JR西日本が整備を進めていた「おおさか東線」の新大阪~放出(はなてん)間、通称「北区間」が2019年3月16日に開業し、これで2008年に営業開始した「南区間」(放出~久宝寺間)と合わせて、当初計画の全区間が完成した。

放出駅付近ですれ違う、奈良行きの「直通快速」(右)とおおさか東線普通列車(左)

もともと存在していた貨物専用の城東貨物線を複線化し、旅客列車を走らせようという1950年代からの構想に基づき、新駅や新大阪への乗り入れルートを建設。鴫野~放出間で線路を共用していた学研都市線との分離・複々線化などを行ったものだ。

元より大阪市東部や東大阪市といった人口が多い地域を縦貫しているだけに、潜在的な旅客需要は見込まれていた。既存線の改良により、地下鉄のような莫大な建設費をかけることなく、これに応えた形だ。

新駅のうち、南吹田と城北公園通は、これまでバスしか公共交通機関がなかった地域に設けられており、交通の定時性、速達性の改善がおおいに期待される。JR淡路とJR野江は、それぞれ阪急、京阪との接続駅であり、周辺地域はもちろん、両私鉄の沿線と新大阪との間の往来が、混雑する大阪市中心部を経由しなくとも可能となった。ルートによっては乗り換え回数が減った。

広域的にみれば、JR西日本は「直通快速」を新大阪~奈良間に設定し、JR大和路線奈良方面と新大阪との間のアクセス改善をもくろんでいる。新大阪~奈良間の直通列車は、1988年の「なら・シルクロード博覧会」開催の際に、梅田貨物線~大阪環状線経由(現在、関空特急「はるか」などが走るルート)で臨時快速が運転された実績があるが、単線の梅田貨物線や列車本数が多い大阪環状線ダイヤに挿入する苦労があり、その後、定期列車化されることはなかった。それがおおさか東線の全線開業で、毎日4往復の快速列車の設定が可能となったのである。

なぜ、新大阪へのアクセスを改善するのか

新大阪駅東海道・山陽新幹線ターミナル駅新大阪へのアクセスを改善するということは、まず第一に新幹線を便利に利用できるようにするということだ。奈良方面の直通快速を例として、沿線地域から発生する広域的な流動の一翼を担い、かつ新幹線の沿線から観光客、ビジネス客を招き入れるというもくろみが、おおさか東線の建設経緯および、今回のダイヤ設定から読み取れる。

おおさか東線の沿線は製造業が盛んな、いわゆる「モノづくり」の街だ。独自の技術を持った大小の事業所が多数、立地している。最近の産業構造の変化により、工場跡地に建設されたマンションが目立つようになったが、車窓を眺めていると街の特徴がよくわかる。

これまで、この地域は大阪市中心部へのアクセスこそ便利であったが、新幹線や空港といった、広域的なアクセスの拠点への便は、今ひとつであった。そこへ開業したおおさか東線は、新大阪への直行を可能とした。

終点の久宝寺が位置する八尾市もまた、製造業の街だ。今回の開業にあたり八尾市は、市制施行70周年記念事業と題して、おおさか東線普通列車へのヘッドマーク掲出行い、注目された。もちろん今後の他地域との交流活発化、ひいては産業振興への期待が込められていることだろう。

おおさか東線は、JR東日本武蔵野線と対比されることもある。都心部から放射状に伸びる各鉄道を環状に結ぶ点が似ているからだが、沿線地域の構造はまったく異なる。武蔵野線も貨物専用線から旅客兼用に変更された路線だが、開業時の沿線は田園地帯。その後の発展により通勤路線となった。それに対し、おおさか東線はもともと過密とさえいえる人口集中地帯に建設されている。沿線の衰退を防ぎ、さらなる発展を促すことが、路線を持つJR西日本にとって重要な課題だ。

