銀行111行の2018年9月中間期決算では、「総資金利ざや」の中央値は0.15%で、前年同期(0.16%)より0.01ポイント低下した。資金調達の金利が運用金利より高い「逆ざや」が14行(前年同期18行)で、収益状況の厳しさを映し出した。
 株式や債券市場による「有価証券利回り」が上昇し、「総資金利ざや」は下支えされているが、「貸出金利回り」の低下には歯止めがかかっていない。マイナス金利下で貸出による収益アップが難しいなか、銀行は非金利収入による新たな収益源の確保が急務になっている。


銀行の収益状況を示す「総資金利ざや」

 銀行の「総資金利ざや」は、貸出金や有価証券で稼ぐ資金運用利回りから、預金や債券、コールマネー、借用金などの資金調達コストを差し引いた数値で、銀行収益を示す指標の一つ。数値のプラスは資金運用で収益を上げ、マイナスは「逆ざや」で貸出や運用で利益が出ていないことを示している。

「総資金利ざや」の中央値は0.15%、前年同期より0.01ポイント低下

 銀行111行の2018年9月中間期決算の「総資金利ざや」の中央値(全データを昇順または降順に並べ、真ん中に位置する値)は0.15%だった。前年同期(0.16%)より0.01ポイント低下した。半期(6カ月)決算ベース推移では、2015年3月期は0.17%だったが、16年3月期にかけて投資信託の配当増や保有投信の解約益などの寄与から0.18%になった。しかし、マイナス金利実施後の16年9月期には、一気に0.13%に落ち込んだ。2017年9月期は株価上昇などもあって0.16%に上昇したが、その後は横ばいで推移している。

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「総資金利ざや」を「有価証券利回り」が下支え

 2018年9月中間期は、111行の約6割の67行(構成比60.3%、前年同期51行)が前年同期より「総資金利ざや」が拡大した。だが、これは必ずしも貸出等の本業回復とは言い切れない。
 111行の中央値比較では低金利が続き、主に「貸出金利回り」(1.13→1.08%)の落ち込みで「資金運用利回り」(1.12→1.06%)が低下し、同時に「預金等利回り」(0.02→0.01%)の低下もあって「資金調達原価」(0.96→0.91%)は前年同期を下回った。
 このように運用と調達がともに利回りを下げるなか、「資金運用利回り」のうち、有価証券の受取利息や配当金などが増加した。この結果、「有価証券利回り」(1.16→1.20%)が前年同期より上昇し、落ち込みを下支えして相対的に「総資金利ざや」が前年より改善したケースが多くなったとみられる。一方、「総資金利ざや」が前年同期より縮小したのは40行(構成比36.0%、前年同期51行)で、前年同期より11行減少した。前年同期と同率は4行(前年同期9行)だった。

「逆ざや」は14行

 2018年9月中間期決算で「総資金利ざや」がマイナスの「逆ざや」は、14行(大手銀行2行、地銀5行、第二地銀7行)だった。前年同期(18行)より4行減少したが、マイナス金利導入前の2015年9月中間期(11行)より多い水準にある。
 これまで9月中間期決算の「逆ざや」は、マイナス金利が導入された直後の16年が18行、17年が18行と推移し、マイナス金利が銀行の本業収益に深刻な事態を招いている状況を反映した。

地区別の「総資金利ざや」、九州21行が最高の0.27%

 地区別では、「総資金利ざや」が最も高かったのは、地銀・第二地銀の統合連携が進み、預貸率が高い九州21行の0.27%。次いで、中国9行0.22%、北海道2行0.19%、北陸6行と四国8行が各0.18%、関東19行0.15%、近畿11行0.13%、東北13行0.12%、東京8行0.11%、中部14行0.06%の順。
 前年同期比では、10地区のうち、5地区で前年同期より上昇した。東京の0.10ポイント上昇(0.01→0.11%)を筆頭に、北海道0.06ポイント上昇、東北0.04ポイント上昇、北陸0.03ポイント上昇、中部0.01ポイント上昇の順。一方、関東、近畿、中国、四国、九州の5地区で前年同期より縮小した。


 銀行111行の2018年9月中間期決算で、「総資金利ざや」の逆ざやは14行だった。日銀のマイナス金利の導入前より多い状況が続き、銀行の収益環境の厳しさを映し出している。
 4月3日、政府は経営が厳しい地方銀行の再編を促すため、県内貸出金シェアが高くなっても地元住民や中小企業の利便性を重視し、独占禁止法の特例で経営統合を認める方針を示した。  銀行は今後も厳しい収益環境は続くとみられ、これまで以上に銀行間の連携や統合・合併など業界再編が加速する可能性が高くなっている。

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