腕時計投資家の斉藤由貴生です。私はケチなのですが、単なるケチではなく、「快適性」を重視したケチを心がけています。そんな私はこれまでに、高級腕時計や高級車など、リッチなアイテムを安く楽しむことを実践してきました。



 お得に楽しむために重要なのは、買った値段と売却額の差額をいかに少なくするかという点ですが、腕時計に関しては買った値段より高く売ることを基本としています。



 ただ、いくらお得に買うことができたとしても、維持費が発生するモノの場合、購入する前にその年間維持費がどれぐらいかかるのかということに注意を払わないとなりません。腕時計の場合、維持費がほぼかかりませんが、例えばクルマの場合、持っているだけで様々な維持費が発生します。維持費といっても、税金や燃費などは買う前にある程度予測することができるため、ここで一番やっかいなのは整備費用です。



 私は、初めて買ったクルマであるロールスロイスで、車検整備費用80万円という洗礼を受けたため、これまで買ったクルマのほとんどは国産車。輸入車は10代のうちに懲りていました。



 しかし、そんな私が今回、十数年ぶりに輸入車を買ったのです。そのクルマは、メルセデス・ベンツのS500L(W140型)。



◆なぜ今W140メルセデス・ベンツSクラスを買ったのか?



 W140のSクラスは、新車時から日本で人気が高かった一方、その見た目から、十数年前までは怖い人が乗るクルマという印象がありました。



 今では、メルセデス・ベンツの「ヤングクラシック」に分類されており、エンスー的なキャラクターとなっているかと思います。



 私は、W140がまだ新車で販売されていた小学生の頃から、これを欲しいと思っていました。私が免許をとった2004年には、型落ちとなってから5年ほどが経っていたため、頑張れば買えなくない金額にまで中古車価格は下がっていました。



 そういったこともあって、クルマ好きな若い人にとって、中古車として特に珍しくない選択肢だったのです。



 そのため、私は「人とかぶるのが嫌だ」と思い、同じような予算で買えるキャラクターが似たクルマを買おうという考えに至ります。その結果、格安のロールスロイスと出会ったのです。



 その後、私は何度もW140を買おうと思ったのですが、結果的に他のクルマを買うにいたり、なんだかんだで20年以上「欲しいと思っているのに買っていない」という状態がづついていたのです。



 ゼロクラウンを買ったときも、セルシオを買ったときも、W140が欲しいと常に思っていたぐらいです。それにもかかわらず、私はずっとW140を買わなかったのです。



 もう10年近く前から、街ではW140を見かけなくなりました。そして、気づいてみると、きちんとしたW140を探すのが困難なぐらいな時代となっているのです。



 ですから、いい加減に買わないと一生買うことができないのではないかと思ったのです。



小学生のときから憧れていたW140を手に入れてみて感じたこと



 W140というクルマは、維持費がかかります。W140というよりも、国産車より輸入車のほうがお金がかかるのが正しいのですが、その「お金がかかる」というポイントは主に整備費用。これが厄介なのです。



 整備費用は、自分でそのクルマを所有しない限りわかりません。ですから、「年間いくらぐらいかかるのか」ということを予測するのが困難であるため、「時価」のお寿司屋さんの暖簾をくぐる気分だといえます。



 例えば、整備費用を分類するとこんな感じになります。



レベル1

・車検時の整備にお金をかけなくてもトラブルフリーで乗れてしまう(国産車)



レベル2

レベル1に弱点がプラス

・走行距離や経年劣化など、一定のタイミングで壊れ、修理費用が数十~百万円単位(国産車かつ、エアサス、アクティブサスペンション、ロータリーエンジン、など搭載車)



レベル3

・車検時の整備にお金がかかるが、次回車検時ぐらいまでトラブルフリー(輸入車)



レベル4

レベル3に弱点がプラス

・走行距離や経年劣化など、一定のタイミングで壊れ、修理費用が数十~百万円単位(輸入車かつ、エアサス、アクティブサスペンション、特殊機構の変速機、など搭載車)



