中学校1年生で学ぶ非常に簡単な単語、Very。

 Very good、Very happy、Very deliciousなど、色々な形容詞につけて「とても」「非常に」という意味で使うことは、みなさんもご存じのはず。しかし、実は大きな落とし穴がある単語でもあります。

楽しむ英会話

 その落とし穴とは、まさにVery「とても」をつけることで、「とても」の意味が失われてしまうこと。

どちらの表現が本当に価値あるのか?

第32回 Veryに潜む落とし穴

 生まれて食べたこともないような美味しい食べ物を口にした時、「これ、本当にとってもすごく美味しい」と言うのと、重みをもたせた「おいしい」の一言と、どちらに価値があるでしょうか?

 演劇の世界でも言われるようですが、「とても」などの単語に頼って感情を表現することは、本人の表現力のなさを反映しています。1つの単語に込める心や気持ちこそ「Very」を繰り返すよりも意味のある表現です。

 ネイティブスピーカーにも、Veryなどを繰り返す人は多くいます。若い人ほどその傾向があるので、少し年を取って落ち着いてくると、Veryを繰り返さなくても重みのある感情表現ができるようになってくるようです。逆にVeryを繰り返していると、幼稚な表現に聞こえます。

 日常会話だけではなく、ビジネスシーンにおいても似たことが言えます。We strongly believe…「私たちは強く○○と信じています」のようにStronglyを使って強調することもありますが、コミュニケーションコーチングをしている人たちは、Stronglyを排除することを勧めるでしょう。

若い人ほど使いがち、誇張の表現「VERY」

英語

 逆に、Believeにどう気持ちを込めて表現したらよいかを指導するはずです。We highly suggest…「私たちは○○するとよいと強く思います」や、We very much disagree…「私たちは○○に断固反対します」などもそうですね。時にはもちろん「断固」などの表現が必要な時もあります。しかしいつも「断固」や「強く」を繰り返していれば、これらの単語に含まれる意味が弱まってしまうでしょう。

 実際、イギリスと比較してアメリカの英語はこのような誇張の表現が多いとされています。先ほど、若い人ほど誇張の表現を使うと書きました。

「親友とは人生で2、3人できるかできないかだ」と、よく言われますが、アメリカ高校生などは「Very good friends」「とても仲の良い友達」程度の意味で、Best friendsを使います。

 This is the most delicious food I have ever had.「今まで食べた中で一番美味しい食べ物」も、実際には「Very delicious」程度の意味。私は通訳をする時に、文字通りの意味と、このあたりの隠れた意味を勘案して、時には「今まで食べた中で一番美味しいかもしれない」程度に和らげることもあります。

 外国語として英語を喋る私たちにとっては、不必要な誇張表現を避け、単語だけに頼らないい豊富な感情表現ができるようになるとよいですね。

TEXT/木内裕也>

【木内裕也】

会議通訳者ミシガン州立大学研究者。アメリカ大衆文化、アメリカ史の研究を行うほか、国際一流企業、各種国際会議などの通訳を行う。またプロサッカーの審判員としても活躍。著書には『同時通訳者が教える 英語雑談全技術』『耳と口が英語モードになる同時通訳者シャドイング』(ともにKADOKAWA)など多数。英語で仕事をする人の応援サイト「ハイキャリア」にも執筆