ライトノベル」と言われる小説が誕生したと言われてから30年。その30年を引っ張ってきた3人の人気作家(神坂一さん、水野良さん、鏡貴也さん)に、KADOKAWAサブカルチャー文化を開拓し牽引してきた角川会長が加わり、ライトノベルの30年を語る豪華座談会が実現! その模様少しだけお届けします。

神坂一さん、水野良さん、鏡貴也さん、角川歴彦さんが送る、ライトノベルの30年スペシャル座談会が実施!

――新人発掘・育成を巡る新しい潮流としては、新人賞を経由せず、Webの小説投稿サイトから出てくるケースも目立ちます。このパターンでのデビューは、みなさんの目にはどう映っていますか?

水野 いわゆる「なろう」系の作家さんたちね。

鏡貴 みなさん、よく売れていますよね。

水野 僕は非常にポジティブに捉えています。もともと文芸には、同人誌からデビューするという流れがありました。それの拡大バージョンではないかと思うんです。要するに、小説が好きで、別にプロになりたいという気持ちもなく、好きで書いているうちに人気が出てきて、デビューする……実はこの流れは、一番まっとうなものかもしれない。最近は商業デビューを目指して投稿する人も増えているとは思いますけど、大本にあった基本の流れは好ましいかな、と。

鏡 選考委員に読んでもらう代わりに、読者に直接読んでもらって、そこで評価されたものが本になる……そういう、新人賞とは違ったデビューの流れがひとつできただけ、というのが僕の理解です。

水野 読者に直接読んでもらえるというのは大きいですよね。やっぱり、発表したものにレスポンスがあるのは、すごくいいことなんです。レスポンスで作家が育つ側面はありますから。

――アンケート葉書を直接もらっているようなものですよね。

水野 そう。僕は魂が削られていくので、絶対に無理ですけど(笑)。読者から直接意見をぶつけられるなんて……。

神坂 想像するだけで怖い……(笑)。

鏡 評判が落ちると、最初の構想から展開を変えたりするのかなと思うと、どうなのかなと思うところも少しあります。

水野 そうね。書きたいものを書くという勇気も必要なのかなとは思います。せっかく自由な場所なんだから。「売れるものはこうだろう」と思って書くのも全然いいけど、それだと長続きしない気がします。

鏡 気持ちが続きませんよね。

水野 この前、別の作家仲間との集まりでもそんな話になったんです。好きなものじゃないと続けられない。ともあれ、とにかく小説投稿サイトは、作家として鍛えられる仕組みなことはたしかです。上位ランカーになるには、毎日投稿できるだけの筆の速さも求められる。筆が速い作家が、読者の反応を気にしながら、連日のように書く……。

神坂 とてつもないですよね。

水野 上手くはなるよ、間違いなく。少なくとも、書き慣れていく。ただ僕はやっぱり、好きなものを書いてほしい気持ちが、ひとりの小説好きの願望としてある。好きと得意は違うこともあるかもしれないけど、好きなもの、こだわりをどこかで持ち続けてほしい。

角川 本当に、今のライトノベルは、日本のマーケットだけでは終わらない、世界から注目されるワールドワイドな存在になっています。みなさんはもちろん、これからデビューされようという方も、自分の仕事が世界に向かうものであると意識してほしい。そして、自分の存在、自分の生み出す作品のことを大事にしてほしいと思っています。

30年の歴史でどう変化していったか、ライトノベルのレコメンドサイト『キミラノ』ではインタビューの全貌をお届けしています。

角川歴彦 (かどかわ つぐひこ)】

株式会社KADOKAWA取締役会長。「ザテレビジョン」「東京ウォーカー」の創刊に携わる一方、スニーカー文庫や、電撃文庫などを立ち上げ、出版文化に新たな風を吹き込みメディアミックスで牽引してきた。

神坂一 (かんざか はじめ)】

第1回ファンタジア長編小説大賞にて準入選した「スレイヤーズ」でデビュー。ほかに、「ロスト・ユニバース」「クロスカディア」「日帰りクエスト」(スニーカー文庫刊)など、著作多数。

水野良 (みずの りょう)】

小説家・ゲームデザイナー。「ロードス島戦記 灰色の魔女」(スニーカー文庫刊)にて小説家デビュー。ファンタジア文庫では、「魔法戦士リウイ」「グランクレスト戦記」をはじめ、多くのヒット作を持つ。

鏡貴也 (かがみ たかや)】

第12回ファンタジア長編小説大賞にて準入選した、「武官弁護士エル・ウィン」でデビュー。代表作に「伝説の勇者の伝説」があるほか、「終わりのセラフ」(ジャンプ・コミックス刊)の漫画原作を手がける。(WebNewtype)

左から、水野良さん、角川歴彦 さん、神坂一さん、鏡貴也さん