あなたは自分が70歳まで働く姿を想像できるだろうか? 人生100年時代といわれる今、もはや悠々自適な引退生活など、遠い過去のものになった。そこで「人生後半戦」のキャリアの構築術を探った。



◆日常の些細な変化を楽しむことが70歳まで働くことに繫がる



日本人の仕事を時給換算すると、高校生バイト時給の800円台から世界レベルのコンサルタントの8万円まで100倍の差があります。そのなかでも今後AIに取って代わられるのは、およそ3000~5000円ゾーンで、これはすなわちホワイトカラーの会社員や公務員の仕事です。複雑な情報処理の仕事も人の手から機械の手に移るでしょう。そんな世界で生きるためには、AIと競合になるような仕事にしがみついていてはダメです。これからは自分に独自の価値をつけて“希少人材”を目指す必要があります」



 そう話すのは、教育改革実践家で中高年のライフスタイルアドバイスにおいて絶大な支持を受ける藤原和博氏だ。曰く、希少人材になるためには、「3つのキャリアの掛け算」を心がけるべきだという。



「人は一つの仕事をマスターするのに、約1万時間必要だと言われています。そこまでやって100人に1人くらいの希少性が得られるわけです。一日3時間使ったとして10年ですから、40代なら何かしらあるはずだし、そこから2つ目、3つ目の別の仕事を積み重ねると、100の3乗で、100万人に1人の希少性になれる。こうなればもうスペシャルな存在です」



 その際、40代以降は「なんでもやってみたい」ではなく、進むべき道を見据える必要があるという。



「40代も半ばになると、それまで積み上げてきた山が一つはありますよね。しかし『何を捨てて、何を取るか』をはっきりさせないと、下降するだけの人生が待っていることに。そこでいま一度、自分が目指す働き方のタイプはどんなものか、客観的に知るべきです。



 価値観(経済的価値かプライベートや社会貢献重視か)を横軸にして、志向(権力・組織か独立か)を縦軸にするとABCDの4ゾーンができます。Aは出世したい人、Bはプロフェッショナルな技術を持った自営業、Cは公務員やNPO職員、Dは研究者などです。そのなかで自分がどこに位置するか、そして今後どのエリアの人間として特化していきたいのかを確かめ、より隅のほうを目指していくんです」



 また、今の40代はこれまで持っていたキャリア構築のイメージを考え直さないといけないという。



「昭和・平成期はひとつの山(キャリア)を越えればあとは定年がきて80代で人生が終わるような“富士山型”の人生でした。しかし人生100年時代になった今、これからは八ヶ岳連峰のように何回も山がくるような生き方をイメージしないといけない。つまり、新しい仕事に挑戦したりスキルを得たりして、自分をモードチェンジさせつつ次々に山を重ねる。これからはそんな働き方が求められる時代になっていくでしょう」



 日常から変化を意識する。その積み重ねが、70歳になってもバリバリ働くことに繫がっていくのだ。



【藤原和博氏】教育改革実践家

リクルートを退職後、都内初の民間出身校長として杉並区立和田中学校長に。日本の学校教育に画期的な改革をもたらす。近著に『45歳の教科書 戦略的「モードチェンジ」のすすめ』(PHP出版)



― [70歳まで働く]超実践ガイド ―

<取材・文/青山由佳 進藤太郎(小野プロダクション) 小窓まどか 嘉村翔 高田彰吾>