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イギリス保守党副代表で資産家、フィランソロピスト(慈善活動を支援する人)でもあるアシュクロフト卿が、南アフリカで行われているライオンの飼育・繁殖やハンティングについて約1年にわたり調査を行った。今月28日の『Mail On Sunday』で明かされた劣悪なライオンの飼育環境やハンティングの実態は、人間の身勝手さを浮き彫りにしており残酷以外の何物でもない。

「薬のためにライオンの骨を売ったり、トロフィーハンティング(娯楽のために狩猟をし、剥製や毛皮にして持ち帰る)のためにライオンの繁殖・飼育が行われている。南アフリカ政府はこれを禁止し、イギリス政府はライオンの毛皮や剥製などを“トロフィー”として持ち込むことを法で規制すべきだ。」

そう訴えるアシュクロフト卿が1年をかけて秘密裏に行った調査「オペレーション・シンバ」で明かされたのは、概ね次の通りだ。

トロフィーハンティングでは、飼育されたライオンが使われる。裕福なハンターたちがどのライオンを射殺し戦利品トロフィー)とするのかは、あらかじめ“WhatsApp(ワッツアップ)”で送られてくる写真から選ぶことができる。その値段は10,000ポンド(約145万円)から42,300ポンド(約612万円)と、ライオンの大きさやたてがみの質などで決められる。

●アメリカではライオンの毛皮をトロフィーとして持ち込むことが禁じられているため、まずはイギリスに持ち込み、アカシカの毛皮の内側に隠してアメリカに密輸する。塩で処理され丸められたシカの皮は硬く、この方法だと税関で見つかることはない。

●動画では英国出身のハンターが、フェンスで囲まれた敷地内で四輪駆動車に乗りライオンを追いかけ、ダーツ(矢)が込められた麻酔銃で走り疲れたライオンを撃つ場面を捉えている。その後ハンターは車から降りると、歩くこともできず怯え切ったライオンを至近距離から狙い射殺している。南アフリカでは長距離の移動による狩猟や自分で歩けないハンターに限り車を利用できるが、それ以外は違法である。また獣医の監視なしで娯楽のために麻酔銃を使うことも違法である。

●80%の“キャンド・ハンティング(飼育場で繁殖させたライオンを、フェンスに囲まれた敷地内に放ちハンティングをする)”が南アフリカ北西州で行われている。ハンティングエリアにライオンを放ってから90日間待たないとハンティングができない他の州と違って、北西州ではリリース4日後にハンティングが可能である。ライオンは人間に育てられるため、狩りの仕方を知らずに育つ。フェンスに囲まれた狭い敷地で暮らし、人間から与えられる餌を食べる。

●飼育場で殺される前のライオンは、小さく汚い檻の中に数日間閉じ込められる。屠殺場の血で染まった床にはライオンの骨が積まれている。ライオンは皮を剥がされ、その骨格が輸出されるが、いらなくなった内臓は黒いプラスチックの袋に詰め込まれトラックで運ばれて処理される。

●2日間で50頭以上のライオンが、“エコ・ファーム”と呼ばれるある飼育場にて殺された。骨を薬などに使用するためだ。南アフリカでは飼育されたライオン800頭の骨の輸出が合法とされているが、実際はそれを上回る数が密輸されている。(南アフリカ政府は昨年7月、輸出枠を年間1500頭に拡大すると発表している。)1キロ125ポンド(約18,000円)、頭蓋骨を含む骨格は4,600ポンド(約66万円)で取引されるため、政府の利益は大きい。ライオンの骨の98%はベトナム、タイ、ラオスに持ち込まれ、100グラム769ポンド(約11万円)で売られている。中国では取引が禁止されているトラの骨の代わりにライオンの骨の人気が高まっており、これが闇取引の助長に繋がっている。

●飼育場ではトラとライオンを掛け合わせて繁殖させている。生まれた子供は早死にしたり、先天異常をもっているケースが多い。3歳のライガー(父がライオンで母がトラの子供)やタイゴン(父がトラで母がライオンの子供)は9歳のライオンの大きさと同等で、短期間でより多くの骨を手に入れることができるため、多くの利益をもたらす。

ライオンは生後数日で親と引き離され、コンサベーション・センターなどに連れていかれる。ブリーダーは小さなライオンを観光客と遊ばせたり、写真撮影に使用しお金を儲ける。大きく成長し見栄えがするオスライオントロフィーハンティングに使われることが多い。

●これまでは8,000頭と言われてきたが、現在南アフリカには約12,000頭のライオンが飼育されており、これは南アフリカ国内の野生ライオン数の4倍にあたる。ライオンの繁殖・飼育を認めているのは世界でも南アフリカだけで、約200のファームが存在する。南アフリカ捕食動物繁殖協会(The South African Predator Association)は、ライオンを繁殖・飼育することこそ、野生ライオンの保護に繋がると述べている。

●100年前は世界に200,000頭いた野生ライオンが今では約20,000頭生息しているのみ。このままでは30年後には絶滅する可能性もある。

ライオン・ファームビジネスは10年前には存在しなかったが、今は拡大の一方だ。しかしハンティングで懐が潤っているのは、限られた人だけだ。表向きは「野生ライオンの保護のためにもハンターが落としていくお金は必要」と謳っているが、全てはビジネスにすぎない。

●アシュクロフト卿は、飼育されトロフィーハンティングのターゲットになっていた11歳のオスのシンバを安全な場所に逃がすことに成功したことを明かしている。

人間の娯楽のため、金のためにライオンが飼育され殺されていく。野生動物でなければどんな扱いをしても赦されるという考えはあまりにも傲慢すぎる。

画像は『The Sun 2019年4月30日付「LIONS, RICH AND A LORD’S PROBE Barbaric scandal of lions bred to be shot as Tory peer calls for UK ban on import of captive lions」(Credit: LORD ASHCROFT)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)

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