果たして「令和のジャイアンツ」はどうなるのか――。「球界の盟主」と呼ばれる巨人は平成の時代もプロ野球界を席巻。平成元年1989年から平成30年の2018年まで12球団最多となる12度のリーグ制覇を達成した。昨今こそ低迷期に差しかかっているものの、新しい時代を迎えた今季こそは5年ぶりのリーグV奪回を果たし、「令和初王者」の称号を足がかりに再び王道をまい進していきたいところだろう。

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メジャー挑戦の意欲を明言

 さて、その新時代に臨むジャイアンツで、令和の早々から去就が騒がれることになりそうなのが、エースの菅野智之投手だ。1日に本拠地・東京ドームで行われた中日ドラゴンズ戦に先発し、9回7安打1失点10奪三振の完投で今季4勝目を飾った。チームの令和初勝利に大きく貢献し、自身も通算100奪三振を記録。試合後のお立ち台では今季のチーム及び令和初完封を逃したことで開口一番「悔しいです」と満足していない様子だったが、貯金「7」で首位を快走するチームの原動力としてマウンドで躍動する姿は頼もしい。

 ここまで今季は2敗を喫しているとはいえ、気付いてみれば先発投手としてリーグトップタイの4勝と、きっちり白星を積み重ねている。2年連続で沢村賞を受賞した実力はやはりダテではない。そして、この日本球界を代表する無双エースの実力には海の向こうからも熱い眼差しが送られている。メジャーリーグだ。

 菅野の先発登板試合ではスタンドにメジャー各球団の極東スカウトが陣取ることも多い。ア・リーグ球団のスカウトは真剣な眼差しとともに菅野について「明日にでも、こっちに移籍してプレーして欲しい」と言い切る。

 2017年3月の第4回WBCワールド・ベースボール・クラシック)で日本代表・侍ジャパンのエースとして菅野は準決勝で米国代表を相手に先発。結果的に1―2で惜敗したとはいえ、メジャーリーグの主力どころを6回2安打1失点に抑え込んだ。米国代表を率いた名伯楽のジム・リーランド監督からは「菅野はビッグリーグピッチャーだ。とても感銘を受けた」と大絶賛された。この大会を皮切りにメジャーリーグの中での菅野株は急騰。その後、菅野自身も「絶対的な力をつけて文句なしで行けるように」と将来的なメジャー挑戦を明言している。

 順当にいけば、海外FA権取得は2021年シーズン。菅野自身は侍ジャパンのエースとして今年11月の国際大会・プレミア12、そして来年夏の東京五輪に出場し、日本代表を頂点に導くシナリオはすでに頭の中で描いている。言うまでもなく〝本業〟であるジャイアンツのエースとして今後もフル回転しながらチームをリーグ優勝、そして日本一へと立たせ、沢村賞などの主要な個人タイトルを総なめにし続ける腹積もり。すべては21年シーズンオフに海外FA権を行使するべく「絶対的な力をつけて文句なしで行けるように」するためだ。

「菅野のメジャー挑戦が早まるのではないか」

 だが、巨人の球団内ではここ最近「菅野のメジャー挑戦が早まるのではないか」との見解も出始めている。ズバリ言えば、そのXデーは2020年のオフ。つまり海外FA権行使によるメジャー挑戦よりも、1年早まる形だ。もちろん、この時点で菅野は海外FA権を取得していない。それでも巨人がついに球団としての〝禁じ手〟であるポスティングシステムを認める可能性が出てきているというのである。

 ポスティングシステムはFA権を取得していない選手がメジャーリーグ移籍を希望した際、所属球団によって行使される制度。巨人は過去、1度もこの制度を認めていない。その背景には長きに渡って球団内で強い影響力を持つ読売新聞グループ本社・渡邉恒雄主筆の存在が大きいとされている。

 しかしながら昨年ケガで長期入院した際には体調不良説が飛び交った。現在は退院して公の場にも復帰し健在ぶりを見せているとはいえ、徐々に第一線から退きつつ後継者にバトンを渡そうとしているのは明白だ。周辺からは「だから渡邉主筆はジャイアンツについてあまり口出しするようなことはせず、懸案事項に関する最終的なジャッジも球団側に委ねているようだ」との情報も聞こえてくる。

1年浪人して入団してくれた恩義に報いる意味でも・・・

 内情に詳しい事情通も、次のように打ち明ける。

「それもあって2020年のシーズンオフ、菅野に『特例』でポスティングシステムを認めるのではないかとの見方が出ている。球団としては自軍のエースに海外FA権を行使され、1銭のお金も入って来ずにメジャーへ移籍されてしまうよりは1年早めてそれなりの対価として菅野獲得を希望するメジャー球団から譲渡金を得たほうがいい。

 それに加えて菅野は他球団のドラフト1位指名を拒否し、1年浪人した上で悲願だった巨人入団を果たした経緯がある。1年回り道してまでウチに入ってくれたのだから、その恩義に応える意味でも1年早めて彼の希望をかなえてあげるという考え方は『特例』として十分な理由付けになるだろう。

 ちなみに読売新聞グループ本社社長と球団オーナーを兼務する山口(壽一)氏は本社内部でも渡邉主筆の後継者ともっぱらだ。その山口社長は伝統を守りつつ、時代に見合った経営術も取り入れようとする柔軟な発想力の持ち主でもある。仮にトップとして菅野のポスティングシステムを使ったメジャー移籍にゴーサインを出せるとすれば、山口オーナーしかいない」

 今季からは菅野の母方の伯父である原辰徳監督が巨人の監督に再々復帰している。2020年オフは3年契約の原監督にとってまだ任期を1年残しているタイミングだが、甥である菅野の夢を叶えるのであれば、おそらくメジャーへのポスティング移籍に文句はあるまい。いや、WBC連覇を経験した侍ジャパンの監督として、そのフレキシブルな考え方によって日本人メジャーリーガーたちをもまとめ上げた名将のことだ。むしろ率先して背中を押す立場へと回りそうな気もする。

 当然ながら2020年オフ、ポスティングシステムを使ったメジャーリーグへの前倒し移籍が実現するためにも菅野本人の無双ロード継続は絶対条件。〝日本国内にもはや敵なし〟を満天下に誇示すればチームと球団側、そしてG党もきっと温かく送り出してくれるに違いない。いずれにせよ、令和2年は菅野の一挙一動に注目が集まりそうだ。

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