新型スープラの発表と合わせて、多彩な情報を簡単な操作で見ることができる車輌情報記録装置「TOYOTA GAZOO Racing Recorder」が販売店オプションとして用意された。

 このTOYOTA GAZOO Racing Recorderは、ドライバーのアクセルブレーキ/ステアリング操作や、エンジン回転数、シフトポジション、車速、加速度などの各種センサーの値、そして車両の位置/方位情報をSDカードに記録するデータロガーだ。しかしこのユニットの機能はそれだけではない。専用アプリにデータを読み込めば、記録した情報を推奨アクションカムで録画したインカー動画などと簡単に自動同期させ、ひとつの画面で見ることができるのだ。新型スープラの販売店オプションとして設定され、価格は9万1800円。

 上の画像は、5月末に無償でのリリースが予定されているその専用アプリ「GAZOO Racing Data Viewer」の画面。フェルナンド・アロンソ富士スピードウェイを新型スープラで走行した際のものである。上部左には上から車速、アクセル開度、ブレーキによる減速G、シフトポジションを表示。その右には、Microsoft Bing Maps上の富士スピードウェイのデータに、走行軌跡を表示したものだ。Bing Maps上には富士スピードウェイのコントロールラインのデータも埋め込まれており、ラップタイムの自動記録も可能。下部には動画ウインドウがあり、最大ふたつの動画を表示可能。その右はステアリング角度、回転数、デジタル表示の車速、車両にかかるGが1画面にまとめられている。




推奨アクションカムのソニーFDR-X3000。

 従来はこういった車両データと、録画したムービーを同期させるには非常に複雑な編集作業が必要だったが、TOYOTA GAZOO Racing Recorderと専用アプリを使えば車両データと動画を読み込ませれば自動で時間を同期し再生できる。これは、録画用として推奨されているソニーFDR-X3000/X3000RがGPSユニットを内蔵しており、ムービー本体だけでなくGPSからのタイムスタンプ情報も同時に記録していることを利用。これをTOYOTA GAZOO Racing Recorder側のデータにもあるタイムスタンプ情報とアプリ上で同期させている。

 自車の位置情報もGPSを使うのだが、TOYOTA GAZOO Racing Recorderは一般的なナビ用よりもさらに性能を強化。これはマルチGPSと呼ばれるもので、アメリカが運用しているGPS、日本の衛星測位システムのみちびき、そしてロシアの衛星測位システムであるグロナスの信号をキャッチ。状況に応じてもっともポジションが良い衛星からの信号を選択し、高周期でデータを読み取ることでサーキット走行時でもリアルタイムで正確なライン取りを記録している。

 車両データはOBD(オン・ボードダイアグノーシス)から取るのではなく、専用のラインを装着時に取り付ける。本来は整備時の診断用であるOBDポートは法規で決められている信号しか出していないからだ。またスポーツ走行時の高いGでもしっかり保持できるよう、取り付け位置や安全性も考慮して専用線を引くことを決定したという。

 また、TOYOTA GAZOO Racing RecorderSDカードへの保存だけでなく、Bluetooth機能も内蔵しており、スマートフォンとの連携も可能。データをスマートフォンに送りクラウドにアップロードすれば、リアルタイムで高度なテレメ−トリー機能が実現できる可能性も持たせている。開発を担当したトヨタ自動車の井上直也氏によれば、この機能のプロトタイプは社内イベントとして開催されてきたハイブリッドカーによる燃費競技、プリウスカップで使っていたそうだ。参加車両の車速や位置情報、ブレーキ操作に加えて燃料噴射量、EV回生量、バッテリー残量等のデータをサーバーアップロードしチームに配信していた。新型スープラ用のTOYOTA GAZOO Racing Recorderプリウスカップなどで得た知見を活用し着々と機能改良していったものだという。


「ユーザーの方に難しい操作を強いるのではなく、車両からの情報はレコーダー内で標準化して記録する。動画などとの時間同期などの作業はアプリにやってもらう、というのがこのシステム全体の特長ですね」と語る井上氏。標準化されたデータはさまざまな利用方法が考えられる。スポーツ走行だけではない使い方も今後は急速に広がっていくことが予想される。コネクテッドカーの新しい可能性を感じさせるオプションだ。

 TOYOTA GAZ00 Racingオフィシャルホームページでは、10人のレーシングドライバーが富士スピードウェイに新型スープラアタックする動画を公開中。WRCドライバー、ヤリ-マティ・ラバトラの左足ブレーキ操作も見ることができる。

https://toyotagazooracing.com/jp/gr/supra/impression/