Credit: NASA

Point

NASAが計画している有人月面探査「アルテミス」の達成期限が、2028年から2024年に前倒しされた

■成功すれば、女性の宇宙飛行士が初めて月面へ着陸することに

■スペース・ローンチ・システムの開発が大幅に遅れていることなどから、期限内の達成は難しいという見方も

NASAが計画している次の有人月面探査には、「アルテミス」というニックネームが付けれられた。

名前の素敵さは申し分ないが、実現までの道のりはなかなか厳しそうだ。

資金も時間も足りない!?

トランプ大統領は3月、ミッションの達成期限をもともと計画していた2028年から、2024年に前倒しするよう、NASAに要請した。月面に米国人女性宇宙飛行士を初めて送り込む計画である。

来年の大統領選でトランプ氏が再選された場合、2024年は任期最後の年となる。アルテミスの成功は、トランプ氏にとって大きなPRになるだろう。

NASAのジム・ブランデンスタイン長官によると、ミッションを期限内に実現するには、新しい基礎と宇宙船の制作に約16億ドル(約1,753億円)の追加予算が必要になるとのこと。4年も早まった期日になんとか間に合わせるための、いわば「頭金」である。

スペース・ローンチ・システムでは、変容していく派生型を計画した / Credit: NASA

NASAの年間予算は約215億ドル(約2兆3,562万円)だが、2019会計年度に入って、アルテミスのミッションに不可欠な「有人宇宙船オリオン」、「スペース・ローンチ・システム(SLS)」、「月を軌道するミニステーション」の開発に、約45億ドル(約4,931億円)がすでに投じられている。ミッション全体に必要な合計予算は、公表されていない。

専門家の多くは、期限に間に合わない可能性を危惧している。特に、航空宇宙大手ボーイングが手掛けているSLSの開発が大幅に遅れていることが、大きく影響しそうだ。

オリオンとアルテミスの恋物語の結末はどうなる?

アルテミスという名前は、ギリシャ神話に登場する月の神「アルテミス」が元になっている。

アルテミスは、1969〜1972年に米国人飛行士計12名を月面に送り込んだ計画の名前の由来となった太陽神「アポロ」の双子の妹。「女性飛行士」が初めて「月」に向かうという意味では、ぴったりのプロジェクト名なのだ。

アルテミスの矢に倒れるオリオン(Daniel Seiterによる絵画)/ Credit: ルーブル美術館

ちなみに、ギリシャ神話アルテミスオリオンは恋人同士だ。オリオンが失恋して落ち込んでいる時に、アルテミスが狩りに誘ったことがきっかけで、二人は仲を深め、やがて恋に落ちる。物語では、二人の交際を快く思わない兄のアポロの策略により、アルテミスは誤ってオリオンに矢を放ちあやめてしまう。

そんな感じで神話では不穏だが、現実の宇宙船オリオンは果たして、無事に愛しいアルテミスの元へたどり着き、恋を成就させることができるだろうか? 恋に焦りは禁物だが、周囲の思惑と無関係ではいられないようだ。

 

reference: phys.org / written by まりえってぃ
2024年までに人類を月へ送る「アルテミス計画」を実行するとNASAが発表! 史上初の女性の月面到着なるか