Point
■中国の森でコウモリに似た翼を持つ新種の恐竜の化石が発見された
■こうした膜状の翼を持つ恐竜の発見は2例目であり、最初の発見が特殊な例ではないことが明らかとなった
■翼で羽ばたいていたというよりは、ムササビやモモンガのように翼を滑空に利用していた可能性が高いと考えられる
存在感はあるが…ちょっとカワイイ。
およそ1億6000万年前のジュラ紀真っただ中、羽毛に覆われた多くの恐竜が空へと羽ばたき始めたが、中には変わった種もいたようだ。
中国で見つかった新たな化石が、コウモリのような翼を持つ謎めいた新種の恐竜の存在を明らかにした。
イーチーには同胞がいた
発見された恐竜には、ラテン語で「両翼」という意味のアンボプテリクスという属名がつけられており、大きな膜状の翼をもつ恐竜の化石としてはこれが2例目となる。
1例目の化石は2015年に発見されており、その恐竜には「イーチー」といった可愛らしい名前が与えられた。イーチーも同様にコウモリのような翼を持っており、それは長い期間をかけて進化したものでものではなく、同時代の翼竜の翼とも異なるものであった。
今回の発見があるまで、イーチーのような翼を持つ恐竜の化石は発見されていなかったことから、この2例目の発見の意義の大きさがうかがえる。
論文の筆頭著者である中国科学院の古生物学者、王敏氏は「膜状の翼を持つ2例目の恐竜が私の目の前にいると分かったとき、私は固まってしまいました」と語っている。
1億6300万年前のその化石によって、イーチーが1つ限りの特殊な例ではないことが明らかにされたのだ。つまりこの2つの発見によって、飛行恐竜の進化における新たな枝分かれの存在が明らかにされたことになる。
翼はあったが羽ばたいてはいない?
アンボプテリクスとイーチーは、共に非鳥類型恐竜のうちスカンソリオプテリクス類に分類される。ワシントン大学の古生物学者アシュリー・モーハード氏は、「スカンソリオプテリクス類の中で翼竜のような翼を持つ別の例が発見されたことは素晴らしいことです」と述べている。
これら小さな恐竜が、その翼をどのように活用していたのかは明らかにされていない。しかし王氏は、「アンボプテリクスとイー(チー)が、翼を羽ばたかせて飛行していた可能性は低いと考えられます」と語っている。
つまり、それらの恐竜は現代の森に暮らすムササビやモモンガのように、膜状の翼で滑空のみをおこなうグライダーであったことが考えられるのだ。また、歯の解剖結果からはアンボプテリクスやその種が、何でも飲み込んでしまう雑食の恐竜であったことが示唆されている。
アンボプテリクスとイーチーのような恐竜は、鳥類が栄え、まだ大小の翼竜が大空を飛び回っていた白亜紀後期以降の化石では見つかっていない。
これらの存在は、恐竜がグライダーとして空を飛び回っていたことを示す例であり、木から木を渡り食べ物やシェルターを探す姿はリスのようであることが考えられるため、およそ私たちが想像する「恐竜」とは異なるものなのかもしれない。
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