新大阪駅周辺の再整備も視野に

新大阪駅の周辺は、1964年東海道新幹線開業時にはまったくの街外れで、単なる新幹線とほかの鉄道や自動車交通との接続駅でしかなかった。その名残りは、駅の正面出口に直結しているのがタクシー乗り場(現在の利用実態からすれば、まったく不合理)で、周囲の街へ出ようとすると、慣れないと道に迷いかねないぐらい不便な構造ともいえる。

ところが新幹線駅に至近という立地は、やはり企業にとっては魅力的で、オフィス街が形成され、超高層ビルも建設されるようになった。ただ、商業施設はほとんどなく、街は雑然としていて、梅田や難波のような繁華街としての賑わいには乏しい。

2018年8月29日新大阪駅周辺地域は「都市再生緊急整備地域の候補となる地域」として、内閣府から公表された。将来的な中央リニア新幹線北陸新幹線の乗り入れをにらんでのことである。これを受けて大阪市大阪府と連携し、国、経済界、民間事業者などとともに、「新大阪駅周辺地域都市再生緊急整備地域検討協議会」を立ち上げた。都市再生緊急整備地域指定へ向けた準備を始めている。

もちろんJR西日本新大阪へのアクセスをになう鉄道事業者として、この動きに深く関わることになる。むしろ、新大阪駅周辺整備の必要性は、同社がいちばん強く感じていたのではあるまいか。新大阪の都市核としての発展があれば、関西各地や中国地方からの列車を走らせているJR西日本にとって、自社の発展につながるからだ。

おおさか東線の整備は、むしろJR西日本サイドから新大阪の再開発と発展を促す、ひとつのアイテムと位置づけられ、進められてきたことだろう。もちろん、中央リニア新幹線北陸新幹線新大阪乗り入れも、将来的な視野に入れてのことだ。

おおさか東線の「終点」は北梅田

関西圏でも「駅ナンバリング」が進んでおり、あまり目立ってはいないように見受けられたが、おおさか東線の各駅にも付けられている。現在、新大阪がJR‐F02。以下、順に付けられ、久宝寺がJR‐F15となっている。JR‐F01は、乗り入れ予定の「北梅田(仮称)駅」のために空けられている。

梅田駅は現在、JR大阪駅北側の旧梅田貨物駅跡地に建設中だ。開業は2023年春が予定されている。完成すると、現在、梅田貨物線を経由している関空特急「はるか」や特急「くろしお」などが停車する。そしておおさか東線列車も乗り入れる。

現在でも、直通快速新大阪へ到着した後、そのまま折り返さず、旧梅田貨物駅跡にある梅田信号場(北梅田駅の北西側にある)まで回送されてから折り返す。15分に1本の運転が基本のおおさか東線普通列車の間に割り込む形のダイヤなので、普通が折り返す新大阪駅2番線には入れず、3番線に到着、1番線から発車している。

新大阪駅在来線乗り場は、おおさか東線の北梅田延伸を睨んで設計されている。1番線は「はるか」「くろしお」などが到着し、京都方面へ直通する。2番線が前述の通り、おおさか東線普通列車折り返し。3番線が関西空港行き「はるか」と白浜・新宮方面行きの「くろしお」の出発となっている。

おおさか東線専用に使えるのは、事実上、2番線しかない。しかし、北梅田までの延伸が確定事項であるのなら、これは暫定的な使用方法とみて取れる。おおさか東線の列車が、普通、快速を問わず北梅田発着になれば、新大阪での折り返し列車は確実に減るからだ。

北梅田乗り入れがなった時点で、おおさか東線は真の全線開業となる。梅田地区はいうまでもなく大阪でいちばんの商業エリアであり、巨大な大阪駅ビルに代表されるように、JR西日本の経営上、最重要拠点でもある。そこへ、おおさか東線によって、これまで鉄道に恵まれなかった地域からの流動が生まれるとなれば、梅田の地位はさらに向上する。最終的にJR西日本が目指すところは、そこだ。