12日の初日まで、残り10日と迫ってきた大相撲5月場所(東京・両国国技館)。先場所は「15勝0敗」をマークした白鵬が、“平成最後の”賜杯を手中に収めた。

 普通に考えるならば、“令和最初”となる今場所でも優勝候補最右翼となる白鵬。しかし、先場所千秋楽で負傷した右腕の状態は芳しくないようで、春巡業でも十分に稽古は積めていない。この調子が続くようなら、優勝はおろか出場にも暗雲が立ち込めることになる。

 仮に白鵬が本調子を取り戻せなかった場合、次の候補となるのは昨年この場所を制した鶴竜。ただ、これ以降は「皆勤2回、休場3回(途中休場含む)」と不在が目立ち、2回の皆勤はいずれも2ケタがやっと。また、先場所対戦した1横綱3大関のうち、栃ノ心を除く3名に敗戦を喫したのも懸念材料だ。

 今場所から栃ノ心が抜け、新たに貴景勝が加わることになる大関陣。2横綱が低調なら一気に視界が開けてきそうだが、豪栄道、高安に関しては先場所もそれぞれ格下からの取りこぼしが複数(豪栄道2回・高安3回)。この部分を改善しない限り、“鬼のいぬ間に洗濯”とはいかないだろう。

 人によっては、大関として初めての場所を迎える貴景勝に期待する向きもあるかもしれない。だが、昇進にかかる行事や連日の取材攻勢で時間を拘束される中、好成績を期待するのは少々酷。現実的に考えれば、10勝前後で終わる可能性の方が高いのではないだろうか。

 2ケタで御の字と言えるのは、“旧大関”である関脇栃ノ心も同じこと。賜杯を手に大関返り咲きとなれば素晴らしいドラマとなるが、この1年コンディション不良を抱え続けていることを考えるとそれは至難の業と言わざるを得ない。

 優勝候補となり得る力士にそれぞれ不安があることを考えると、優勝ラインは13勝、もしくは12勝まで下がる可能性がある。となると、役力士だけでなく、平幕力士にも付け入る隙は十分。“令和最初”の優勝争いは、連日星の潰し合いが続く大混戦になるかもしれない。

文 / 柴田雅人

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