アニメ『どろろ』(→公式サイト)。今日4月22日(月)22:00より、TOKYO MXほかで、第十五話「地獄変の巻」が放映される。
Amazon Prime Videoで毎話24:00頃から配信予定。

どろろの特殊すぎる刺青
どろろの父親が残した財宝の話がついにスタート。
財宝にまつわるパートは、原作が駆け足で4巻で畳んでしまったこともあり、有耶無耶になってしまっている。
アニメ版はかなりこの部分をがっつり掘り下げるようだ。

中でも、どろろの背中に彫られた地図のディティールは、かなりオリジナル要素が増えている。
宝のありかの地図は、原作ではどろろの背中に全部描いてあり、誰でも服を剥げば見える状態だった。
アニメではかなり複雑に、地図の条件が幾つか出てくる。
・半分は死んだ母親の背中に、もう半分がどろろの背中に描かれている。
・身体があたたまると地図が浮かび上がってくるため、普段は見えない。

母親は亡き人となり、その背中を知っているのはどろろ一人だけ。「ゴールデンカムイ」のように背中の皮を剥がしてもだめだ。どろろの記憶を組み合わせなければ、解けないようになっている。
加えてこの刺青が発見できたのは、生まれて初めてどろろが温泉に入って温まったから、というレアシチュエーション。
そもそも刺青を見た感じだと、パット見にはそのまま地図にはなっていない。だいぶ難解だ。

ここで「心から信じられる相手に出会えたら、その時きっと分かる」という、母の言い残した言葉がひっかかる。
そもそも洋服を脱いで裸になり、身体が温かい状態で背中を見せるなんて、信頼していない相手には絶対しない行動だ。
5・6話で、どろろの母親がどんな貧困にあえいでも、絶対に身体を売らなかった話があったのとつながってくる。
裸になり性行為をしたら、否が応でも母親自身の刺青が浮かび上がってしまう。

どろろと百鬼丸は、まだ双方幼いこともあり、一緒に風呂に入ったり、OPで水浴びをしていたりするくらいには仲がいい。
ただ、百鬼丸は今目が見えていない、というのが大きなキモになってくる。原作ではかなり早い段階で目が戻っているため、刺青を見つけたのは百鬼丸本人だった。アニメではまだ両目ともに取り戻していない。
恥じらいが生まれ始めている女の子のどろろ。百鬼丸の目が見えるようになった時、素肌を晒せるようになれば、二人で財宝を探す旅を続ける、という選択肢が出てくる。

前期のOPは、ラストシーンでどろろと百鬼丸が離れ離れになりそうな描写があった。原作がお別れエンドなので、どうしても見ていて不安になった。
後期のOPでは、アジアンカンフージェネレーションの曲の印象もあって空気はすっかり明るくなり、二人の旅はどこまでも続く、という希望が見え始めた。

戦国時代とお金
琵琶丸「お前さんたちが鬼神の何匹か斬ったところで、世の中なんにも変わりゃしないよ。けどね、お前さんの背中のそれは、人を動かし世を変えるでかい力の源になる」

簡単に人が死ぬ戦国時代ゆえの、「お金」の価値観が描かれている。
どろろの母親が餓死したように。通り過ぎた村々の白骨化死体を見てきたように。そもそも生きていくことができない状態が、醍醐の国以外の各地にはびこっている。
「腹いっぱい食えれば、心も穏やかになる」という琵琶丸の言葉は真実だ。心の余裕がないから争いが生じやすくなる。お腹が満たされれば、未来のこと、人のためのことを案じられるようになる。

「食うや食わずの身の上で、それでも志を貫けるのなんてほんの一握りだけだからねえ」という発言は、どろろの母親の過去の境遇に重なってくる。
夫の火袋がためた財宝のありかを、わざわざ見えない背中に彫らせた母親の真意。
「あたしは聞かないほうがいい。知ったらきっと使っちまう。大願のためじゃなく、どろろ1人のためにね」
彼女ほど強い決意を持ち、火袋と共に戦ってきた人間ですらも、子供のためなら志のためのお金を使ってしまうだろう、と本音を見せる。未来への余裕が無いと意思は保てない。
裕福になろうという欲望すら、そこには湧く余裕がない。

「よかったじゃないか、これでお前さんたちの道が増えた」という琵琶丸の発言が印象的。
二人で財宝を探し、自分たちのためなり人々のためなりにお金を使うのであれば、プラスの要素は大きい。原作の琵琶丸はそれを、人間の「いきがい」と呼んだ。
しかしそれに反し、百鬼丸が鬼神を倒して身体を取り戻そうとし続ける限り、醍醐の国が滅びるというマイナス要素が重なるばかり。
選択肢が増えたと同時に、百鬼丸が鬼神と戦う理由がどんどん小さくなっていく。

あやかしの不気味さのバランス
原作ではあやかしの気持ち悪さトップクラスだった、鯖目とマイマイオンバの描写。アニメで強化されまくっていた。
特に最初の、どろろをやたら慕うぶくぶくした子を引き連れる、謎の女性のふわっふわした表現は、ベースは原作そのまま、しかし不気味度は比較にならないほどアップ。寝込みを襲ってきたあやかしも、醜悪さと虫らしさを加えたアレンジがなされている。動きが丁寧なので、気持ち悪さが跳ね上がっている。

マイマイオンバのエピソードは、グロテスクさと「生命」のバランスの表現がかなり重要な内容だ。
この後、どこまで不気味さの表現に踏み込んでいくのか、かなり気になる。おそらくこのスタッフであれば、残虐趣味方向に偏りすぎず、気持ち悪さを出してくれるはず。

ネットの感想の中に、百鬼丸の一挙一動、一言二言に嬉しくなるファンが多数見られた。
あやかしが襲ってきた時、百鬼丸がどろろに対して「下がってろ」というこの発言だけでも、ものすごい成長が見られる。どろろのことを守ろうとするようになった。
その割にばけものの子供を押し付けられた時は、無害なこともあってか、完全無視でどろろに丸任せという部分もある。面倒というか、興味がないといった様子。
百鬼丸の心は、成長の真っ只中だ。

(たまごまご)

どろろBlue-ray BOXイメージイラスト