ゴールデンウィークの真っ只中となる5月2日、ReoNaが自身初のアコースティックライブを2公演続けて開催した。1公演目は、彼女のオフィシャルファンクラブ「ふあんくらぶ」会員限定のカバーを中心としたライブ“ふあんぷらぐど”。そして2公演目は、主に自身の楽曲でセットリストを組んだ“ハロー、アンプラグド。”。その舞台となったのは、普段はクラシック音楽のコンサートが行われる浜離宮朝日ホールだ。両公演とも彼女の歌を支えるのはギターとピアノのみ。卓越した歌唱力と表現力が求められるその環境において、彼女は我々の期待を遥かに凌駕する、素晴らしいステージを見せてくれた。ここではその2公演の模様をレポートする。

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“ふあんぷらぐど”はまだ日が高い15時に開幕。楽器とイスのみが置かれた簡素なステージに、淡い緑色のワンピースにクリーム色のライダースジャケットを合わせたReoNaが姿を現すと、まずは「ふあんくらぶのみなさんこんにちは。ギターの音色、ピアノの響き、お歌の世界に浸ってください」と落ち着いた口調で挨拶。そしてライブはガンズ&ローゼズ「Sweet Child O’ Mine」のカバーからスタートする。彼女はYouTubeの公式チャンネルにもこの楽曲のカバー動画をアップしているが、メジャーデビュー以降のライブで歌うのは今回が初めて。シェリルクロウをはじめ様々なアーティストが好んでカバーしてきた80年代ロックの名曲を、発表当時にはまだ生まれてもいなかったReoNaが、流暢な英語の発音とともに情感を込めて歌い上げる。

続いて歌われたのはエド・シーラン「The A Team」。アコギとピアノのみのフォーキーなアレンジが実に心地良く、ReoNaもスツールに腰かけながら繊細な美声を響かせる。さらに「次はとあるアニメ映画の曲」と前置きし、『君の名は。』のラストシーンを印象的に彩ったRADWIMPSなんでもないや」を披露。やさしく語りかけるような歌い出しから、徐々に熱が高まっていき、最後には感情をすべて解き放つかのようなロングトーンで聴衆を楽曲の世界観へと引き込む。本人は「この曲を聴くと今でも映画の中の風景がありありと浮かびます」と語っていたが、しっかりと自分らしい表現で新しい景色を見せてくれていたように思う。

ここでメンバー紹介を挿んだあとは、前回のツアー“Wonder 1284”時に行ったアンケートで「好きなReoNaの楽曲」の2位と3位に選ばれた楽曲を歌唱。まずは3位だった「虹の彼方に」をピアノの伴奏をバックに胸を締め付けるような歌声で、続いて2位の「トウシンダイ」を、歌詞に合わせて真っ赤に染まる照明演出に照らされながら、ドラマティックに紡ぎあげていく。

気になるアンケートの第1位は最後のお楽しみということで、今度は再びカバーコーナーへ。「どれだけの昨日を積み重ねても、今日こうして過ごしたこと、忘れないでいてほしいな」と語ってビートルズYesterday」をゆったり歌うと、続いてはナノウハロ/ハワユ」をリズミカルな演奏に息を合わせて伸びやかに歌う。さらに『BLEACH』EDテーマとしても知られるRie fu「Life is Like a Boat」で親密な空気を作り、そこからボブ・ディラン「Knockin’ on Heaven’s Door」のカバーで、会場の厳かなムードも手伝ってどこか神々しさを感じさせる名演を見せてくれた。

そして「次もとあるアニメ映画で流れた曲」と、山崎まさよしOne more time, One more chance」をしっとりとカバー。アニメファンには新海 誠監督の映画『秒速5センチメートル』の主題歌としておなじみのナンバーだ。さらに「楽しい日、幸せな日があれば、ついてない日も必ずやってきて。でもそんなついてない日も過ぎ去って、思い出になればいいな」と語り、ダニエル・パウター「Bad Day」(邦題は「バッド・デイ~ついてない日の応援歌」)をパフォーマンス。夕焼け空が暮れていくように移り変わるライトの色が、まるで一日の終わりと、その先に続く明日を示しているかのようだ。

