛んできちゃってるかもしれないと心配になったり、入念に手を洗ったり、親に"これは大丈夫"かといちいち聞いたりしていた」と明かした。
 原井クリニックの原井宏明院長(精神科医、専門行動療法士)は、治すかどうかはその人の価値観次第だが、トイレットペーパーの長さが一般の人の3倍、手洗いの回数や時間が3倍、シャワーやお風呂にかかる時間が3倍、水道代が一般家庭の3倍というのを目安として、強迫性障害としての潔癖症の疑いがある」とした上で、「Bさんのケースは自分の汚れが周りに広がる"加害恐怖"だ。嫌悪感もあるが、むしろ罪悪感でがある。自分が汚して家族を病気にさせてはいけないと思い、潔癖になってしまう。結果として家族を苦しめている」と話す。

■学業完璧主義から、手洗い完璧主義に…

 「完璧主義な性格だった」という松浦文香さんは、小学校の中学年の頃に「1番にならなければ」とのプレッシャーから不登校になり、「汚いものを触りたくない」とも思うようになったという。「ちょっと汚れただけでも洗いたくなってしまった。あとはお風呂に入る時間もだんだん長くなり、最終的にシャワーを浴びて体を洗うだけで1時間かかるようになった」。

 高学年で強迫性障害(潔癖症)と診断され、中学生のときには小児専門の精神病棟に入院、症状は重くなっていった。「学校にも通えず、家から出られなくなったので、孤独だった。普通に学校に行きたいと思い、いい人生を歩もうと頑張れば頑張るほど手を洗う時間が長くなっていった」。

 原井医師は松浦さんのケースについて「"手洗い完璧主義"と解釈してもらうとわかる。人並みでは満足できず、ここまでやれば大丈夫"という客観的な基準もない。例えば高所恐怖であるとか対人恐怖の人はその場から逃げるが、強迫性障害はその場で逃げず、"後で洗えばいい"というところがあるので、人前では表に出ず、普通に振る舞えうことができる。駅のトイレで2時間洗うことはないが、家では2時間洗ってしまう。そういう二面性も、家族や周りに理解してもらえない理由の一つだ」と説明した。

 その後、原井医師のもとで3日間の集団集中治療を受け、快方に向かった松浦さん。あえて嫌なものに触れたり、他の当事者から、様々な価値観があることを教わったという。さらに学校に通うようになり、友達に会い、勉強も頑張りたいと思ううち、自然と手洗いやお風呂の時間が短くなったという。症状が回復した現在は、原井医師のクリニックで勤務する。「あるところで自分が完璧な人生を歩んでいないことに諦めがついた。せめて高校を卒業しようと思い立った。今は生活に支障があることは全くないが、気になることはある。その時には先生がおっしゃったようなことを心がけるようにしている」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
 

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