先月、お笑い芸人オードリー春日俊彰(40歳)が同い年の女性との結婚を番組で発表しました。10年越しのプロポーズとともに話題になったのが、春日の“使命感”発言。男女の事情を長年取材し著書多数のライター・亀山早苗さんが、話題のニュースを読み解きます。(以下、亀山さんの寄稿)


◆「DNAを残さないと」という使命感
 春日俊彰氏が結婚発表した。その後の記者会見子どもについて聞かれ、「春日のDNAを残さなければいけないという使命感というか」と発言。「相手と相談」と妻を気遣いながらも、子どもがほしいという意思表示をした。



オードリーオールナイトニッポン 最高にトゥースな武道館編』(扶桑社ムック



 その発言自体を否定する気も非難するつもりもないが、DNAを残したい」は、人の本能なのだろうかということは気になった。


 もちろん、あらゆる生物にとって「種の保存」は重要な生存理由なのだが、ヒトにはそれ以外にもいろいろな生存理由があるし、どう生きるかという選択肢もある。


子どもをうまない選択」「子どもはほしくないという思い」が否定されてしまう社会は生きづらい。


◆「子どもがほしくない」と言えない世の中
「実は私、そもそも子どもを産むつもりはなかったんです」


 そう言うのはフミコさん(37歳)だ。結婚して4年たつが、もともと子どもをもつつもりはなかった。結婚するとき、夫にもそう言った。すると夫は不思議そうに「自分の遺伝子を残したいと思わないの?」と言ったそう。



写真はイメージです(以下同じ)



「私はその発言にびっくりしました。自分の遺伝子を残して何があるのと問い返してしまって。それは動物の本能だろうと彼は言うけど、私はそんなことを考えたこともなかった。むしろ、自分の遺伝子を残したいと思う人は、愛されて素直に育って、自己肯定感も強い人なんだなと羨ましくなりました


 一時期は結婚もやめたほうがいいのではないかと考えたが、彼は結局、「考えが変わることもあるよ」と言った。


「私がひねくれているのかもしれませんが、自分の遺伝子を引き継いだ人間をこの世に送り出すということが、どうしてもできるとは思えない。そんな畏れ多いことを、どうして人は気軽にできるのか、したいと思うのかわからないんです


 ただ、もちろんそんなことは大声で世間には言えないと彼女は肩をすくめる。



人が子どもを産むのはもちろんいいことだと思うし、私も友だちの子と遊んだりするとかわいいなとは思う。だけど、それと自分の遺伝子を残すということは別なんですよね


 そのあたりは夫にもわかってもらえないという。夫が本気で子どもをほしがったら、離婚することも視野に入れていると彼女は言った。


◆「子どもがほしい」と思えない自分は“悪”なのか
 子どもがほしくてできる人、まだいらないと思っていたのにできた人、そして子どもがほしくてもできない人。世の中はいろいろな人がいる。


「僕は子どもがほしくないタイプ。最初はそう思っていても、子どもができればかわいいと思うものだよと言われますが、もし思わなかったら大変なことになるでしょ



 シンゴさん(40歳)はそう話す。ただ、“遺伝子を残したい”と思ったことがないわけではない。彼は地方の旧家のひとり息子。小さいころから家を継げと言われてきたが、それに反発して東京の大学に入学した。


両親はもう僕のことはあきらめて、妹が婿をとるという形になっています。僕自身は、名前を継ぐようなたいそうな家ではないと思っているんですけどね。遺伝子なんて断ち切ったほうがいいとさえ思ってる」


 そうは言っても彼は人生に絶望しているわけではない。ただ、自分の遺伝子は家名と同じように、後世に残すほどのものではないと思っているだけ。


「昔つきあった彼女とそういう話をしていたら、『子どもがほしいと思わない人は、どこか歪んでいるんだと思う』と言われました。確かにそうかもしれません。ただ、世の中にはそういう人間もいるということです。それを知ってもらいたいと思うのは不遜(ふそん)かもしれませんが」


 子どもを巡る発言には、みんなナーバスになっている世の中だが、「ほしくない」と思う人もいるのだ。もちろん、それを非難することも誰にもできない。


「友人の中には、最後、誰にめんどう見てもらうのかと問うヤツもいますが、子どもがいる人ってみんなめんどうみてもらいたいと思っているのかと逆に言いたい。子どもがいようがいまいが、自分の人生は自分で完結させるべきじゃないですかねえ


 子どもいらない、というと人間的に欠陥があるようにも思われると語るシンゴさん、その胸中は案外複雑なようだ。


<文/亀山早苗>


【亀山早苗】フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数



写真はイメージです(以下同じ)