名古屋港水族館名古屋市港区)で開催中の特別展がネット上で話題となっています。魚たちが泳ぐ水槽の前に、それぞれの寿司(すし)の模型を置いているためです。SNS上では「食育には良さそう」「サイコパスすれすれ」などの声が上がっています。水族館の担当者に狙いを聞きました。

「水族館で寿司?」というギャップ

 特別展は、名古屋港水族館3月16日から開催している「寿司ネタ大集合~水族館が斬る!寿司のいろいろ」です。魚たちを「寿司ネタ目線」で紹介しており、展示は6つのテーマに分かれています。「世界最大のカニや貝を寿司にしたら何貫分になるのか」を検証した展示や、飼育員が寿司作りに挑戦した過程を紹介する動画などがあります。

 水族館の飼育員、森昌範さんに聞きました。

Q.なぜ、このような展示を。

森さん「当館では30年近く、さまざまなテーマで展示を行ってきましたが、今回は、今までにない展示をやろうと考えました。いろいろと検討しましたが、食べ物としての切り口で生き物を紹介したことがないことに気が付きました。近年、食育が注目されていることもあり、『食べ物としての魚』を紹介しようと思いました。寿司を選んだのは、魚を使った料理の中でも特にポピュラーで最適だと思ったからです」

Q.展示している魚介類の種類は。

森さん「23種類200点の魚介類を紹介しています。そのうち、寿司の模型付きで紹介しているのは約20種類です」

Q.飼育員が調理した魚介類は何種類ですか。調理時に緊張はしませんでしたか。

森さん「調理した魚は全部で4種類で、世界最小のイカと言われる『ヒメイカ』、釣り用のエサとして使われる『ユムシ』などです。例えば、ヒメイカは甘辛く煮付けた上で軍艦巻きにしました。普段から動物のエサ用に魚をさばいていますので、包丁の扱いには慣れていますし、飼育している魚をさばくことに特に抵抗感はありませんでした」

Q.調理した寿司の味はいかがでしたか。

森さん「ヒメイカはイカの味がせず、微妙でした。ユムシが一番おいしかったです」

Q.特別展について、どのような意見が寄せられていますか。

森さん「タブー視されそうな内容に見えるかもしれませんが、お客さまには好評です。『真剣に生き物を食べ物として見せたい』という当館の意図をくんでくれているのではないかと考えています。また『水族館で寿司?』といい意味で驚かれている印象がありますが、そうしたギャップも狙っていました」

 特別展は6月2日までです。無料ですが、水族館の入場料が必要で、高校生以上2000円、小中学生1000円、4歳以上の幼児は500円(ゴールデンウイーク中は夜間割引あり)。寿司になる前の、新鮮な魚を見る機会はなかなかありません。連休中に家族で足を運んでみてはいかがでしょうか。

オトナンサー編集部

寿司ネタという目線で魚を紹介(公益財団法人名古屋みなと振興財団提供)