「アブラハムには7人の子 1人はのっぽであとはチビ♪」

皆さんは幼稚園や保育園の頃、お遊戯会や運動会などで、こんな歌に合わせて踊りを踊ったことはありませんでしたか?

アブラハムには7人の子 1人はのっぽであとはチビ…」

軽快な音楽に合わせて右手・左手・右足・左足・頭・お尻・回って…と身体を動かす部分を増やしていくアブラハムの子、印象に残っている方も多いのではないでしょうか?

こんなにもよく知られてインパクト大!のこの歌ですが、その知名度とは裏腹に、歌の内容は謎だらけですよね。

そもそも「アブラハム」とは?

「1人はのっぽであとはチビ」とはどういうこと?

今回は、謎に満ちたこの歌の内容に迫ってみました。

内容は旧約聖書の『創世記』から

アブラハムの子は、アメリカの童謡「Father Abraham」(作詞・作曲:不明)に日本語の歌詞をつけたものです。

1979年6月21日に、子門真人の「アブラハムの子」のレコードが発売されましたが、そのジャケットには

1970年代に外国曲として日本に伝わったものに加藤孝広氏が訳詞をつけ、日本YMCAを中心に全国に広まった
〇CBSソニーがレコード化にあたり原作詞者・作曲者を数ヶ月にわたり探したが判明せず「原作家不明」のままでレコード販売となった

などの情報が記載されていました。

アブラハムとは、旧約聖書の『創世記』に登場する人物の名前です。彼にはサラという妻がいましたが、『創世記』本文によれば「不妊の女」で、しかも高齢でした。

神はアブラハムとサラの間に男の子が生まれると予告しますが、アブラハムは「高齢の自分と妻に子供ができるわけはない」と笑います。

すると神は「生まれた子供にイサク(彼は笑う)と名付けなさい」と命じます。

そしてまさに神が予告した時期に、サラは息子イサクを出産したのでした。

その後サラが亡くなると、アブラハムケトラという後妻をめとり、彼女との間にも6人の子供が生まれます。すでにその頃イサクは40歳で、リベカという妻を迎えていたので、6人の兄弟たちとはかなり年齢が離れていたことになりますね。

このことが「アブラハムの子」の

「1人(イサク)はのっぽであと(他の子どもたち)はチビ」

という歌詞の由来となったのでしょう。

実は「アブラハムの子」7人どころではなかった!残りの子供はどうしたの?

さて「7人の子」がいたというアブラハムですが、実はもっと子供がいました。

イサクの誕生前、子供が生まれなかったサラは自分の女奴隷のハガルを夫アブラハムのもとへ側女(側室)として連れていき
「彼女に子供を産ませて、私に子供を与えてほしい」
とお願いします。

ところが側女ハガルは妊娠したとたんに主人であるサラを軽んじるようになり、ハガルの生んだ息子イシュマエルが後に幼いイサクをからかうなどして、サラの怒りを買います。

サラの「あの親子を追い出して!」という訴えにアブラハムは苦しみますが、神からの「心配せず妻の言う通りにせよ」というお告げを受け、最終的にハガルとイシュマエルを追い出しました。

またアブラハムがイサクに全財産を譲ったときに、
「側女の子供たちには贈り物を与え、(中略)移住させ、息子イサクから遠ざけた(『創世記』25章5~6節より)」
とあることから、イシュマエルの他にも側女との間の子供が複数いたものと思われます。

この歌には「みんな仲良く暮らしてる」という歌詞がありますが、実際の「アブラハムの子」たちには「みんな仲良く」は暮らせない、複雑な事情があったようですね。

関連画像