1999年にTV放送されたアニメオリジナル作品『ベターマン』。ホラーテイストに科学や医学の要素を随所に散りばめた先の読めないストーリー展開、木村貴宏さんがデザインを担当した艶っぽいキャラクターたち、謎のアーティストが叫ぶエンディング曲、それらをしっかりまとめ上げた熱量と勢いがほとばしる映像……。深夜アニメの初期のタイトルらしい、まさに知る人ぞ知る快作でした。そんな『ベターマン』の20周年記念Blu-ray BOXが2019年4月24日に発売! 監督を務めた米たにヨシトモさんに、お話を聞きました。

「ベターマン」20周年記念でBlu-ray BOXが発売!

――『ベターマン』放送開始から20周年ということで、当時を振り返ってみていかがでしょうか?

米たに 忘れ去られていく作品なのかもと思っていたので、この日を迎えられてとてもうれしいです。当時からニッチな方向性で刺さればいいなと考えながら作っていましたから、つまり深く刺さる方々には刺さっていただけた結果なのかな……と感じています。

――米たに監督としては初となる、深夜枠での30分作品でした。

米たに 『ベターマン』では深夜に放映されるからこそのワクワクドキドキ感を狙って、ホラーテイストを意識しました。当時は深夜枠のアニメも今ほど多くなかったので、「深夜に観るならこういうものだろう」と用意したテーマですね。私の初監督作である『笑ゥせぇるすまん』は時間帯的に浅めの枠かつショートアニメだったんです。そこではできなかったことも踏まえつつ、深い時間帯ならではの攻めた表現をしようと。「アニメ子どものもの」という考えがまだ世の中に強く残っていた時代だったので、攻め過ぎた表現には色々な方々から怒られつつも、一進一退の攻防を繰り返して作っていきましたね。

――『ベターマン』を作る上で、心がけていたことは?

米たに ひと言で表すならばフラクチュエイトな……予測できないような展開が連続するアニメですね。あくまで20年前の作品としてですが、予定調和にならない展開を狙っていたので、わざと端っこにキャラクターがいるレイアウトであったり、ちょっとズレたセリフをしゃべらせたりというような不穏な仕掛けを常に用意していました。そういったある種のノイズを狙って入れることで、観てくれている方々の心の奥底にモヤモヤしたものが残るのではないかと企んだんですね。ホラーものというと、どうしてもほとんどの作品が心霊描写の方向に流れてしまうのですが、『ベターマン』では科学と医学のデータに基づいた理屈を付けながら、ホラーを描いた点も異色の作品と評される1つのポイントだと思います。

――米たに監督の作品は通して生命賛歌というテーマを描かれているように感じるのですが、『ベターマン』はその中でもまさにド直球な作品だと感じました。

米たに 私の監督作は「優勝目指して戦い続ける」というような話はあまりなくて、生命活動を揺るがす何かに立ち向かって勝つんだという方向になりがちなので、どうしても命の話に偏ってしまうんですね(苦笑)。ただ、こちらの主張は押しつけないように心がけていて、あくまでも提案として作品ごとに異なる形で命の話を描いて、結果どう結論づけるのかは視聴者に委ねているつもりです。『勇者王ガオガイガー』と『ベターマン』ではアプローチも全く逆で、『ガオガイガー』で表の光側から描いた世界を、『ベターマン』では裏の影側から見るという構成になっているのですが、そういった視点の違いは意識して使い分けています。

――今回のBlu-ray Box化を、最初に聞いたときの感想は?

米たに ただ率直に、「やりたくないな」と(笑)。『ガオガイガー』や『BRIGADOON まりんとメラン』のBlu-ray化作業が本当に吐きそうなほど大変だったので、できることなら誰かに任せて逃げたかったくらいです。でも関係者の皆さんが本気になってくれたので、「もうこれは地獄まで一蓮托生だ」と私も腹を括り、リマスター作業に取りかかってもらいました。

――リマスター作業で、留意したポイントは?

