●手元のタッチパネルで回生ブレーキ強弱の操作も可能
ジャガー・I-PACE(959~1312万円)は専用のプラットフォームを持つフルEV。前後2列のシートを持つ乗用車となります。
そのボディ構造の94%はアルミニウムになっています。
もともと専用に高剛性となるように設計されたでボディ。ここにフロアへ敷き詰められた走行用バッテリーの剛性も合わせることで、現在の市販ジャガー車中で最も強靭なボディを持つモデルとなりました。
前後にモーターを各1個ずつ配置し、合計400psの出力で4輪を駆動、最大トルクは696Nmになります。0-100km/h加速は4.8秒という、スーパースポーツ並みの性能となっています。
充電口は左右に2個あります。左は急速充電用で、通常充電用の配置は右ですね。後席後方のラゲッジ空間は広いです。
また、エンジンがなくなったことにより、フロントにも小物入れ程度の空間が備わります。
インテリアは全長4.7mのボディに対してキャビン空間が広く取られており、非常に広々としています。
インパネは洗練された造形。ドライバー正面のメーター部分はTFT液晶のモニターになっています。
またセンター部分にも上下2枚のモニターが備わっており、ナビと空調等をタッチ操作でコントロールします。ドライブセレクターはプッシュ式になっており、センターコンソールに埋まっています。
試乗を開始し、まずは通常のガソリン乗用車の一般走行と同じようなタイミングと踏み込み量で、アクセルを踏んでいきます。
当然ですがほぼ無音で、するすると発進していきます。その後の加速減速に関しても、EVだからといった違和感は全くありません。もちろん、トルクは全域で非常に厚いのですが「いかにもEVですよ」といった、ギクシャクした変動がないのです。
白眉はアクセルをやや深く踏み込んだときです。0km/hからのスタート加速は富士急ハイランドのドドンパなみにドン!と出ます。踏み込んでいる当のドライバーですらしっかりステアリングを握り、視界の確保と心の平静に努める必要があります。
今回は自制して踏み込んだ程度でしたが、これを深く踏み込むためにはおそらく高速道路の合流でも役不足(道路側が)。クローズドのサーキットなどで試す必要があるほど、といえばその速さが分かってもらえますでしょうか。
なお、走行中に回生ブレーキの効き方を高低二段階に切り替えが可能で、センターのタッチパネルで操作します。
これを「高」モードにしておくと、日産のワンペダルドライビングのようにアクセルだけで加速から制動までを担うことができます。
走行モードを「ダイナミック」を選択し、アクティブサウンドデザインというシステムを使うと、本来は無音であるEVにエンジン音的なサウンドが追加することができます。これもセンターのタッチパネルで操作することが可能になっています。
静かにするカームというモードから、一番音の大きいアクティブまで3段階にコントロールすることができます。
実際に試してみると、グォオオという低く唸るような疑似エンジン音が発生しました。疑似とは書きましたけれども、実際には本物のエンジンと全く遜色ない音がしています(目隠ししてテストしたら本物のエンジン音と区別ができないと思います)。
しかし音のボリュームは絶対的に小さいので、I-PACEというEV車に対してドライバー自身が矛盾を感じるレベルではないという点がさすがだなと思います。
この疑似エンジン音やボリュームひとつとっても、I-PACEは非常によく時間をかけて調整されていることがわかります。一事が万事という言葉もあるように、こうした細かな作り込みと調整は当然、車両全体でも行われているでしょう。
ともかくジャガー・I-PACEはEVのハイパフォーマンスカーという、新しいモデルの範疇を超えて、普通のクルマ好きにとっての選択肢のひとつになりうる熟成具合が魅力的です。
I-PACEに乗ると「本当に未来はEVが主流の時代が来るのかもしれない」と思えました。
(写真・動画・文/ウナ丼)。
「普通のクルマ」として選択できる熟成度と車輌全体の造り込み【ジャガー・I-PACE試乗】(http://clicccar.com/2019/04/23/732890/)
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