「あなたは投資初心者ですか?」と聞かれたら、どのように答えますか。一見な単純な問いのようですが、なかなか難しい質問です。

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 たとえば投資を始めたくて勉強中という方は、初心者というより「投資未経験者」と言った方がいいかもしれません。一方で、投信(投資信託)も個別株式も実際に運用しているというだけで「初心者を卒業した」と言い切るには無理があります。

はっきりした定義はない

「投資初心者」にはっきりした定義はありません。単なる投資期間や銘柄、金額などでは語れません。

 金融機関は便宜上、「投資未経験者」「投資期間1年未満」「証券口座は持っているがリスク商品に投資してない人」のようなグループ分けをしています。しかし、大事なことは投資家自身が自分のことをどう捉えているか、です。

 ちなみに筆者が投資初心者と言う場合は、「興味があって勉強中だが投資未経験」という方から「投資を始めて1年未満」までの方をイメージしています。ただしこれが一般的であるというわけではありません。

 私見ですが、我が国における本当の資産運用は、iDeCo(個人型確定拠出年金)の対象枠が広がった2017年1月に始まり、つみたてNISA(少額投資非課税制度)がスタートした2018年1月から本格化したと考えています。とすると現在まで3年も経っていないわけです。そう考えると日本の個人投資家はほとんどが「投資初心者」と言ってもいいのではないでしょうか。

大きな下げ相場を経験しているか

 あるリート(不動産投資信託)専門の著名アナリストは「リーマンショックを経験していない銘柄が投資・運用戦略などをいくら上手に説明しても割り引いて聞いている」と言っています。言い換えると、リーマンショックのような大きな下げ相場を経験して生き残った銘柄には、そこでしか得られない経験とノウハウが蓄積されていて、今後の運用成果に必ず役立つというのです。

 リーマンショック時(2008年)の国内リートの年間騰落率は約-63%。リートはその制度上、内部留保をほとんど吐き出しているので、当時のファンド運営には相当な苦労があったはずです。それを乗り越えた銘柄なら、今後も大崩れすることなく淡々とリターン(リートの場合は分配金)を積み上げていくだろうという見方です。

 同じことは個人投資家にも言えるのではないでしょうか。長期の資産運用は積み立て投資を基本に、未来のリターンに期待すること。その過程で忘れることができないような出来事(資産価値の暴落など)を経験し、それを乗り越えて投資を続けている――。これが投資初心者を卒業したかどうかの試金石のひとつになります。

バランス型やインデックス型は初心者向き?

 気をつけたいのは「これは初心者向けです」と紹介される金融商品です。自戒を込めて書きますが、多くの個人投資家は「初心者向け」と言われると自分に向けた、もしくは自分にふさわしい商品なのだろうと“錯覚”してしまいがちです。「初心者向け」はとても間口の広い、ある意味で売る側にとって使い勝手のよい言葉なのです。

 初心者向けと言われる投信としては、バランス型やインデックス型などが挙げられます。国内外の株式・債券・不動産に投資するバランス型は、1本の投信で分散投資ができてしまいます(投資コストを含めた合理性は別として)。日経平均株価に連動するインデックス型は、身近さとわかりやすさという点がメリットであることは間違いありません。

 いずれも「理解しやすい」投信であるとは言えます。自分が理解できる商品に投資することは確かに基本中の基本。しかし、それだけで「初心者に向く」と決めてよいのか、疑問が残ります。

初心者もベテランもゴールは同じ

 実のところ、投資や資産運用の世界には初心者ベテランもないのかもしれません。なぜなら、ゴール(目的)に違いがないからです。すなわち、老後の生活資金を現役世代のうちから準備すること。準備したい金額と無理なく投資できる金額にこそ違いはあるでしょうが、多くの個人投資家の目的は同じだと思います。

 自分が勉強して納得できれば、最初の投信が外国株式のアクティブ投信でもいいでしょう。何十年も投資経験がありバブルリーマンショックを経験したベテラン投資家(といってよいのかはさておき)がバランス型投信を選ぶこともあるでしょう。

 金融機関の説明のなかに「(この投信は)初心者向き」という言葉がよく出てきます。しかし、それが自分自身に適した投信であるかどうかの判断には熟慮が必要です。金融機関にはアカウンタビリティ(説明責任)が強く問われることから、相対的に保守的な説明をしがちです。リターンが期待ほど伸びなかったり、元本割れが生じたりした場合の理由を説明しやすい商品を推す傾向があることは覚えておきましょう。

どの資産が高リターンを得るかは予測できない

 投資の世界には初心者ベテランも、そして専門家も存在しないと考えておくのが賢明です。投信評価のモーニングスターは、過去10年間における投資資産(アセットクラス)別の年間騰落率(円換算)をまとめています(https://www.morningstar.co.jp/world_index/)。

 それによると、2018年に+6.7%でトップだった国内REIT(リート)は、前年が-10.4%で最下位。同じく-18.1%だった新興国株式は、前年が+28.6%でトップでした。他の資産を見ても年ごとの騰落率と順位はバラバラになっています。毎年高リターンを得るアセットクラスを予測して投資することは現実的ではありませんし、専門家でも不可能、ということです。

 一方で、国内外の株式と債券に分散させながら投資を続けたとするとどうなるか。次のグラフのような結果が出ています(毎年同額を投資した場合の各年末時点での累積リターンhttps://www.fsa.go.jp/news/30/20190213/01.pdf)。

 国内・先進国・新興国の株式・債券に1/6ずつ投資すると20年後の累積リターンは92.7%(年平均4.6%)、国内の株式・債券に半分ずつ投資すると49.4%(年平均2.5%)、定期預金だけだと1.24%(年平均0.1%)という結果です(ただし投資コストと税金は考慮していない)。これは、長期・分散投資でリスクリターンを平準化することで相応の投資成果が期待できることを示しています。

 結局のところ、初心者も専門家も長期分散投資によってリターンを期待するしか合理的な方法がない、と理解しておきましょう。自分が投資初心者と考えるかどうかは、あまり意味をもちません。金融機関の「この商品は初心者向きです」という言葉を鵜呑みにせず、自分自身のゴールと無理のない資金を意識して投資を始めたいところです。

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