連載「骨格筋評論家バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』6限目」

「THE ANSWER」の連載「骨格筋評論家バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』」。現役ボディビルダーであり、「バズーカ岡田」の異名でメディアでも活躍する岡田隆氏(日体大准教授)が日本の男女の“ボディメイクの悩み”に熱くお答えする。6限目のお題は「ベンチプレスの目標設定」について。

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 Q.30歳を過ぎて初めてジムに入会しました。トレーニーの友人から、「ベンチプレスで100kgを挙げて一人前」と言われましたが、まったく出来る自信がありません。

 ジムでフリーエイトを始めるようになると、誰しも、かつて挙げたことのない重りにチャレンジしたい気持ちが芽生えます。ベンチプレスで3桁の重量を挙げることは、トレーニーたちの憧れ。特に「100kg」を目標に設定している人は非常に多いのです。

 私自身、重りを追求していた時期がありました。技術が高く、体が強ければ痛まないのかもしれませんが、170kgのウエイトでベンチプレスを続けるうちに、骨がきしむのを感じたり、関節に痛みが出たりと、様々な不具合が頻発。ついには肘を負傷し、完治まで2年もかかりました。

 若い時であれば、多少トレーニングで体を痛めてもすぐに治ります。しかし、30代以降はそうはいかない。回復力は落ちるし、怪我の治りも悪くなる。結局、いいトレーニングができなくなります。

 また、挙げられる重量が1kg増えれば、筋肉が増えるとも言い切れません。確かに“筋力が上がる=筋肉が大きくなる”という法則があります。しかし、筋肉が増えなくても、今まで挙げられなかったウエイトが挙がることは、割と起こるのです。

 例えば、非常に重たいウエイトに挑戦するとします。いつもは、胸、肩、腕の筋力で挙げていたのに、「潰されるかもしれない」という恐怖心から、体中の筋肉を使って、何とか挙げてしまう。筋肉が増えたのではなく、体をうまく使えたことで挙げられた、というわけです。それを勘違いして「何とか挙げられるフォーム」で続けても、狙った筋肉に刺激が入らず、ボディメイクもうまく進みません。

挑戦すべきは「動きの質」、むやみに重量を増やさなくても筋肉は変わる

 そもそも、重りなんて永久に挙がり続けられませんよね。誰でもいつかは、限界がくるのです。

 では、重りだけではなく、何に挑戦していくべきなのか? 私は、動きの質だと考えています。実は、むやみに重量を増やさなくても、体の動きを精密にコントロールしながらウエイトを挙げることで、筋肉の形がどんどん変わっていきます。しかも、体に優しい。

 私が通っていたジムは20代ボディビルダーがとても多いのですが、皆、力が強い。私が扱うウエイトの倍の重量を扱います。5年前の私だったら、そのことが恥ずかしくて、再び高重量に体を慣らし、さらなる挑戦をしていたか、逃げるように時間をずらしてジムに行ったでしょう。でも今は若い選手たちに「自分たちの半分の重さでも、岡田ぐらいの体は作れるのか」と見せた方がいい、と思うようになりました。やはり彼らには大きな怪我なく、良い競技生活を続けてほしい。そして、誰も達し得なかった高みに達してほしいと願う部分があるからです。

 ただ、励みとして目標の数値が欲しいという気持ちもわかります。まずは、自分の体重分の重さを、正しいフォームで10回、挙げることを目標にしましょう。女性はバーベル1本(約20kg)からスタート。おそらく初心者の方は、バーベル1本を挙げるのさえ、キツイと思います。

 私は「100kgの壁が破れない」と苦しむ人を大勢見てきました。もちろん、痛みや苦しみの先に見える強さもあるでしょう。100kgという数値目標は、体とうまく付き合えれば、成長を加速すると思っています。しかし、重りに対する見栄は捨てたほうがいい。そもそも、パワーリフターやベンチプレッサー(挙上できる重量を競う選手)になりたいわけではなく、“イイ体”になりたいんですよね? 数字などにとらわれず、質にこだわるトレーニングを大事にして、狙った部分を確実に成長させる精密なボディメイクに取り組みましょう。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライターサッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビューや健康・ダイエットトレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌などで編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、サンマーク出版)、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』(永井峻著、高橋書店)など。

岡田 隆
1980年愛知県生まれ。日体大准教授、柔道全日本男子チーム体力強化部門長、理学療法士。16年リオデジャネイロ五輪では、柔道7階級のメダル制覇に貢献。大学で教鞭を執りつつ、骨格筋評論家として「バズーカ岡田」の異名でテレビ、雑誌などメディアでも活躍。トレーニング科学からボディメーク、健康、ダイエットなど幅広いテーマで情報を発信する。また、現役ボディビルダーでもあり、2016年に日本社会人ボディビル選手権大会で優勝。「つけたいところに最速で筋肉をつける技術」「HIIT 体脂肪が落ちる最強トレーニング」(ともにサンマーク出版)他、著書多数。「バズーカ岡田」公式サイトメディア情報他、日々の活動を掲載している。

「ベンチプレスで100kgを挙げて一人前」は本当?