aijiro / PIXTA(ピクスタ)

◆破産者マップは弱みに付け込む輩を喜ばせるだけ
 今年3月中旬、官報に記された破産者の情報をマッピングし、検索も可能としたサイト「破産者マップ」なるサイトが現れ物議となった。

 サイト運営者の主張としては、そもそも破産者情報は国民が自由に知ることの出来る情報であり、広く周知することで破産者が援助を受けられるという道があるのではとのことだった。

 ところが、世論は「プライバシーと名誉の侵害」という指摘に大きく傾く形となり、「破産者マップ」がサイト閉鎖に追い込まれたのは既に報じられている通り。

 この当時サイト運営者の語っていた「破産者情報は国民が自由に知ることの出来る情報」「広く周知することで破産者が援助を受けられる道」との主張だが、差し押さえ・不動産執行の現場にいる我々から言わせると、破産者や不動産差し押さえ情報の悪用、弱みにつけ込む追い打ち詐欺は数多くあれど、援助や救いというものはまず無い――。

◆差し押さえ情報が公開されると、途端に怪しい輩が群がってくる
 差し押さえ・不動産執行の情報として住所や名前が掲示されると、「NPO法人です」「裁判所の方から来ました」「全国なんちゃら協会です」中には旧財閥グループであるような印象を与える企業名を引っさげた業者などが、頼んでもいないのにゾロゾロとやってくる。

「調査させてもらっていいですか~?」と当然のような顔で室内に上がり込んでしまう事例もあるほどだ。

 そんな次から次へと頼みもしないのにやってくる業者の大半は「任意売却物件」を扱うもの。

 任意売却を簡単に説明すると、債務者および債権者の合意を得て、競売にかかる前に不動産を民間で売ってしまおうというお話。

 メリットとして競売より高値がつくという触れ込みがあるのだが、公開されている近年の首都圏取引事例を見てもらえれば一目瞭然、競売での入札価格を上回ることは殆ど無い。

 同時にこの取引価格のバランスは、競売人気が既に加熱気味であるということも示している。

 競売が人気となっている理由としては公的調査が入るため民間では追いきれない情報もしっかり網羅されるという安心感、昨今では地銀問題もあり築年数が浅い即転売可能物件の多さ、市場価格の7~8掛けという入札開始価格の割安感。このようなものが評価されている。

 では何故、入札開始価格の割安感がありながらも市場価格を超えてくるのかと言えば、大きな要因として、そもそも首都圏の不動産需要に対する供給が間に合っていないという点があげられる。

 市場に出回る不動産という出物が少ないため、必然的に競売に対する注目度が増しているという寸法。

 不動産を扱う業者は“止まると死んでしまうサメ”に例えられるほど、買って売ってを絶え間なく繰り返さないと事業を回していけないところがあり、常に不動産を求めているのだ。

◆任意売却業者に任せるとどうなるのか
 さて、それでは頼みもしないのにやってくる任意売却業者に任せるとどのような事態に陥るのかという点について、良くある事例に触れてみたい。

「コンサルティング料が請求される」

 何故か不動産売買手数料以外の名目で請求されるものがあり、「コンサルティング料」に代表されるような聞き慣れない名目での請求がしれっと上乗せされるパターン

「期間内に売れませんでしたが、良ければ弊社で買い取ります」

 このようなフレーズで結局、任意売却業者自体が安く買い叩いて持っていってしまうというパターン。このパターンではまともな売り出しすら行っていないという事例も。

「購入希望者の求めに応じ過度な割引で叩き売られる」

 前記2例の悪徳手口以外の比較的まともな業者であれど、一定期間内での慌てた処分となるため、購入希望者の求めに応じた過度な割引で叩き売ってしまうパターンは多い。

 市場原理からしても売るための価格競争はどうしても値下げの方向であるため、仕方のない部分もある。

 とは言え、任意売却業者は短い期間に売買手数料だけ抜ければ良いとして、取引成立のためにかなり無茶をする場合も。

 中には半値近くに値引きが行われた事例、本来購入希望者が負担すべき手数料や諸費用を債務者が負担させられたという事例も耳にする。

◆債権者は冷静な判断ができない
 このような業者が頼みもしないのに“しめしめ”とこぞってやってきてしまうのであれば、不動産執行情報の掲示をやめれば良いと考える方もいるだろうが、これはどれだけいるかわからない債権者に対する唯一のアプローチであるため、そう簡単に廃止というわけにはいかない。

 また、安く売られてしまうのであれば債権者(多くは銀行)が任意売却を認めないのではとの疑問を抱く方もいるかもしれないが、こちらは銀行側が貸付の際にまともな審査を出来ていないのと同様に、債権管理もままならないようで取引事例も見ずに許可を出してしまっている場合が多い。

 突然、人生の危機的状況に陥ってしまった際、大きな絶望感に苛まれた際、冷静でまともな判断が出来る人がどれだけいるだろうか。

 そこへ頼みもしないのにやってくる業者。彼らは果たして善意の団体なのだろうか――。

「頼みもしないのにやってくる業者は無視してしまって構いませんからね」

 債務者と顔を合わせる度にやんわりと執行官から告げられるこの言葉は、果たしてどれだけの効果を上げているのだろうか。

<文/ニポポ(from トンガリキッズ)>
2005年トンガリキッズメンバーとしてスーパーマリオブラザーズ楽曲をフィーチャーした「B-dash!」のスマッシュヒットで40万枚以上のセールスとプラチナディスクを受賞。また、北朝鮮カルト教団施設などの潜入ルポ、昭和グッズ、珍品コレクションを披露するイベント週刊誌Web媒体での執筆活動、動画配信でも精力的に活動中。
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