レベル5

・車検時の整備にお金がかかり、なおかつ、次回車検時までの間にも、お金がかかるトラブルが発生する確率が高い(イタリア車、V12搭載のイギリス車など)



 つい先日、私のもとには、S500Lに対する10万円超の自動車税の手紙が届きましたが、整備費用に比べると、そんなモノは大したことがないのです。



 国産車の場合、整備費用について、そこまで気にしなくても良いのですが、輸入車の場合は、不具合を直したら「いきなり10万円!」ということも珍しくありません。



 私も、その点を覚悟してはいたのですが、W140を購入後、ずいぶんクルマが揺れるなと思って整備工場に全体的に見てもらったら、7万円の出費となりました。早速、洗礼を受けたわけですが、それでも私は今のところ満足しています。



 なぜなら、私のW140はお金をかける価値があると思っているからです。



 7万円の出費をする際、私は迷いました。今7万円かけたとしても、駄目なクルマだった場合、無駄な出費となるのではないかと思ったからです。



 しかし、このクルマは7万円かける価値があるとわかったのです。下回りにはサビがなく、オイル漏れもありません。W140としてはなかなか珍しい程度だといえます。



 1オーナーで、ずっとディーラー整備だったということですが、私はその点はまったく期待していませんでした。なぜなら、以前買ったW124型のEクラスは、同じくワンオーナーディーラー整備だったのに、買ってすぐにラジエーター交換(30万円ほどの整備)をする羽目にあったからです。



 それに対して、このW140は、乗り心地の悪さを我慢すれば、7万円の整備すらする必要がありませんでしたし、ベンツ専門の整備工場の方は「なにもしなくても2年ぐらいだったら乗れますよ」というぐらいの程度だったのです。



 買った当時は、落とし穴のような悪い箇所がないか心配だった私ですが、その整備工場の人の言う通り、確かに何もしなくても2年ぐらい乗れそうな調子だということが、乗る期間が長くなるにつれてわかってきました。



 だから私は、このクルマの整備費用として数十万円をかけて良いと思ったのです。



◆ゼロクラウンと比べてW140型Sクラスの維持費はどうか?



 仮にですが、年間の整備費用が25万円程度(車検が50万円)だった場合、その維持費は、普通車と比較して、高いことは確かですが、維持できないほど高いわけでもありません。



 ちなみに、私がゼロクラウンに乗っていたときの年間維持費は、ガソリン代込み(年間8000km走行想定)で約29万円。W140の整備費用が年25万円だった場合、その年間維持費は約63万円となるため、クラウンに対して年間34万円ほど高い維持費となるのです。



 これを安いと見るか、高いと見るかは、人によって異なるでしょうが、W140が好きな私としては許容範囲です。



 ちなみに、維持費が安い新車のクラウン600万円で買って数年後に250万円で売却するならば、10年ぐらい乗ったとしてもW140のほうが安い計算になります。



 大排気量や燃費が悪いクルマは、維持費が高いと思われるため、今の時代では敬遠されがちです。ケチな観点では、それは確かなことだと思うのですが、その一方で、楽しみも捨てたくはありません。



 魅力ある大排気量のクルマを検討するにあたって、「高い自動車税」と「燃費の悪さ」については、おおよそ事前に予測できます。そして、年間走行距離が1万㎞未満という使い方の場合、思ったほどの差額とならない場合もあります。



 特に、燃費の良い新車を買った場合と、燃費の悪い中古車を比較した場合、後者のほうが安い可能性があるぐらいです。



 そうはいっても、整備費用だけは予測するのが困難。ですから、私はこれまで輸入車を避けていたわけですが、今回はおおよその年間予算を設定することによって、チャレンジみる価値があると思っています。



 本当にクラウンより安くなるのかは、今後の整備内容次第ですが、私はそれをきっとこれから知ることとなるのでしょう。

斉藤由貴生】
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある





いかにもベンツ!というフロントマスク