豪快な走りと存在感で、アメリカンクルーザーの代表格となっているハーレー・ダビッドソン。最近では電動モデルの『LiveWire』を発表するなど、これまでのイメージにとどまらない展開を進めている。

【詳細】他の写真はこちら

既存のラインナップからも、そうした「近未来ハーレー」の片鱗は感じられる。そのひとつが、ソフテイル・シリーズの最新作『FXDR 114だ。まるでSF映画の劇中マシンのような外観にドラッグレーサー顔負けの攻めた仕様と、かなり攻めたマシンとなっている。

伝家の宝刀「ロー&ロング」スタイルをさらに強調

そもそもソフテイルというのは、サスペンションレスでフレームが美しく見える、古き良き時代のバイクのように、一見しただけではリアサスが見えないリジッド風スタイルを指す。クラシックなスタイルと現代的な乗り味を両立させた、ハーレーを代表するシリーズのひとつなのだ。

そんな懐古主義的なシリーズの中で、『FXDR 114』は異彩を放っている。パット見のシルエットはハーレーらしいロー&ロングなスタイリングそのままだが、ばっさりとエンドをカットしたようなテールカウルに、曲面と平面を組み合わせたような独特のデザインのタンクビキニカウルなど、とにかくデザインが先進的。「AKIRA」や「攻殻機動隊」などのSF作品に出てきても違和感がないくらいだ。

ドラッグレーサーインスパイアされた仕様はかなり刺激的なもの。伝統的なVツインエンジンとはいえ、排気量は1868ccともはやクルマ並みだし、その横にはまるでスーパーチャージャーのように張り出したエアインテークが鎮座している。フロント周りは倒立フォークにセパハン、リア周りはモノサスとまるでスポーツバイクさながら。

さらに18インチのリアホイールには240mmの極太タイヤを装着。本当にそのままドラッグレースで使えるのでは?と思わせてくれる迫力を持っている。これは直線番長になるっきゃない!

メーターは小型のデジタルメーター。速度や走行距離、ガソリン残量など、必要最低限に留めている。ボスホスもコンパクトになっていたし、アメリカンバイクの流行りなのだろうか。

ストレートの走りは爽快そのもの。コーナリングも意外とイケる

実際に走らせてみると、やはり気持ちいいのはストレート。アクセルを少しでも開ければ後ろから押されるようにグンと加速する。試乗場所が海岸沿いだったこともあり、海風を感じながらストレートを駆け抜けるひとときはとにかく爽快の一言だった。トルクが低回転からモリモリ湧いてくるから、街中のようにストップ&ゴーを繰り返す場面でもストレスは感じないはず。

加えて意外だったのが、カーブもそれほど苦ではなかったこと。リーンアウトやリーンインをして大げさなアクションをしなくても、シート荷重を少しイン側にかけてやるだけで向きが変わり、想定通りのラインをトレースしてくれた。クルーザとしては高めの位置にステップが付いているので、思ったよりバンク角も稼げてしまう。ハーレーカーブで常にガリガリしてしまうバイクだと思っていた筆者にとって、新鮮な体験だった。

価格は286万5000円~。おいそれと手が出せるマシンではないのが残念だが、胸のすくような加速と意外とイケるコーナリングを味わえば、手元に置きたくなること請け合い。なによりスタイリングがいい。SFアクション映画の主人公気分で、日常からフルスロットルで脱出できそうだ。

関連サイト
2019 FXDR モーターサイクル | Harley-Davidson Japan

text石川順一
(d.365

掲載:M-ON! Press