『今夜、笑いの数を数えましょう』(講談社) 著者:いとう せいこう


答えを出すことではなく議論するのが面白い

いとうせいこうが、倉本美津留、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、バカリズム、枡野浩一、宮沢章夫、きたろうの6人と「笑い」について語り尽くした一冊。それぞれの対談に通底するのは、予想外の方向へ転がっていく自由度が笑いを膨らませる、との着眼で、一つの「オチ」を正解として定める笑いを警戒する。

「ノーマークは笑いを生む」「相手がまったく理解できていない時ってホントおもしろい」(いとう)、「ワケのわからないことがとにかく面白かった」(バカリズム)、「本質と別のところで何かが起こることを、我々は面白がる」(宮沢)と語るように、こうすれば笑いがとれる、ではなく、こんなになっちゃったから笑えた、という余白をいかに残していくかを考える。最後に登場するきたろうが、「笑いを語るってカッコ悪いよね」と切り出し、ひっくり返す。

最近のバラエティー、という括(くく)り方も乱暴だが、芸人と視聴者とが笑いの最適解を求めた結果、確かめ合う笑いが目立つ。「ここはこうやろ!」と突っ込まれる場面を頻繁に見かけるが、ここはこうではなくてもいい、を許した時に、いくらだって面白くなっていくのだと思う。

バカリズムが「想像の余白」が面白い、たとえば「3x=犬」でもいい、とする。その式を見て、「あり得ない」で終えたらつまらない。3に何かを掛ければ犬になる。そのxをめぐって議論するのが面白いのだし、最後までxの答えが出なくてもいい。とにかく、どうすれば犬になるのか、いつまでも考えてみる。

笑いのノウハウがあるとすれば、ノウハウがあると思っているのが一番ヤバイと気付けるか、ではないか。「笑いとは何か」を探るはずの対談のそれぞれが、たちまち主題から脱線していく様が、とにかく笑える。

【書き手】
武田 砂鉄
1982 年東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年秋よりフリーライターに。 著書に『紋切型社会』(朝日出版社2015年、第25回 Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)、『芸能人寛容論』(青弓社)、『コンプレックス文化論』(文藝春秋)、『日本の気配』などがある。

【初出メディア
サンデー毎日 2019年4月14日増大号

【書誌情報】

今夜、笑いの数を数えましょう

著者:いとう せいこう
出版社:講談社
装丁:単行本(ソフトカバー)(352ページ
発売日:2019-02-28
ISBN:4065147255
今夜、笑いの数を数えましょう / いとう せいこう
笑いとは何か。いとうせいこうが6人と語り尽くす