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 極寒の宇宙と暖かな地球の大気が生み出す寒暖のコントラスト――こいつを利用すれば、ソーラーパネルと似た要領で発電ができてしまうのだそうだ。

 しかもソーラーパネルと大きく違って、こちらのシステムは夜にこそ真価を発揮する。

 夜や悪天候であっても発電が可能な、新しい再生可能エネルギーとして期待されるものこうしたわけである。

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ソーラーパネルの仕組みを逆転させて宇宙発電

 ソーラーパネルは基本的に大きな光ダイオードで、シリコンのような素材の中にある電子を励起させることで、太陽から届いた光子(光の粒子)を電気に転換する半導体でできている。

 しかしアメリカ・スタンフォード大学のオノ・マサシ氏らは、このときの光ダイオードの動作を逆転させ、光子を赤外線放射(熱放射)として装置から放射することにした。すると、このときに少量の電気が作られるのだ。

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image credit:Santhanam&Fan、Phys。Rev. B、2016

 
 これは「負の照明効果(negative illumination effect)」を利用したもの。

 具体的には、赤外線半導体を夜空に向ける。地球よりも宇宙のほうが寒いために、熱は宇宙へ向かって逃げようとする。発電はこの流れによって行われる。

 「宇宙の広大さは熱力学的リソースです」と共同研究者のファン・シャンフィ氏は話す。

 「光電子物理学的に見ると、入射から発電するのと放射から発電するのとでは、それはもう美しい対称性があるのです。」

実用化はまだ先でも、可能性は広がる

 なお今回の実験で発電できたのは、1平米あたり64ナノワットとごく微量でしかない。それでも、あくまで概念実証の段階なのだから、それに成功しただけでも素晴らしい成果だ。

 実用的な程度に発電ができようになるまでは、もっと効率性を上げる必要がある。現在のソーラーパネルが1平米あたり100~200ワットを発電できることを考えれば、先はまだまだ長そうだ。

 理論上は、適切な素材と条件を揃えることで、今の100万倍以上――1平米あたり4ワットを発電できるようになるそうだ。

 町全体の電力を賄うわけにはいかないかもしれないが、夜間に消費電力の少ない機器を動かす程度なら、早い時点で有望なシステムになるかもれない。

 とりあえず可能なことは証明された。今後は、その性能をいかに改善するかだ。

 そして、その有効性が確認されたのならば、同じ仕組みを機械からの排熱にも応用できるかもしれない——可能性は広まるのだ。

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 この研究は『Applied Physics Letters』に掲載された。

References:eurekalert/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52274215.html
 

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