世田谷区議会議員・藤井まな(公式HP)より

 藤井まな(敬称略)は1980年生まれで立憲民主党所属の世田谷区議会議員である。民泊の実態を知るまでは「何となく気持ち悪いから反対」だったが、実態を知り推進派の急先鋒となった。

 かつて、内村鑑三が「余はいかにして基督教徒になりし乎」という書物を著したが、今回は、ごく一般的な地方議員がどのように民泊を理解するようになったのか、「彼いかにして民泊推進派になりし乎」を送ることとしたい

◆藤井区議が反対派だった理由
「民泊に反対していたのは、単純に民泊に対する理解がなかったからです。僕の頭の中で当初あった民泊のイメージというのは、“ある程度お金を持っている人がいて、普段住んでいるのとは別の場所、投資対象の部屋なんかを貸しに出して、カギはボックスに入れているのを暗証番号で取り出して、コミュニティに対する何の説明もないまま外国人が泊まりにきて、そのまま去っていく”みたいな感じでした。それだと地域の安全が担保できないよな、というのが区議会議員としての一番の懸念でした」

 政治家としては当然の懸念だろう。

「当然、議員としての最優先事項は住民の生命と財産を保護することなわけで、そう考えたときに見知らぬ外国人が出入りするという民泊というのは―新宿とか、渋谷とか、繁華街の観光地ならまだしも―住宅地が多い世田谷区にはそぐわないし、正体不明の外国人によって生活が乱される、ということは普段の生活を財産ととらえると財産が脅かされる可能性があることになる、という考えでした。ゴミが出しっぱなしになる、とか」

 この「何となしの不安感」は民泊について耳に入り始めたころから昨年実際に民泊ホストと知り合うまでずっと続いていたという。

世田谷区で、宿泊施設が足りなくなるのは明らかだった
「民泊そのものを完全否定することはできない、とは思っていました。2020年オリンピックパラリンピックがあるのはもちろんですが、世田谷区でも(馬事公苑で)馬術競技などが開催されますからね。そのときに世田谷区の宿泊施設は足りるのか。僕が調べてみると世田谷区の宿泊室数がたしか1152室とかなんですよ。この施設は普通のホテルだけでなく、ラブホテルなんかも全部宿泊できる場所を含めても、という数字なんですよ。だから施設が足りないのは明らかですよね。ということで私が当初提案していたのは“商業地域に限って民泊OKとしてはどうか”という案でした」

「商業地域」としておけば、地域内に住んでいる人も元々商業が目的で集まっているのだから宿泊施設・民泊も受け入れやすいのではないか、というのが藤井の考えだった。

 世田谷区でいうと、駅前には大なり小なり「商業地域」はある。ただ、言うまでもないがこの規制だと住宅地域にあるホスト在宅型はダメということになってしまい、現実に合わない。本連載で一貫して繰り返すように、問題が起きているのは全て不在型であり、在宅型においては一切問題が発生していないのだ。

「それで次に出てきたのは“第一種低層住宅地域を除く”でした。こうすると、商業地域よりは幅が広がりますよね。そういう議論をしているときに先輩からの紹介で知り合ったのが在宅ホストの皆さんでした」

◆ホスト在宅型の民泊であれば何の問題もないことに気づいた
 ここから藤井の考え方が180度転換することになる。

「そこで私は初めてゲストとホストが同じ家の中で過ごすという実態があることを知ったのです。それまでの私自身、そして議会での議論も全て不在型民泊のことばかりで、在宅型ホストについては一切考えたことすらありませんでした。そこで“ああ、在宅型なら一番の懸念だった区民の生命財産が担保できるのかな”と考えるようになりました」

 結局、本連載について批判や罵詈雑言を繰り返す御仁は、かつての藤井と同じく「不在型」について色々言っているわけだ。在宅型については批判の一切が当たっていないということに、そろそろ気付いてもらいたいものだ。

 ここから藤井は例外規定をもたらすために尽力し、現在の世田谷区においては「区長が特別に認めた場合」商業地域だの第一種低層住宅地域だのに関係なく、民泊事業を行えるようになった。

ラグビーワールドカップで来日する外国人の受け入れ先にも
 五輪のことは誰もが認識しているはずだが、今年はもう一つ大きなイベントがあることを忘れてはならない。「ラグビーワールドカップ」である。

「確かにそうですよね。会場になる都市は、準備ができているのかな……え、柏にもオールブラックスが来るんですか? 一番人気じゃないですか。確かにラグビーなら、日本代表を応援するというよりも、オールブラックスを見たいという人のほうが多いくらいかもしれませんね」

 ラグビーに関しては、日本でブームが続いているか、五郎丸がどうなるかというのは一切関係ない。オーストラリアニュージーランドラグビー人気は不変である。そして、一般論としてラグビーファンサッカーファンよりも社会的階層や収入が高い。日本に来ないはずがないのである。

 そういえば、筆者の自宅にもラグビー選手が夫婦で泊まりに来たことがある。ラファエルとセリーヌというフランス人夫妻だった。

 ラファエルは二十代をずっとラグビー選手として過ごし、膝を痛めて引退した。その後夫婦で世界旅行を続けているという。

 その途上でシドニーマラソンにも夫婦そろって出場し、セリーヌが4時間15分、ラファエルが4時間半で完走したとのことだった。ラグビー選手というのは、上半身がごつ過ぎて、膝その他にケガを負っていることが多く、マラソンで夫人のほうが少し早かったのは決して不思議なことではない。フランスもまた、ラグビー大国である。

 次回は、民泊によって世田谷区はどのように良い方向へ進むと考えているのか、藤井の話をもう少し続けていきたい。

【タカ大丸】
 ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日たけしのTVタックル」「たけし超常現象XファイルTBS水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。

世田谷区議会議員・藤井まな(公式HP)より