5月23日に初戦を迎えるU-20W杯ポーランドの参加メンバー21名が5月7日に発表された。齊藤未月(湘南)、郷家友太(神戸)ら主力メンバーが順当に名前を連ねながら、その一方で、久保建英FC東京)、安部裕葵(鹿島)、大迫敬介(広島)の3名がメンバーリストからは外れた。

このことについて関塚隆技術委員長は「今日はこの21名のメンバーに関してのお答えにしたいと思います」と明言を避けた。というのも、数日前から久保を筆頭にU-20杯のメンバーから外れるのではないかという憶測が飛び交っていたからだ。その理由として、6月14日に開幕するコパ・アメリカでの招集の可能性が取り沙汰されていた。

JFA日本サッカー協会)に拘束力のないコパ・アメリカは、早々とブレーメン大迫勇也の招集を拒否するなど、JFAも選手の招集に頭を痛めている。当初、田嶋JFA会長はJクラブの23歳以下の選手の貸し出しを依頼する予定でいたが、すでにチームの主力となっている選手が多いことは先週木曜のコラムで紹介した。

それならさらに下のカテゴリーの20歳以下の選手を招集しようとプランを変更したのだろうか。もしもそうなら、コパ・アメリカの選手招集現場はかなり混乱していると見ていいだろう。

関塚隆技術委員長は「我々が考えていく道としては、1つの目標に向かってしっかりと進んで行く。選手がサムライブルーに到達するために本人に適したところを見定めて、全カテゴリーの監督が1つの目標に向かって進んで行く。技術委員会を含め、JFAが1つになってしっかりと選手を育てて成長させていく。ここの道は1本しっかりみんなで共通の理解を持ちながら、共有して戦っています。これだけは今日の時点ではっきりと皆さんにご説明していきたいです」とも話し、“育成NIPPON”を強調した。

ただ、現実的に久保のU-20日本代表メンバー外は、コパ・アメリカへの招集に変更したとは考えにくい。長谷川健太監督は、久保に限らず田川亨介や波多野豪、平川怜がU-20W杯に招集されたら送り出すものの、コパ・アメリカには選手の貸し出しに消極的な意見を以前漏らしていたからだ。

今回のU-20W杯メンバー外は、チームにとって久保はもはや欠かすことのできない戦力であり、首位を快走してリーグ初制覇に期待のふくらむFC東京にとって、最長5試合の欠場を余儀なくされる同大会への招集を辞退したと見ている。同じように大迫は直近の3連敗で2位から7位へ後退した広島、開幕当初からケガ人続出で“らしくない”不安定な戦いを強いられてる鹿島も同じ理由から大迫や安部の招集を辞退したのではないだろうか。

ただし、6月5日と9日のキリンチャレンジ杯に久保が招集される可能性は高いと思う。なぜならJ1リーグは中断期間だからだ。それならチームも選手を喜んで送り出すだろう。もしも久保が代表デビューを果たせば、6月4日に18歳の誕生日を迎えるだけに、戦後2番目の最年少記録となる。

同記録は清水のDF市川大祐が、98年4月1日に日韓W杯共催記念試合で韓国戦に出場した17歳322日が1位で、同じ試合で代表にデビューした浦和の小野伸二が18歳186日で2位だった。3位の古田篤良を知っている読者は少ないと思うが、早稲田大学在学中の71年8月13日アイスランド戦で、18歳290日で代表にデビューしたハードタックルとロングキックが武器のDFで、市川に抜かれるまで27年間、最年少記録を保持していた。

果たして久保が6月のキリンチャレンジ杯で代表デビューを飾るのかどうか。今週中にはフランスW杯に臨むなでしこジャパンのメンバー発表もあるなど、5月と6月はイベント目白押しの日本サッカー界とも言える。


【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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