Credit: Devid Villa/ CNRS Phototheque
Point
■粘菌は忌避物質を記憶することができ、覚えた物質を効率よく避けて移動することができる
■この記憶は、融合することで他の個体とも共有できるが、記憶の本体はわかっていなかった
■記憶が形成された粘菌では、忌避物質である塩分濃度が上がっており、塩水の直接注射で記憶が形成されたことから、記憶の本体が塩そのものであることがわかった

謎の生物、粘菌。

彼らは単細胞生物であり、神経系を持っていない。それにもかかわらず「記憶力」があり、他の粘菌と記憶を共有できる不思議な生物だ。

この記憶がどのように形成されているのかは不明だったが、新たな研究で、外部の物質を直接取り込むことで記憶にしていることがわかった。某漫画のキメラ=アントかな…?

研究は4月22日付けで「Philosophical Transactions of the Royal Society B」に発表されている。

変形体同士が融合することで共有される記憶

モジホコリなどの変形菌は、変形体となって網目状に広がって成長し、栄養物に先端を伸ばす。途中で「嫌いな物質」に接しても、それを避けた最も効率の良い経路を通ることが可能だ。

さらに変形体同士が融合することで、記憶の共有もできる。

粘菌の「記憶」の正体は塩分?

では、何が粘菌の記憶を形成しているのだろうか。フランスの”Centre de Recherches sur la Cognition Animale”の 研究者たちは、まず粘菌であるモジホコリを6日間、忌避物質である塩のある環境で育てて、習慣記憶を植え付けた。

次に、この粘菌の体内にどれほどの塩分が含まれているのかを調べたところ、学習していない粘菌に比べて10倍の濃度になっていることがわかった。

さらに学習した粘菌を塩分のない環境で2日間育てたところ、記憶はなくなり、同時に塩分濃度も下がっていた。塩分と記憶の関連性は確実だ。

次は記憶=塩という仮説の実証だ。記憶が形成されていないまっさらな粘菌に直接塩水を注射して、行動を調べてみた。すると2時間後には、まるで6日間学習した粘菌のように振る舞った。つまり、記憶の本体が物質そのものだったわけだ。

しかもこの記憶は結構長持ちする。粘菌は移動のできる変形体と、胞子を作る動かない子実体という2つの形態を持つ。変形体で形成された記憶と塩分濃度は、子実体を経ても数ヶ月単位で保存されていたという。

研究者たちの次の目的は、複数の忌避物質を同時に記憶できるか調べることだという。

 

私たちの考えるような「記憶」じゃない気もするけど、粘菌先輩スゴイ。

「脳は無菌」の常識が覆される? 「脳内細菌」を発見か

reference: EurekAlert! / written by SENPAI
粘菌の記憶は「物質そのもの」を取り込んでつくられていた!?