東京ガスグループは、首都圏を中心に日本のエネルギー供給の一翼を担っています。また、お客さまの生活のお役に立てるよう、さまざまな取り組み・活動を行ってきました。

1986年設立の「都市生活研究所」は、多面的な調査・分析をもとに、都市生活者の暮らしを創造するための提言を行っています。

まもなく「令和」に改元される今、都市生活研究所では東京ガスが蓄積してきたデータを基に、「平成」という時代を、ある家族の物語とともに4回の連載で振り返る都市生活レポートを発行します。

最終回となる、この第4回では、「価値観の変化」をメインテーマに、平成30(2018)年を振り返ります。


【本連載に登場する佐藤家の紹介】
昭和31年生まれの夫・隆は保険会社に勤める会社員。
4歳年下の妻・恵子は職場結婚後、専業主婦になりましたが、子育てが落ち着くと事務の仕事を始めました。
昭和61年生まれの長女・愛、昭和63年生まれの長男・翔太は、すでに結婚や就職で実家を離れました。
この家族が生きた「平成」を振り返ります。



■第4回■ 平成30(2008)年を振り返る

時代の背景
マスコミでは連日のように「人手不足」が報じられ、企業にとって労働力確保は待ったなしの課題となりました。
「働き方改革」が進められる中、企業も大きな変化を迫られます。
その1つが、多様な人材を積極的に活用する「ダイバーシティ」の推進でした。

家族の物語
長女・愛は32歳になり、夫との間に誕生した娘は2歳になりました。夫より早く出社するため、朝食作りと保育園への送りは夫の仕事。お迎えは愛の担当ですが、残業の日は近くに住む母・恵子が代わりに行ってくれています。
長男・翔太は外資系企業に勤め、ワーク・ライフ・バランスをうまくとった人生を楽しんでいます。
62歳になった父・隆は再雇用で、今も保険会社に勤め、恵子は仕事と孫の世話で、忙しくも、充実した生活を送っていました。


1.価値観の変化


 男女間の感覚も、会社選びの感覚も、消費の感覚も、世代間ギャップがあります。

(1)若い世代ではワリカンがふつう ~彼女とのデータで、おごろうとしない翔太。心配してしまう隆~

 「えっ、彼女とのデートでワリカン?それで大丈夫なの?」。隆の語気があまりに強かったので、翔太は「彼女も働いて稼いでいるわけだし……」と答えるのが精一杯で、たじろいでしまいました。

 隆が独身だった時代、デートの費用を女性に負担させることは、どちらかというと「非常識」でした。
「デートの食事代は、男性が払うのが自然だ」という設問に「あてはまる」「ややあてはまる」と答えた男性の割合は(次のグラフ参照)、世代によって明確に異なりました。昭和46(1971)年以前に生まれた「創食~遊食」世代は6割以上が「男が払うもの」と答えたのに対し、昭和47(1972)年以降に生まれた「選食~ゆる食」世代は3~4割。バブル期までの世代と就職氷河期以降の世代で、価値観が大きく異なっているようです。
※「食・世代」については、参考1を参照。


(2)「定時で帰れない会社はNG」の若者が増加 ~海外文化にもなじむ翔太は、隆に理解できない感覚の持ち主~

 翔太は30歳。外資系企業に勤め、会社から30分圏内にあるシェアハウスで外国人と生活しています。
「毎日、18時には帰ってみんなと料理するんだ。いろんな国の仲間がそれぞれ自国の料理を作るから楽しいよ」と言うではないですか。定時には帰るけれど、仕事には大きなやりがいを感じている――。んんん?このあたりの感覚が、隆にはピンときません。

 次のグラフは、昭和52(1977)年~昭和56(1981)年生まれの「装食世代」と昭和57(1982)年~昭和63(1988)年生まれの「ゆる食世代」を対象に「定時で帰れない会社には勤めたくない」かどうかを聞いた結果です。「あてはまる」「ややあてはまる」と答えた人の割合は、「装食世代」の24.9%に対して「ゆる食世代」は40.3%。無理をしない「ゆる食世代」の特徴が表れています。
※「食・世代」については、参考1を参照。


(3)世代間で、買い物の基準も変化 ~翔太の世代は自分らしければ安いものでもいい

 久しぶりに実家で週末を過ごしている翔太。リビングのソファに横になってテレビを観ています。傍らで恵子が洗濯物を畳んでいると、ふと翔太の腕時計に目が留まりました。両親が高校入学の際にプレゼントしたものでした。「まだその時計してるのね。買い替えればいいのに」と恵子が言うと、「いいよ。まだ全然壊れてないし、気に入ってるから」。

