SOLIDWORKS  World 2019は、AI、VR、IoTなどの最先端テクノロジーを駆使したサービスや製品が展示されるイベント。本稿では同イベントを取材した著者が最先端のテクノロジーについて現場で見聞きするなかで「日本ではまだ知られていないものの今後グローバルに普及しそうな可能性を秘めている」と感じたテクノロジーを3つご紹介します。

 

1: 石油タンクの点検を変える「Square Robot」

ボストンに拠点を置くSquare Robotは、石油タンクの欠陥の有無を点検するロボットを開発しています。従来、石油タンクの点検では一度タンクを空にして点検する必要がありました。しかし、このやり方では、1つのタンクの点検作業におおよそ200万ドル(2億2000万円)という費用と3か月間という時間がかかると言われています。

 

そんな問題を解決するのがSquare Robot。センサーを搭載したSquare Robotは、石油タンク内を自動遊泳し欠陥がないかどうか点検します。わずか8時間で点検作業を完了させることが可能。コストも従来の5分の1~10分の1程度に抑えます 。

アメリカ石油協会は石油タンクを10年に1度点検することを推奨していますが、Square Robotを使った場合、コストや手間もかからないため、よりこまめなタンクの点検が可能。このような予知保全によってタンクの腐食を低減し、その寿命を延ばします。

↑Square Robot創業者のWilliam O’Halloran氏(左)とエンジニアCharles O’Connell氏

 

Square Robot創業者のWilliam O’Halloran氏は今後の展望について「世界には約10万機のタンクが存在していると言われています。そしてその内の半分が石油のタンクであり、さらにその半分がアメリカに存在します。まずは今年から来年にかけてアメリカでの事業拡大を目指します。その後、日本を含む他国での事業も開始して、国際展開することも視野に入れています」と言います。

(Square Robotの動作確認テストの模様を捉えた動画)

2: EVの走行距離不安症を解消する「SparkCharge」

同じく米ボストンを拠点とするSparkChargeはEV用携帯充電ユニットを開発しているスタートアップテスラを筆頭に各自動車メーカーがEV(電気自動車)開発に参入していますが、EVの一般家庭への普及が現実味を帯びているなか課題となっているのが充電インフラの不足です。

 

SparkCharge創業者のJoshua Aviv氏はEVの充電インフラについてこう語ります。「私は大学時代にEVに乗っていましたが、充電ステーションが不十分なことに不満を感じていました。高速道路には40マイル(64㎞)に1つしかステーションがないんです。さらに充電にも数時間かかりました。EVの充電インフラはあまりにも未整備だったのです」

SparkCharge創業者のJoshua Aviv氏(左)とCTOのChristopher R. Ellis氏

 

また、既存のEV用充電ユニットは存在したのですが充電に数時間かかるうえ、冷蔵庫並みの大きさで携帯性にも難がありました。

 

そこでJoshua氏はSparkChargeを創業し、どこにもで持ち運べるようにクーラーボックス並みに小さなEV用携帯充電ユニットを開発することを目指しました。独自のモジュール化技術と電力系統技術で充電の高効率化と小型化を実現したSparkChargeは、1分で1マイル(1.6km)走行分の充電をすることができるんです。

SparkChargeは最終的にEV用携帯充電ユニットを一般のEV利用者へ販売することを検討しています。直近ではロードサービス事業者やディーラーへの販売から開始予定。すでに複数社が導入を検討しているとのこと。さらに、SparkChargeとパートナーシップを結んでいる企業のなかには、テスラフォードモーターメルセデス・ベンツなどがあります。

 

3: 金属3Dプリンターをより手軽にする「Desktop Metal」

マサチューセッツ・バーリントンに拠点を置くDesktop Metalは、金属3Dプリンターを開発しています。金属3Dプリンターは宇宙や自動車など様々な分野で使われていますが、従来製品はとても高価で取り扱いにも危険が伴うものでした。大手メーカープリンターは1億円を超え、決して手軽に利用できるものではありません。

 

そこで、Desktop Metalオフィスなど小規模なスペースでも使用できる金属3DプリンターStudio System」を開発。価格は13.4万ドル(約1475万円) と従来の金属3Dプリンターよりはるかにお手ごろです。

 

Studio Systemはノズルから金属粉を噴出し結合ポリマーと混ぜることで成形物を製造します。Desktop Metalの金属3Dプリンターが成形したプロダクトは強度も実用レベルで問題ありません。ロボットが激しくぶつかって闘い合うゲームSawBlaze」では、ロボットブレード部分を保護する金属パーツDesktop Metalで製造した事例もあります。

Studio Systemに使われているパーツのひとつ

 

このDesktop Metalの金属3Dプリンターが、多品種・大量生産のマスカスタマイゼーションを加速させます。例えば、同社はゴルフクラブ製造に金属3Dプリンターを活用することを提案しています。3Dプリンターを使用することでゴルファー個々の仕様にカスタマイズしたゴルフクラブデザインすることが可能。ゴルフクラブ1本あたり73ドル(約8000円) で製造でき、コストも抑えることができます。

 

また、Desktop MetalStudio Systemだけでなく、大量生産向けの大型金属3DプリンターProduction System」も提供しています(下の画像)。この製品は現在、大手自動車メーカーや金属部品メーカーの一部が導入済み。価格はStudio Systemよりも上がり、約75万ドル (約8460万円)はかかるそうです。

グローバル市場で成功するために投資を募っていたDesktop Metalは、計4億3800万ドル(約477億円)を調達したと発表しています。出資企業はフォードパナソニック、GV(旧グーグルベンチャーズ)、ゼネラル・エレクトリックBMWなど錚々たる顔ぶれ。大手企業がそのテクノロジーに期待しています。

Photo courtesy of Dassault Systèmes

 

本稿で紹介した3つのスタートアップは日本ではまだあまり知られていないものの、アメリカでは有望株として認知されています。日本でも徐々に知られるようになるかもしれません。彼らの動向に注目です。

日本ではまだ知名度が低いけど、近い将来「世界で覇権を取りそうなテクノロジーと企業」