米たに いくつものリマスターパターンを試して、作品の雰囲気を壊さないよう、当時のアナログ感を肯定しています。画面の暗さも、ブラウン管テレビより、今の液晶の方がずっとクッキリ見えるので、極端に明るくはしていません。色は、16㎜フィルムで再現できなかった、絵の具本来の色に近づけるよう補正しています。フィルムフィルムの繋ぎのセメント液のハミ出しや、がたつきも、目立つ箇所は修正して、多くのエラー画像もネガ原版から最良の状態を抽出して、フィルムに焼きこまれたオリジナルに近づけています。ゆえに、オリジナルを改善はしても改変はしないよう意識しました。一番注目して欲しいのは画面のサイズですね。当時テレビ放映はフィルムデジタルの映像が混在するちょうど入れ替わりの時期だったんですが、『ベターマン』はまだテレビ画面が4:3の比率だったのに、わざわざ16:9で作っているんです。これは私がホラーゲーム好きだったので、その雰囲気を出すために画面の上下に黒枠を付けたくてやっただけなんですけど、なぜかその12年後、テレビの画面比率自体が16:9に統一されてしまった(笑)。だから放送当時の映像をそのまま観ると、元々付いている上下の黒枠に加えて左右にも黒枠が付いてしまい、映像がモニターよりもずっと小さくなってしまうんですね。とはいえ、その画像をそのまま拡大すると今度は画質が荒れてしまうし……。DVD版と大きく異なるのは、今のテレビの画角にピッタリはまって、細部まできれいに映るよう、画質の調整にかなり気を遣った点ですね。それは、デジタルアニメ特有のパッキリ綺麗な画面ではなく、アナログアニメとしての存在感を優先した、世紀末記録映像的な保存版を目指しています。

――今回のBOXには新録のドラマCDとして『覇界王~ガオガイガーベターマン~ number.EX 求-PROPOSE』も封入されますが、こちらはどういうストーリーなのでしょうか?

米たに 脚本担当の竹田裕一郎氏のアイデアで、小説版『覇界王』の中から作品のファンが聞きたいであろうセリフを中心にしてストーリーを組み上げました。『ベターマン』も『ガオガイガー』も最初の収録からはもう20年以上経っているので、正直言えばキャストの方々が当時の声を出せるのか心配ではありました。でも蓋を開けてみると、タイムスリップしたかのように、皆さん当時そのままの声で演じてくれたので、「これならうまくいく」と手ごたえを感じました。物語としても『ベターマン』が好きな方ならきっと喜んでくれるものになっていますし、『ガオガイガーファンも燃えられる出来になっていると思います!

――また主題歌CDには、「※-mai-」さんによる「鎮-requiem-juvenile-伽」(レクイエム ジュブナイル)も収録されていますね。

米たに まあ「※-mai-」といっても要は私の別名義なんですけど(笑)、こんな新録の機会を頂けるのは本当に貴重ですし、ありがたい限りです。連日の徹夜で体力もギリギリでしたが、このために書いた新しい歌詞で楽しくレコーディングさせてもらいました。とても重労働ではありましたが、歌やら声の出演やらでレコーディングを毎日せわしなく続けていると、自分の職業が何なのか、わからなくなってしまいますね(笑)。それと遠藤正明さんの「勇者王誕生!」も、「御伽噺(ジュブナイル)ヴァージョン」として、歌詞が覇界王へ引き寄せられるようにグレードアップしています。2曲ともかなり趣きが変わっているので、元曲と聞き比べていただけるとより深く楽しめると思います。(編注:この2曲はBlu-ray BOX特典の『覇界王』主題歌CDに収録されています)

――今回のBlu-ray Boxは特典も豪華で、まさにファン垂涎の逸品になっていますね。

米たに 本当に、手に入れて損はないと思います。分厚くて熱量のこもった解説書とイラストブックは今後絶対手に入らないと思いますし、ぜひ映像やドラマCD、主題歌共々保存してほしいですね。『ベターマン』は『ガオガイガー』とリンクした世界観やストーリーになっていますけど、「勇者シリーズ」とは別の完全オリジナル作品でもあるので、『ガオガイガー』を観ていなくても単体で楽しめる作品になっています。「テロメア」等の医学用語が一般に知られていなかった20年前より、多くの知識をネット検索できる現代のほうが見やすいアニメだと思います。最近の作品とは異なる独特かつ希有な作品として、初めての方もぜひ楽しんでください! アナタのウシロに……ベターマン!!

プロフィール

よねたに・よしとも:1963年5月12日生まれ、東京都出身。演出・絵コンテで『鎧伝サムライトルーパー』(1988)等に参加。『笑ゥせぇるすまん』(1989)にて初監督を努め、『ザ・ドラえもんズシリーズ(1996~)、『勇者王ガオガイガー』(1998)、『ベターマン』(1999)、『BRIGADOON まりんとメラン』(2000)等で独自の世界観を構築する。ほか監督作品として、『星の海のアムリ』(2008)、『Dororonえん魔くん メ~ラめら』(2011)、劇場版TIGER & BUNNYシリーズ2012~2014)『食戟のソーマ』(2015~)などがある。(WebNewtype・【取材・文:徳重耕一郎】)

「ベターマン」20周年記念でBlu-ray BOXが発売!