「装食世代」と「ゆる食世代」を対象に「買い物をする際に、どんな点にこだわるか」を聞きました(次のグラフ参照)。両世代を比べると「品質」「素材・質感」「原産地・成分」にこだわるのは「装食世代」のほうが多いのに対し、「安全性」「自分らしさ」「価格の安さ」にこだわる人はゆる食世代に多いという結果に。「無理せず、構えず、自分らしく」という、「ゆる食世代」の特徴が出ています。
※「食・世代」については、参考1を参照。


2.全員子育て

 ママがフルタイムで働くのが当たり前に。
 支え合っての子育てが必須の時代です。

(1)「共働きママの忙しさが際立つ ~夫は協力的でも、「自分の時間」はほとんどない愛~

「行ってきますっ!大輔、悪いけどあとお願いね」
 長女の愛が、朝食もそこそこに出かけていきます。3年前に結婚して1児の母。実家のそばにマンションを購入し、今も正社員としてフルタイムで働いています。

 愛の夫・大輔は大学時代の同級生でメーカーの研究員。愛の実家近くに住むことに賛成してくれました。恵子は出勤日を減らして週2回、保育園へのお迎えを手伝っていますが、自分の子育て時代とはまったく異なる「共働きママの忙しさ」に驚くばかりです。

 次のグラフは、ママたちの時間意識に関する調査結果です。働き方で分けた4タイプを比べると、フル共働きママは「時間をお金で買いたいと思うことがある」と答えた割合が他のママたちに比べて高く、「時間が欲しい」という切実な思いが表れています。
※「共働きの定義」については、参考2を参照。


(2)夫の家事は妻の評価を得られていない ~愛の夫・大輔は、朝も晩もしっかり協力しているが…~

 愛の夫・大輔が、仕事の休憩中に先輩研究員と話しています。「いやぁ、仕事しながら子育てはたいへんですねぇ。楽しいですけど」「ちゃんと分担してる?家事とか育児とか」「朝は子どもを保育園へ送って、夜は夕食の片付けや部屋の掃除、風呂も洗っています」

 なかなか自信たっぷりですが、果たして愛は、大輔の協力に満足しているのでしょうか――。

 子育て中のママとパパに「夫と妻の家事分担比率は?」と聞いたところ、フル共働きパパでは「自分は2割以下」と答えた人は30%であるのに対し、「夫は2割以下」と答えたフル共働きママが半数以上という結果が出ています。以前に比べると、家事分担している夫は増えていますが、自分が思うほど妻の評価を得られていないケースも多いようです。
※「共働きの定義」については、参考2を参照。


(3)共働きママの半数は母親の協力あり ~子育てしながらフルタイムで働く愛の生活は、両親の支えがあってこそ~

 今日は、恵子が孫の葵を保育園へ迎えにきました。
「あおちゃーんおばあちゃんがお迎えに来てくれたよ!」と、保育士さんが明るい声で呼びかけます。

 隆と恵子は、葵の保育園の行事に参加したり、葵が急に熱を出したときに面倒を見るなどの手助けをしています。家族の誕生日などの際には、みんなで集まってお祝いをしますが、愛と大輔夫婦は「父さん母さんが近くにいなかったら、働きながら子育てなんて無理だよ」と、両親の協力に心から感謝しています。

 次のグラフは、内閣府が行った調査で、「第1子が1歳時に妻が就業したケースで、子の祖母から子育ての手助けを受けた割合」の年代別推移です。共働きが多数派になっている今、「祖父母による育児・家事支援」がますます重要になっています。


3.「ウチ余暇」


 仕事より余暇、アウトドアより家、
 「家でゆっくり」が好まれています。

(1)余暇重視派仕事重視派を超えた ~翔太と大輔はプライベート重視、愛の答えは「ハーフハーフ

 今日は、隆の62歳の誕生日。家族全員が実家に集まってお祝いです。楽しくワイワイやっていたのですが、究極の話題に突入しました。それは「仕事とプライベート、どちらが大事か」です。愛は半々とお茶を濁し、大輔はプライベートと答えました。翔太ももちろん、プライベート重視。隆は、自分の現役時代を思い返すと、「仕事だった」と答えざるをえませんでした。本音では今でも「仕事のほうが大事」と感じています。

