「もっとキラキラした話しよう!」
何度か軌道修正を図るものの、トークの内容は、家飲み、とんかつを揚げたこと、昔ケンカした思い出、仕事のこと。結婚観を語るも、一向にキラキラした会話にならなかった。

5月2日放送の「岡村隆史オールナイトニッポン」に、令和最初のゲストとして登場した中居正広。岡村からの紹介を待たずに、声が聞こえてきた。中居が「紹介していただけますか」と小さな声で伝えると、「まさかの令和一発目になって来ていただけると思ってませんでしたけれど、ゲストは中居正広さんです」。「こんばんは」と中居。スーッと番組が始まった。
スペシャルウィークでもなく、平場のゲスト出演。岡村は、中居と連絡を取り合っていたもののタイミングが合わないことから、「じっくりと話したい」と岡村の希望で実現した。

レモンスライスを冷凍…独身男性の暗い話
最初の話題は、ラジオ生放送出演までの過ごし方について。放送は深夜1時から。普段ならば家で酒を飲む時間帯も、この日ばかりは飲めなかった中居。「結局、とんかつ屋さんに行って生姜焼き定食。新宿で(笑)」。

今年に入ってから一日も酒を抜いてないという中居に、肝臓を気遣う岡村。「なんかもうさ、スターだからもっとキラキラした話してくれ!」岡村が軌道修正。
しかし、家飲みで使うレモンをスライスして冷凍しているという生活の知恵で盛り上がった。家族がいれば使いきれる3個入りレモンも、一人だと消費が追い付かない。冷凍すれば日持ちがする上に、氷代わりにもなる。家飲みの知恵だ。
「あれを重ねちゃうと3枚ポンっ!だから(タッパーの)周りから立てていくの」中居が冷凍テクを披露すると、「もっとキラキラした話しよう」「令和になったから、キラキラした話を…」再び軌道修正を図った岡村。ここで紹介したリスナーのはがきは、「家飲みをする際のおすすめのおつまみを教えて」。ごくフツーの独身男性の会話が続いた。

岡村「私も中居さんもまだひとりもんですから。お前、なんか俺のこと下にみてるけど同じやからな!」「この世の中において、令和になったことにおいて横イチや!」。
独身男性の小競り合い……キラキラとは程遠い。

岡村がUberEatsを使いすぎて配達料が無料になったと自慢すれば、中居が「説明しないとわかんない人もいるから」と、いつもわかりやすく伝える“MCの中居”が顔を出した。
中居がガラケーからiPhoneに変えたと初だし情報に、岡村が黒酢にハマっていること、つまみの話を続けた。「キラキラ話!」岡村のノリツッコミに、「お前がしてんの。暗い独身の惨めな話……。」岡村は「お前が俺に勝ってるの、スーパーに行ってること!」小競り合いは続いた。

仕事の話「実力がなくてもその時代に選ばれてしまうねん」
年齢も岡村が48歳、中居が46歳と年齢が近いこともあるが、番組での共演も多かった。それだけに仕事の話に多くの時間を割いていた。

「どうなってくんですかね」
話題はこれからのテレビ業界について。いまの若手が出たいと思う番組、出演したことで箔がつく番組はなんだろうと思いを巡らせていた。

中居「手前みそかもしれないですけど、アイドルって不思議ね。常にどの時代にもいるんでしょうけど、不思議な力をもっているなと思いませんか」
岡村「急に老けたな」
中居「アイドルってなんだろ…。変な話でいうと、特別、圧倒的な歌唱力があるわけでもないのに、圧倒的なダンス、芝居があるわけでもないのになんですかね」
経験者も不思議に思う…視聴者からすればもっと不思議だ。

中居「女の子のアイドルグループでも不思議な力を持ってるホント持ってるなっていうのは、響く歌が…AKBなのかモーニング娘。なのか、いまのジャニーズの後輩…。響く歌が特別あるわけでもない。だってプロのミュージシャンがいるわけじゃないですか。プロの役者さんがいて、プロのダンサーが各分野にいるわけで。ああいう人たちを上回る技術的なことがあるわけでもないのに、何がそう…いまだに僕もわからないですけど」

岡村「選ばれるんじゃない?時代に。その時代に選ばれる。実力がなくてもその時代に選ばれてしまうねん。選ばれてしまった人はそこで頑張っていかなあかんわけよ。それが選ばれたことにより…選ばれたけど、結果でぇへんかったりする人もいるけど。やっぱ誰かしら選ばれんねん。ピッてピックアップされる、時代に。で、そういう人らが時代にマッチして流れにファーってのっていくのよ」。

岡村「ちょうどその、テレビもバブルも終わってたけど、なんとなくええ感じの余韻がありながら好きなことさせてもらったんちゃう?」。
選ばれた者同士が語ってることが、聴いている側からすれば不思議だ。

岡村「これからの中居正広はどうすんの?みのもんたみたいになるの?なんかイメージある?」

中居「僕もボヤっともしてないですよ。フラッグが見えないと、そこに突き進むにあたって…なんかやっぱりゴールラインが見えないと。山頂が見えないと、とか。ゴルフでやるんだったら旗が見えないとかあるじゃないですか。何かが見える、定めるゴールが見えないと登ってもいけないですし…」

中居は18歳の頃に司会者を目指すと宣言。じっと狙いを定めて努力を続け、いまや自分の名を冠した番組の司会の仕事が大半を占めている。
中居は今後について、ぼやけている、フォーカスが合ってないというが、このところの番組の傾向をみてみると、2001年スタートの「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」(TBS系・当初は「中居正広の金曜日のスマたちへ」)を筆頭に、「中居くん決めて!」(TBS系)、新たにスタートした「新・日本男児と中居」(日本テレビ系)、「中居正広のニュースな会」(テレビ朝日)と、悩み相談やニュースを噛み砕いて紹介する情報番組と、視聴者に寄り添った番組が多い。岡村が“みのもんた”を例に挙げたのも分かる。

