福岡県内の小学校の校長が、県道にスプレーで白線を勝手に引いたとして道交法違反で書類送検され、罰金4万円の略式命令を受けた、との報道がありました。教育委員会によると、校長は「子どもたちの安全のためだった」と話しているとのこと。道路を管理する県に対し、町は安全対策を要望していたものの、なかなか進まず、校長は仕方なく自分で「停止線」を引いてしまったようです。道路に線や文字を書く行為の法的問題について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

意図的に行えば、犯罪の可能性

Q.道路に線や文字などを書く行為には、どのような法的問題がありますか。

牧野さん「意図的に行った場合、刑法などの犯罪に問われる可能性があり、悪質な場合は逮捕されたり、懲役刑や罰金刑を科されたりすることもあるので注意が必要です。

標識(路面上の道路標示も含む、以下同)を勝手に移設し、それによって標識の効用を妨げたといえるような場合、『他人の物を損壊した者』として、具体的な破損などがなかったとしても(1)器物損壊罪(刑法261条、3年以下の懲役または30万以下の罰金)、道路標識を破損し、または移設したことによって交通の危険が生じた場合は(2)道交法違反(115条、5年以下の懲役または20万円以下の罰金)となりえます。

落書き』をしたとして(3)軽犯罪法違反(1条33号、拘留または1000円以上1万円以下の科料)、落書きが悪質でない場合は『これらの工作物もしくは標示物を汚した者』にあたり(4)各都道府県市区町村の迷惑防止条例違反(勧告に従わない場合、5万円以下などの罰金)、例えば、横浜市奈良県の場合は(5)「落書き防止条例」(公共物の落書きの禁止や罰則)に違反する可能性があります。

なお、これらはいずれも、誤って行ってしまった場合(過失による場合)は罪になりません。ただし、民事上の過失により発生した損害の賠償責任(民法709条の不法行為責任)は別です」

Q.一時停止の線や文字などが必要と思われるのに、ない場合、どのようにすればよいのでしょうか。

牧野さん「管轄の公安委員会の承認がない場合、道交法違反(115条)、または、設置した一時停止標識などで他人の業務(車の通行など)を妨害した場合は、偽計業務妨害罪(刑法233条、3年以下の懲役または50万円以下の罰金)になる可能性があります。『子どもの安全のため』であっても、容認されることはないでしょう」

Q.もし、校長の行為がないまま事故が起きた場合、要望を受けていた県側の法的責任が問われることはないのでしょうか。

牧野さん「過失による安全標識の不設置については、犯罪として法定されていないので、刑事上の責任を問うのは困難で、因果関係の証明が難しいこともあり、民事上の不法行為責任を問うことも難しいでしょう」

Q.「とまれ」などの道路の表示が古くなり、ほとんど読めなくなっていることがあります。道路管理者に連絡しても長期間改善されない場合、地域住民や町内会で補修したら、やはり違法になるのでしょうか。

牧野さん「先述した(1)~(5)の犯罪の要件に該当する場合、違法となる可能性が高いでしょう」

Q.ちなみに、子どもたちがチョークなどで道路に落書きをすることがあります。これも違法になるのでしょうか。

牧野さん「子どもの場合、上記の犯罪の要件に該当しても刑事責任は追及されず、厳重注意などの行政上の処分になることが多いでしょう。ただし、民事責任については小学校を卒業する12~13歳程度であれば責任能力を認められて損害賠償責任を負う場合があるでしょう」

Q.かつて、路上駐車の取り締まりで警察官がチョークで印をつけることがありましたが、どのような法的根拠で認められていたのでしょうか。

牧野さん「法的根拠としては、明らかに駐車違反の取り締まり目的のマークであり、先述した(1)~(5)のいずれの犯罪にも該当する可能性が低いという判断の下で行われていたものと思われます。ただ、現在では行われていないようです。『チェックを受けてから車を移動させればよい』と考える悪質なドライバーの『短時間駐車』による交通妨害が発生していたので、2006年6月から始まった現在の駐車対策法制下では、駐車時間の長短にかかわらず取り締まりを行うことになりました。

ちなみに、京都府宇治市では、放置車両ならぬ『放置フン』の防止対策のために、ペットの飼い主に警告する目的で、フンの周りに黄色いチョークチェックをして、発見日時を記載する活動が効果を上げているようです。ペットのフンは、フンを避けようとした自転車が児童の列に突っ込むなど、交通の危険を誘発するので、たかがフンとは言えないようです」

Q.宇治市のフン対策のチョークが許されて、校長の『白線』が許されないのはなぜでしょうか。

牧野さん「宇治市チョークは、明らかにフンを目立たせるために引かれたことが分かりますが、道路上の白線は交通法規(交通安全)に影響し、素人による勝手な判断に任せることができないため、道交法違反となったものと思われます」

オトナンサー編集部

「まれ」がほぼ消えているものの、勝手に補修すると…