「就業時間外にもかかわらず清掃時間として5分間拘束されていました。朝礼は始業開始5分前に行われていました。賃金未払いに当たるでしょうか?」。こんな情報が弁護士ドットコムのLINE@に寄せられました。

情報を寄せたのは青森県の製造業ではたらく男性(30代)です。男性の会社では長らく、始業時間前の5分間朝礼と終業時間後の5分間清掃がありました。役割分担してほうきと雑巾がけをおこない、タイムレコーダーの打刻も終業5分後にしていたそうです。

2019年2月下旬に、前触れもなく突然社内通達があり、現在は多くの人が就業時間内に朝礼と掃除を行うようになりましたが、管理職は引き続き始業前に朝礼が行われているそうです。

男性は「私の周りは管理側の人間ですから、異議などはありません。その話題に触れるのはタブーのようなものでしょう」と話します。

●「自発的、任意的」の場合は労働時間に該当しない

始業前の体操や朝礼、終業後の掃除の時間は「労働時間」にあたるのでしょうか。

髙田英治弁護士は「該当するかどうか判断するには、それらが使用者の明示または黙示の指示命令により行われているかどうかがポイントになる」と話します。

「具体的に説明すると、まず、労働者が始業前の体操や終業後の掃除などを自発的、任意的に行っているだけの場合は、『労働時間』には該当しません。自由参加のラジオ体操などが典型です。

他方、使用者によって始業前の体操や朝礼、終業後の掃除が強制されているような場合は、『労働時間』に該当します。例えば、会社の指示や就業規則などによって、それらの参加、実施が義務付けられているような場合です」

参加が強制なのか任意なのかがポイントになるようです。

●未払賃金、請求できる

男性の会社の従業員は、先々月までに拘束された分の未払い賃金は請求できるのでしょうか。

「今回のケースでも、会社の指示命令により始業前の朝礼や終業後の清掃が行われていたのであれば、その間も労働時間に該当しますので、特段の事情のない限り未払賃金を請求することができます。

未払い賃金を請求する場合、賃金請求権の消滅時効が2年とされている点に注意が必要です。今回のケースでは、既に時効期間が経過している未払い賃金もあると思われますので、これ以上未払い賃金が時効にかからないよう、速やかに会社に請求する必要があります。

また、時効期間が経過する前に会社に請求した事実を後から立証できるよう、請求は配達証明付きの内容証明で行っておくべきです」

●半年以内に支払いがなかったら訴訟をする必要がある

他に気をつける点はありますか。

「ただし、内容証明郵便で請求した場合でも、その後、6カ月以内に訴訟提起等を行わなければ、未払い賃金の時効は中断しません。したがって、内容証明郵便送付後、6カ月以内に支払いを受けられなければ、訴訟提起等を行う必要があります。

なお、社内で管理職といわれている立場の方であっても、就業前の朝礼や終業後の清掃時間について、未払い賃金を請求できるケースがあります。もっとも、実際に請求できるかどうかは具体的な職務内容や権限、待遇等によっても異なりますので、弁護士等への相談をお勧めします」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
髙田 英治(たかた・えいじ)弁護士
2009年弁護士登録。第二東京弁護士会所属。企業法務を中心に、会社・個人の法律問題を幅広く取り扱う。

事務所名:髙田総合法律事務所
事務所URL:http://www.takata-law.com/

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