「そろそろステップ踏みたいちゃうん?」岡村からの誘い

岡村「ちっちゃいピン、あるで。そろそろ踊りたいやろ?あの、オーディエンスの前で」
中居「ワンステップも踏んでないです。ターンすら、ボックスすら。なんにもやってないです」
岡村「そろそろステップ踏みたいんちゃうん?体がうずいてるんちゃう?」

横浜アリーナでちょっとイベントやってんのよ」
「もし踊りたかったらステージはあるよ」

まくしたてる岡村。横浜アリーナで開催した「岡村隆史オールナイトニッポン歌謡祭」を「ざっくりいうと最高のカラオケ」と紹介する岡村に、これまでの公演回数やチケット代など細かい質問を重ねた中居。「もし、踊りたいなら前座やけど、ちょっと始まる前に…」と前座での出演に誘われると「やだよ。やるなら、ちゃんとやるよ」。
中居くんが前座…想像つかないけど、いいぞ岡村!

「以前、出川さんが歌謡祭のことを中小企業の出し物と仰っていました。なので中居さんは後ろ向きに検討してください」リスナーからの投稿に笑い、肩の力が抜けたのか、中居は「そうね、あんまり背負うことなく…」とちょっと前向きな発言。
岡村「ダンスだけでもいいですし」
中居「歌はダメですか?」
岡村「歌はやめてください。それは」
中居「申し訳ないけど、僕ミュージシャンですからね」
放送事故を起こしそうな沈黙。岡村も言葉を失っていた。

これまで、歌が下手、コンサートでも中居のソロステージではファンのトイレタイム、なんて自虐的に言ってたけれど、誰よりも足を高く上げてキビキビ踊る中居くんは、司会をしている時とは別人のよう。

以前、中居のラジオで、安室奈美恵のアルバムを聴いた感想を語った。「もの凄い固結びをして閉まっておいたエンターテインメントのスイッチみたいのが、ヤバイヤバイ、緩くなっちゃうみたいな」「固結びしてギンギンに結んで、奥の方に閉まってその扉も鍵を何重にも」。
どんな思いで曲作りをしたのかなど、封印していたエンターテインメントの扉が開きそうになったという。残念ながら堅結びは頑丈で、扉が開くことはなかったが、岡村の歌謡祭について「背負わずにね」「やるならちゃんとやる」の言葉に、ステージに興味が湧いたようにも聞こえた。またどこかのタイミングで、歌って踊る姿が観られますように……。

エンターテインメントのルーツが似ている
二人の共通点は、肩書の枠にとらわれず、新たな挑戦をしてきたこともその一つ。
SMAPがCDデビューした頃は音楽番組の衰退期でバラエティへ進出。ナインティナインもコンビを組みながら、吉本印天然素材というユニットで、歌って踊るアイドル芸人という新しい売り出し方に挑戦した。

アイドルとしての活動に加えて司会、俳優、バラエティ番組でコントもしてきた中居。
ナインティナインも、大阪から東京へ進出。深夜番組からゴールデンへ。俳優として映画出演も果たした。冠番組も、1996年4月に「SMAP×SMAP」、同年10月「めちゃ×2イケてるッ!」とほぼ同時期にスタート。2016年にスマスマが、2018年にはめちゃイケが終了。共に20年超の長寿レギュラー番組を担ってきた。

2014年のFNS27時間テレビでは、SMAPが総合司会をつとめた。27時間の生放送と、ただでさえ過酷なスケジュールに加えて、2日目の夕方からは45分03秒のライブパフォーマンス。中居は体調不良にも関わらず、ソロパートは死守。時にはメンバーがカバーし、時にはファンが中居の代わりに歌う場面もあった。
翌年はナインティナインと中居が総合司会。前年も行った水泳大会では、SMAPとの対決が行われた。岡村は「テレビのピンチをチャンスに変えるライブ」で1時間超のダンスに挑戦。特に最後の「No Limit」では6分ほどのハードなダンスも黙々と踊っていた
“時代に選ばれた”両者は、競い合うように、ごく最近まで体を張って限界に挑戦していた。

「あと10年経ったらどうなっていますか」
「また変わってるで」

中居は「俺らの時代はさ」と語らないように気をつけているという。
「自分の使ってきたものさしが、長さも太さも違って、そのものさしを弓なりに、柔軟にしなやかに持たないといけないなって思いますね」
「きつく言ったらパワハラ、圧力かけられたとか、そういう風に言われちゃうと、こうした方がいいんじゃない、ああした方がいいんじゃないとは言えない」

企業の中間管理職の会話を聴いているようだ。トップアイドルを経験して、冠番組を複数持っているのだから、少しくらい強く出ても良さそうなものだが、これも現役だからこそなんだろう。

令和一発目のゲストで、2時間かけてじっくりと平成の時代を振り返るのでは?と予想していたが、思い出話のほかに、仕事、結婚、将来のこと、40代働き盛り、独身男性の“いま”を中心に語っていた。岡村は「結局、頑張っていかなあかんなって話なんですよ」とまとめた。
環境は変わったものの、一線を退いたわけでもなく、二人はまだまだ全力疾走の最中。エロ番組の構想を練り、これからは合同結婚式のお相手を探す旅に出るとか。

ちなみに、エンディング曲はめちゃイケ初代エンディングテーマ、JUDY AND MARYの『BLUETEARS』だった。中居セレクトなんだそう。
(柚月裕実)

『ナインティナインのオールナイトニッ本 vol.6』ワニブックス岡村と中居はラジオ番組も長く続いている