ここまで貴重なカバーをたっぷりと披露してきたReoNaだが、ライブを締めくくるのはやはり自身のオリジナル曲。まずは彼女にとっても大切な曲になった『ソードアート・オンライン アリシゼーション』のEDテーマ「forget-me-not」を、凛々しさと爽やかさを増したアコースティックアレンジで届け、最後は先ほど話していたアンケートの第1位に選ばれた曲であり、彼女に歌う理由を与えてくれた『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』の神崎エルザ starring ReoNa名義の楽曲「Rea(s)oN」。ミラーボールが回転してステージに幻想的な光を投げかけるなか、自らが歌う意味を、生きる意味を、“あなた”がいるだけで命は輝くということを、朗々と歌い上げるReoNa。ファンのみんなが愛する楽曲を力強い歌でしっかりと届けて、ファンクラブ限定ライブは幕を閉じた。

そして日がすっかり落ちた19時半頃、この日2公演目となる“ハロー、アンプラグド。”が幕を開けた。ステージは引き続き楽器のみが置かれたシンプルなセットだが、ReoNaは先の公演とは違って、スツールには座らず、ずっとスタンディングでパフォーマンス。ライダーズジャケットはそのまま、今度は紺色のワンピースを着用したReoNaは、先ほどはライブ終盤に披露した「forget-me-not」からライブをスタートさせる。開幕曲ということもあってか、歌声も演奏もさっきより心なしか軽やかな印象だ。

「自分自身の世界にどっぷり浸ってもらえたら、楽しんでもらえたらいいな」と挨拶した彼女は、続いて神崎エルザ starring ReoNa名義のナンバー「Disorder」を歌唱。いつものライブではアッパーなサウンドで会場を蹂躙する同曲だが、この日はグッとテンポを抑えて、イントロのピアノフレーズからブルージーで大人っぽい雰囲気が漂う。ReoNaも静かに情念が立ち昇るような歌声で普段とは全く異なるアプローチを見せる。このように馴染みの楽曲をいつもとは違ったアレンジで楽しめるのも、アコースティックライブならではの醍醐味だろう。

そこから「トウシンダイ」を挿み、今度はいつも愛用しているフレットに猫のシールを貼ったアコースティックギターを手にして、「1年と少し前、初めてみんなのもとに届いたお歌」と紹介した「ピルグリム」を歌唱。彼女が神崎エルザ starring ReoNaとして歌い、アニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』の挿入歌として初めてテレビから流れた楽曲だ。冒頭の歌い出しの部分は自らのギターのみで弾き語り、サビからはバックメンバーの演奏も加わって一気に明るい景色が広がる。クラシック音楽の定番曲であるパッヘルベルカノン」をメロディのモチーフにしているだけに、会場の雰囲気にもぴったりとハマっていた。

さらに神崎エルザ starring ReoNa名義のミニアルバム『ELZA』収録曲である「レプリカ」「ヒカリ」「step, step」をメドレー形式で歌って、作品内では人気の歌姫として知られる神崎エルザの世界観を現実に落とし込むと、続いて「ここからは少しほの暗い世界をアコースティックで」と語り、「それではみなさん、おやすみなさい」という決め言葉を合図に自身のオリジナル曲「おやすみの詩」へ。明滅するライトが激情感を演出するなか、内に沸々とした感情を宿した力強くも端正なボーカルで聴く者を圧倒する。そこからアバンギャルドなピアノの音で始まった神崎エルザ starring ReoNaの楽曲「Independence」も凄まじく、疾走感を煽る演奏とそれに負けじと迫力を増した歌声はまさに圧巻の一言だ。

その激しい2曲から一転、ReoNaが次に歌ったのはTVアニメ『ハッピーシュガーライフ』の挿入歌に使われた「カナリア」。“リスアニ!LIVE 2019”に出演した際にも、初めての日本武道館のステージという大舞台にも関わらず、アコギのみをバックに堂々のパフォーマンスを行って話題となったナンバーだ。この日もそのときと同じく堀崎 翔が静かなトーンのギター演奏で彼女の歌を支え、飛び立ってしまったカナリアとのすれ違った気持ちを繊細に表現していく。

その後のMCで、「もう限界だと思ったときに〈大丈夫だよ、あなただけじゃないよ〉って、言ってもらえたらいいのになと思っていて」「共感が癒しだったし、救いだった。だからそんな、絶望に寄り添えるような絶望をお歌に込めたい」と、自ら掲げる「絶望系アニソンシンガー」としての矜持を示すと、そんな気持ちを形にした、彼女がデビュー前から歌っている初めてのオリジナル曲「怪物の詩」を歌唱。ライトがステージを赤く染めるなか、もがきながらも愛を求めて叫ぶ彼女の姿に、誰もが目を離せなくなる。

