Photo credit: Yohei Yamashita on Visual hunt / CC BY-NC
Point
■日本水産はタコの完全養殖に成功しており、市場に養殖ダコが出回るのも時間の問題
■ただ、養殖には多くの漁獲を元にしたエサが必要となるため、持続可能な食糧生産にはつながらない
■タコは賢い上、共食いや自食を行うため、飼育環境が劣悪になるという警告

科学誌「Issues is Science and Technology」に寄せられたエッセーで、科学者たちがタコを養殖することの悪影響を論じている。

食糧問題を解決するためには、家畜や海産物の飼育は必要不可欠だ。ただ、飼育や養殖が引き起こす環境への悪影響が近年叫ばれるようにもなってきている。例えば牛の飼育は、地球温暖化を悪化させている。

タコの需要は年々伸びてきている一方で供給は追いついていないので、価格も高騰している。タコの漁獲量は、時々によって変動が大きいため、安定供給のニーズが高まってきているのだ。そこで、タコの養殖の研究が世界中で行われるようになってきている。中には、改良の為に遺伝子の組み換えなどを行っているところもある。

タコの養殖の何が悪いの?

それでは養殖されるようになったとして、環境にどのような悪影響があるのだろうか。排泄物による窒素やリン汚染、病気の広がり、生息地の減少などが挙げられるが、最も大きな問題はそのエサである。

タコは肉食である。そのためエサには魚のタンパク質や油脂が必要となる。また、幼体は生き餌しか食べない。すると、その原料となる海産物の漁獲量に影響するのだ。現在、全漁獲量の3分の1は動物のエサとして利用されている

そしてその半分が海産物の養殖に使われているのだ。

タコは一生のうちに体重の3倍ものエサを必要とする。もし養殖されるようになった場合、その漁獲量を圧迫しかねず、世界の海産資源の激減につながりかねない。

飼育環境が地獄!?

エサの問題が無いとしても、まだ問題がある。飼育環境が見るも無残な地獄と化す可能性があるのだ。タコは賢い生き物だ。ビンのフタを開け、人を識別でき、一度解いたパズルを覚えており、水槽を脱出することもある。飼育中のタコが大脱走するさまを思い浮かべてほしい。かなりのカオスだ。さらに、飼育されることで引き起こされる数々の行動も地獄である。共食いし、自分の触手を食べるのだ。タコは賢い生き物なので、絶えず刺激を欲している。刺激がないと不満がたまり、退屈するのだ。

現在タコの養殖の研究には、大きな躍進がもたらされている。メキシコと日本における研究の成果で、完全養殖されたタコが市場に出回るのは秒読み段階だ。

それに対して科学者たちは、問題があることは明らかなので、養殖が広まる前に問題の芽をつんでおきたいと考え、警告を発しているのだ。

 

私達の食卓を飾る、タウリンやビタミン豊富なタコだが、価格化が高騰し最近買いづらくなってきたと思われる方もいるだろう。食卓の救世主となる完全養殖なのだが、環境への悪影響も抑えたい。両立できる道は無いのだろうか。ワールドカップの優勝国を当てた占いタコなら教えてくれるかも。

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reference: Science Alert / written by SENPAI
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