攻撃の主軸2人に加え、橋岡や大迫ら世代をけん引してきた選手たちも選外に

 日本サッカー協会JFA)は7日、23日に開幕するU-20ワールドカップ(W杯)に向けたU-20日本代表メンバーを発表した。毎回、候補選手にとっては明暗が分かれるメンバー発表だが、今回は6月のコパ・アメリカに参戦するA代表へ招集される公算の高い久保建英FC東京)や安部裕葵(鹿島アントラーズ)が招集外となるという、これまでとは多少雰囲気の違ったメンバー選考となった。

「最終予選(U-19アジア選手権)をともに約1カ月間戦い、チーム力や成熟度はだいぶ上がったと思います。ただ、そこにいる選手すべてが(U-20W杯に)行けるわけではないと話していた。彼らに切符が用意されていたわけではないというのが一つです」

 チームを率いる影山雅永監督は、最終予選まで主力を担っていた久保や安部の不在に対してこのように述べている。もちろん監督側からすれば、いつだってベストメンバーで戦いたいのは間違いない。今回は怪我で呼べない選手もいるのだから、使える選手は使いたいという心理は誰にでも理解できる。

 とはいえ、A代表に引き上げるという意味ならば、彼らがそれだけのパフォーマンスを残してきていることに疑問の余地はなく、そこに入っていくというのは喜ぶべき事実だ。A代表の舞台での経験がさらなる成長を助長させる可能性もあるのだから、「あっちだったら」「こっちだったら」という押し問答に意味はないだろう。

 ただ、問題はその先にある。今回、久保と安部だけでなく、DF橋岡大樹(浦和レッズ)、GK大迫敬介(サンフレッチェ広島)、GK谷晃生(ガンバ大阪)も招集外となった。この世代をけん引してきた選手たちが“本番”のU-20W杯で選外となったことで、時間のないなかで攻守にチームの立て直しをしなければならない状況に追い込まれてしまったのだ。

 特に攻撃面の修正は急務である。これまでの試合を見ても久保と安部が起点となり、チャンスを創出する場面は何度もあった。彼らの不在が確定した今、チームの形を新たに組み立てる必要があり、そのうえで2人が見せていたような個での違いを生み出すニューヒーローの出現が求められている。

「追いつき追い越せ」のメンタリティーを備える“飛び級組”に注目

 そういった意味では、J2の横浜FCで評価を上げるMF斉藤光毅や来季のセレッソ大阪加入が内定しているFW西川潤(桐光学園高)といった一つ下の世代からの“飛び級組”に注目したい。ともに単独で局面を打開する力を持っており、下の世代ながらすでにJの舞台で結果を残し始めている勢いもある。上に追いつき追い越そうとするメンタリティーも備えており、彼らが活躍することでチームの士気を高めていくことができるはずだ。

 そして、もう1人名前を挙げたいのがG大阪中村敬斗である。3月のポーランド遠征、4月の国内合宿で未招集だったことを考えると最後の枠に滑り込んだと言えるが、一昨年のU-17W杯で見せたインパクトは強烈な記憶を残している。ドリブルを武器とするアタッカーが、新たな違いをチームにもたらす可能性はあると言っていい。

 FC東京のFW田川亨介や川崎フロンターレのFW宮代大聖を含めて、ここで活躍すれば東京五輪へのアピールにもつながる。東京五輪に向けたサバイバルに参戦するためにも、攻撃陣の奮起に期待したいところだ。影山監督は次のように話している。

「彼らの持っているものを思い切って出させられるような準備をしたいと思いますし、出せるような選手を選んだつもりです。そして僕はチームの立ち上げの時からずっと、うまい日本代表と言われたくはないんだよと(言ってきた)。本当にこの年代の日本代表は戦える選手たちだし、戦うチームだよと。本当に見ていて誇らしいよね、という風に言われるような戦いを、W杯でできるように準備したいと思っています」

 すでにU-20W杯で戦うメンバーは決まった。彼ら21人のフルパワーを出して世界の強豪と戦うことが、今後の日本代表の成長へとつながっていく。この経験を一つも無駄にしないために、そして世界のトップを目指すために、若き侍たちは一丸となって戦地へ赴く。(林 遼平 / Ryohei Hayashi

久保建英や安部裕葵は今回招集外となった【写真:Getty Images & 荒川祐史】