「あの企業の意外なミライ」を株価と業績から読み解く。滋賀県出身、上京2年目の犬より猫派、好きな言葉は「論より証拠」のリサーチャー・馬渕磨理子です。



 私はこれまで、上場銘柄のアナリストとしてさまざまな企業の業績予測、市況予測を行ってきました。また、自身で株式投資を5年以上に渡って行い、市場と向き合ってきました。



 当コラムでは、そんなリサーチャーである私、馬渕の視点からみなさまに「あの企業の意外な情報」をお届けます。



◆株価6万5000円台のユニクロは停滞期なのか



 さて、第一回で取り上げるのは今やアパレル業界の王様、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(東1・9983)です。いえ、本当の主役は違いますファーストリテイリングの業績を切り口に、ある企業の急成長の理由を紐解いていきます。



 まず、簡単に市況を振り返っておきましょう。



 10連休前のファーストリテイリング(以下、便宜的にユニクロと呼ばせていただきます)の株価は連騰し、65,490円(4月22日終値)を付け、上場来高値を更新しています。



 堅調な株価推移には2つの理由が考えられます。



1 直近決算では、業績予想を下方修正したものの、下期見通しは据え置いたことに好感が持たれたため。

2 10連休を控え、信用売り方をしている投資家がショートポジションを閉じた。そのため、買い戻しによる「踏み上げ相場」となったため。



 事実、ユニクロの直近の決算を見てみると、連結実績は増収営業増益、営業利益は過去最高となっています。



 しかし、詳しく内訳を見てみると、雲行きが怪しい面もあります。



 どうやら、「国内ユニクロが苦戦」しているようなのです。昨冬は、暖冬の影響で防寒衣料の需要が弱かったこともあり、2019年上期の既存店売上高は0.9%減。既存店が、成長期から停滞期に入ったのではないかとの意見すら飛び交っているのです。



ユニクロ停滞の裏にワークマンの台頭あり



 このユニクロの停滞期を助長している存在が、今回取り上げたい“第二のユニクロ”とも言われるワークマン(JQ・7564)です。



 え、ワークマン



「行こうみんなでワークマン♪」



 ……のおCMでおなじみのアレ? 建築業界などの作業服じゃないの?



 そう思われる方も少なくないかもしれません。が、同社は最近、アウトドアウエアやスポーツウエアとして一般消費者にも人気が出ているのです。



『機能性が高く、価格は安い』のがワークマンで取り扱う商品の特徴です。



 伸縮素材で動きやすいものや、防水、保温力が高い商品を展開し、ストレッチ素材のスポーツウエアが1900円、防寒機能付きのアウトドアウエアが3900円と格安。



 これは、アウトドアメーカースポーツウエアメーカーの半額以下の価格帯での販売になります。



 ワークマンのさらなる強みは、値下げをしなくても売れる点です。



 アパレルメーカーデザインが古くなるとすぐに値下げをする必要が出てきますが、ワークマンは「機能性を重視」しているので、デザインが多少古くなるという概念がないのです。



 型落ちがない――これはアパレル業界の弱点を覆すものでかなりの強みだと言えるでしょう。



ワークマンは女性客の取り込みに成功していた!



 さらにワークマン2018年9月には、作業服を一般向けにカジュアル化したPB商品を中心に集めた新業態店舗「ワークマンプラス」もスタートしています。



 これが、予想以上の売上となっているのです。最近ではメディア露出の多さも功を奏し(SPA!でも何度も取り上げられましたよね)、女性客や子供連れの客層が思いのほか増加したとのこと。



 また、ショッピングセンターに出店したことで、一般消費者の購入が増加し、業績は8期連続の増収増益となっています。今や、ワークマンは「おじさんの作業服屋さん」というイメージは名実ともに過去のものとなりつつあるのです。



 また、今後の業績予想に大きな影響を与える決算説明会(2019年2月7日)においても期待が持てる発言がありました。栗山清治社長によると「来期の開業予定は全てワークマンプラスにする」そうで、今後さらなる一般向けの業態への注力が伺えます。



 株価も右肩上がりのトレンドが継続してる中で、5月8日、直近の決算発表が出ています。今期経常は10%増、20年3月期も10.5%増の伸びを見込んでいます。株価は現在、5,490円(5月8日終値)で推移していますが、好決算を直近高値5,870円(3月28日)が視野に入ってきます。



ユニクロの「代替わり」の可能性も!?



 ご存知の通り、ユニクロフリースやヒートテックなど機能性のある商品を生み出し、これまで限定的だったアパレル市場を大きく切り開いてきた企業だったと言えます。



 一方、作業着が出発点であるワークマンは、元々機能性の高い商品を展開しており、それが一般消費者に浸透してきているという、ユニクロとは異なる市場の獲得の流れを得ています。さらに、元々価格が安く値下げをする必要がないビジネスモデルというのも特徴的です。



 今後の市場をずばり予想しましょう。



 ワークマンは、「流行り物は着なくていいから丈夫なものを着たい」というニーズに応えるかたちでユニクロに代替される可能性を秘めているのです。それが、ワークマンが“第二のユニクロ”と今、市場で呼ばれている理由です。もちろん、会社の規模としては、ユニクロの時価総額が6兆8916億円であるのに対して、ワークマンは4460億円(共に5月9日時点)と大きな差はありますが、ブランドの「勢い」という面では、代替わりする可能性は、十分あります。



ファンも拡大!SNSワークマンファンが溢れている



 また、ワークマンには“ファン”がついているのも特徴です。



 Twitterで「ワークマン」と検索してみてください。〈ワークマンレインウエア無敵!〉、〈ワークマンプラス、防水シューズ1500円安くてカッコイイ〉などとワークマンについてのつぶやきが、数多く溢れています。



 そう、ワークマンの強みはSNSによる口コミを利用することで、商品開発にも参考にしているのです。



 事実、同社は作業着のみの展開をしていた時に、自社の商品がどのようにお客様に利用されているのかSNSで調べていたそうです。結果、ワークマンの作業着をアウトドアスポーツウエアとして使っている人たちを発見したことで、カジュアルシーンでも着用できるように商品開発を行った経緯があります。



 また、ブロガー限定の新商品モニターキャンペーンを実施し、ブロガー連動型の企画なども行い、ブロガーやインフルエンサーと共に、ワークマンの商品開発を行っているのです。



 これは、ファンの意見を取り入れて、彼らの意向に沿った商品を開発するロイヤルカスタマーを大切にしてる企業行動と言えるでしょう。



 商品開発力だけでなく、顧客の意見をうまく吸い上げる力も身に着けているワークマンの今後には、ぜひ注目してみてください。

【馬渕磨理子】
日本テクニカルアナリスト、(株)フィスコ企業リサーチレポーター。日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでマーケティングを行う。Twitter





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