アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ市で顔認証技術の禁止が可決された。
シリコンバレーが象徴するように、かねてよりテクノロジーの総本山のような街であったサンフランシスコ市が5月14日、監視技術を広範に規制し、公共機関が顔認証技術を利用することを禁じる条例を賛成8、反対1、棄権2で可決したのである。
現時点ではまだ発効しておらず、5月21日に2度目の投票を行われ、最終的に市長の署名がなければ施行されることはない。それでも、最初の重要な一歩が踏み出された形だ。
これは人権を無視し、監視カメラで常に追跡されるようなディストピアな世界を阻止するための動きだ。
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全国的なムーブメントになる兆し
これはサンフランシスコ市だけの問題ではない。
先進的な住人が暮らすこの街においてすらこうした議案が通過するならば、ほかの地方自治体でも追従する動きがあってもおかしくないと考えられるからだ。
「今回の件は、この技術につきものの潜在的な危険性に対して慎重な姿勢を示す人たちにとって、力強いメッセージとなったことでしょう」とミシガン大学で情報学を教えるサリタ・ヤルディ・シェーネベック氏は話す。
「ほかの自治体でも顔認証技術の導入に待ったをかけ、再考を促すような動きにつながる可能性は高いと思います。」
サンフランシスコ市の動きは、カリフォルニア州全体へ、さらには全国へと波及すると予想されるのだ。
すでに存在する監視カメラによるディストピア
この動きは突然生じたわけではない。
アマゾンのような大企業が顔認証技術を販売する昨今、世界各国の政府が、抗議集会やデモに参加しそうな人々を追跡し、その動向を把握するという陰鬱なディストピアを実現できる技術に取り憑かれているかのようだ。
このおそるべき社会は、たとえば中国の新疆ウイグル地区にすでに実在する。
ニューヨーク・タイムズは、中国政府が秘密裏に最先端の顔認証技術を使い、大半がイスラム教徒のマイノリティであるウイグル人たちを監視・管理していると報じている。
「中国で急速に拡大している監視カメラのネットワークには、顔認証技術が実装されており、その容姿に基づきウイグル人のみを見つめ、捜索や審査のためにその行き先の記録をつけている。」
地理や国境が、その拡散を防いでくれるわけではない。
その証拠に、エクアドルは中国製の監視カメラを全国に導入した。自由の国と呼ばれるアメリカであるが、顔認技術を提供しているのは、アマゾンやパランティアといった米国の企業だ。
人権侵害の恐れ。特に被害を被るのはマイノリティ
サンフランシスコ市の住人が中国製監視カメラに怯える必要はないだろうが、警察等が顔認証技術を使えば、それはまさに人権侵害である。
それらは特に有色人種や女性に対して誤差率が高い。電子フロンティア財団が認めているように、それは黒人やラテン系に対する歴史的なバイアスに起因するもので、それゆえに彼らへの過剰な監視につながる恐れがある。
シェーネベック氏もこれに同意し、「技術の使われ方を予測することは難しいものですが、顔認証技術に関する限り、それが人々のプライバシーを侵害し、一部の集団を差別的に扱うだろうことはすでに判明しています」と述べる。
禁止条例は状況を好転させるか?
では、今回可決された顔認証禁止は状況を好転させるだろうか?
「秘密監視禁止条例は、自治体機関が監視技術を利用・採用するにあたって、パブリックコメントを求めた上で、議会の承認を得ることを義務化するものです」と電子フロンティア財団のブログで説明されている。
そして議会が認可をするなら、議会自身が公共の場を守るために十分なプライバシーポリシーを定めねばならい。
電子フロンティア財団のナッシュ・シャド氏は、これについて、自治体や警察の信頼と説明責任を回復させる手助けになるだろうと話す。
「技術は透明性を高め、私たちの意思決定を手助けしてくれますが、新しい技術を採用するにあたっては、それが意図しなかった影響をもたらさないかあらかじめ検討してみねばなりません。」
新しい技術に人々が抱いている懸念を科学技術の専門家が真剣に受け止めなければ、その声はますます高まる一方だろう。
最先端技術と活動家の街サンフランシコは、顔認証技術の規制という国家的な議題を提案しているともいえよう。
References:Here's why San Francisco's vote to ban facial-recognition tech matters/ written by hiroching / edited by parumo
全文をカラパイアで読む:http://karapaia.com/archives/52274464.html
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