 次のグラフは、「生活の力点を、仕事と余暇のどちらにおいているか」を聞いた結果です。平成23(2011)年以降、「余暇においている」という人の割合の増加が続き、平成29(2017)年の調査で初めて「余暇重視派」が「仕事重視派」を上回りました。仕事について、自己実現のためという人は減少傾向で、意識の変化が見られます。


(2)レジャーより“何でもない日常”が大切 ~愛の夫・大輔は、家族でゆっくり家で過ごすのが大好き~

 隆の話を受けて、愛が話し始めます。
「私の会社にも『自己実現の1つ』と考えて、仕事に没頭している人がたくさんいるよ。反対に『生活の糧を得る手段』と割り切っている人もいる。私は中間だけど、お父さんの時代に比べていろんな価値観があるんだよ。あとね、休日の使い方も人によって全然違うよ。大輔なんて、家にいるのが大好きなんだから」

 愛が言うように、休日の過ごし方も多様化が進んでいて、遠出してレジャーを楽しむというよりは、大輔のように「家でまったり」を好む人たちが増えています。次のグラフのように「今後の生活で重視して行っていきたいこと」として、「睡眠」「料理」「家での食事」の増加は特徴的。あわただしいからこそ、積極的に心身を休めることが大切にされている面もありそうです。


(3)“料理をすること”自体の価値が高まる ~愛の心からの願いは、葵と“フツウ”の生活をすること~

 みんな集まっての隆の誕生日、恵子が手料理をふるまいました。「このポテトサラダ、愛のと同じ味!」と、大輔はうれしそう。恵子が「あおちゃんにも受け継いでね」と言うと、愛はこう答えました。
「うん。葵が小学生くらいになったら、一緒に料理したいなぁ」

 共働きママは非共働きママより「料理は自分を表現するもの」と考える傾向があるようです(東京ガス都市生活研究所「子育てママの食事情2016」)。また、次のグラフのように、料理をする時間も「子どもとコミュニケーションがとれる」として、大切にしたい気持ちがうかがえます。平成という時代の終わりに、あらゆる多様化が進む中、家での日常を大切にする「新しいフツウの暮らし」が始まっているようです。


■参考1:都市生活研究所オリジナル世代区分「食・世代」
 「食・世代」は、都市生活研究所が作成した世代区分であり、昭和生まれ(昭和元年昭和63年生まれ)の生活者を「食」という切り口で定義しています。「食・世代」の定義は、人口の増減や経済状況といった社会背景を踏まえた上で、幼少期から現在までの食生活の実態、食に対する意識に関する調査を実施し、その分析結果から導き出したものです。
 食生活は、時代背景(社会事象、流行、教育)や生活者の価値観の変化などと密接に関わりあっています。そのため「食・世代」は、食分野のみにとどまらず暮らし全般において、生活者の価値観や行動の特徴を示すことができると考えられます。


■参考2:「共働き」の定義
 一口に「共働き」といっても、妻がフルタイム正社員の家庭と週2~3回の短時間パートの家庭では、ライフスタイルや価値観は異なると考えられます。そのため、都市生活研究所では、妻の働き方によって子育てファミリーを以下の4つのタイプに分類し、定義しました。

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改元までの2週間、4回連載でお届けした、平成の「暮らし」の振り返り。いかがでしたでしょうか。
東京ガスグループは、令和になっても、お客さまの生活のお役に立てるよう、さまざまな取り組み・活動を行ってまいります。

バックナンバー
第1回 平成元年を振り返る https://www.tokyo-gas.co.jp/tamago/pdf/201904-03.pdf
第2回 平成10年を振り返る https://www.tokyo-gas.co.jp/tamago/pdf/201904-04.pdf
第3回 平成20年を振り返る https://www.tokyo-gas.co.jp/tamago/pdf/201904-05.pdf


東京ガス 都市生活研究所のご紹介> https://www.toshiken.com/
都市生活研究所は、東京ガスの社内シンクタンクとして1985年に発足しました。
以来30年以上にわたり、生活者の立場から食生活や入浴、家事、室内環境など、エネルギーに関わる暮らしのあり方を考え、「生活者にとって本当に価値がある暮らし」の提言を社内外に向けて発信しています。
都市生活研究所では、首都圏に暮らす人々の生活・意識・行動の現状及びその変化を経年的に把握するために「都市生活者の意識・行動観測(通称:生活定点観測)」調査を行っています。調査は平成2(1990)年を始点に3年ごとに過去10回実施しており、今後も継続して行きます。

配信元企業:東京ガス株式会社

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