そして「つらいとき、つらいと言えたらいいのにね」との言葉に続いてAqua Timez「決意の朝に」のカバーを披露すると、ReoNaは再び自身のギターを手に取って、神崎エルザという自身に歌う理由をくれた原点を示す歌「Rea(s)oN」を歌唱。自ら弾き語るその姿は、アニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』の最終話神崎エルザがこの楽曲を歌っていたシーンと重なる。

さらに『ソードアート・オンライン アリシゼーション』のことに触れ、「幸せな時間があったからこそ別れの痛みは増して。なら最初から出会わなければ、楽しい時間なんてなければ、心なんてなければ、別れを惜しむこともなかったのでしょうか。道はここで分かれるけど、思い出はここにある。永遠にここにある」と語って、ユージオの心情に寄り添った挿入歌「虹の彼方に」をエモーショナルに歌唱。曲が進むにつれて感情を高ぶらせていくようなその歌声が胸を打つ。そして最後はReoNa名義で初めてリリースした楽曲「SWEET HURT」で締め。穏やかな演奏が心温まる景色を作り上げ、そこにReoNaの慈愛を帯びた歌声がすべての聴衆に平等に降り注ぐ。ライブでアンコールを行わない彼女は、いつもの「じゃあな」という挨拶をオーディエンスと交換し合ったあと、客席に丁寧にお辞儀をして回って、幸せそうな笑顔でステージを去っていった。

ReoNaにとって初めての挑戦となった今回のアコースティックライブ。先にも書いたとおり、“リスアニ!LIVE 2019”出演時のパフォーマンスがあまりにも印象的だったため、開演前から間違いなく素晴らしい公演になることは予想していたが、この日は生音での音響を重視したクラシックコンサート向けの会場というロケーションや、“ふあんぷらぐど”での洋楽カバーを多く織り交ぜたセットリストを含め、他では経験しがたい彼女の魅力を堪能できた公演だったと思う。この秋には6か所を回る全国ツアー“ReoNa Live Tour 2019“Colorless””、10月20日(日)にはZepp Tokyoでのワンマンライブ“ReoNa ONE-MAN Live “Birth 2019””を控えている彼女だが、ぜひまた近いうちにアコースティック編成でのライブも企画してほしいところだ。

Text By 北野 創(リスアニ!
Photography by 山本哲也

ReoNa Acoustic Live “ふあんぷらぐど”
2019.05.02@浜離宮朝日ホール
セットリスト
M1. Sweet Child O’ Mine
M2. The A Team
M3. なんでもないや
M4. 虹の彼方に
M5. トウシンダイ
M6. Yesterday
M7. ハロ/ハワユ
M8. Life is like a boat
M9. Knockin’ on Heaven’s Door
M10. One more time, One more chance
M11. Bad Day
M12. forget-me-not
M13. Rea(s)oN

ReoNa Acoustic ONE-MAN Live“ハロー、アンプラグド。”
2019.05.02@浜離宮朝日ホール
セットリスト
M1. forget-me-not
M2. Disorder
M3. トウシンダイ
M4. ピルグリム
M5. レプリカ~ヒカリ~step, step〈special medley
M6. おやすみの詩
M7. Independence
M8. カナリア
M9. 怪物の詩
M10. 決意の朝に
M11. Rea(s)oN
M12. 虹の彼方に
M13. SWEET HURT

●ライブ情報
「ReoNa Live Tour 2019 “Colorless”」
9月21日(土)BIGCAT(大阪府
OPEN 17:00 / START 18:00 問)夢番地 06-6341-3525
9月29日(日)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3(埼玉県)※女性限定ライブ
OPEN 17:30 / START 18:00 問)ホットスタッフ・プロモーション 03-5720-9999
10月5日(土)DRUM LOGOS(福岡県
OPEN 17:00 / START 18:00 問)キョードー西日本 0570-09-2424
10月10日(木)仙台 Rensa(宮城県
OPEN 18:00 / START 19:00 問)キョードー東北 022-217-7788
10月12日(土)THE BOTTOM LINE(愛知県
OPEN 17:00 / START 18:00 問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
10月18日(金)cube garden(北海道
OPEN 18:30 / START 18:00 問)マウントアライブ 011-623-5555

チケット:自由 ¥5,000(整理番号付 tax in/drink 代別)※4歳以上チケット必要
ReoNa オフィシャルファンクラブ「ふあんくらぶ」会員先行予約(抽選)
5/20(月)23:59mで受付中
※お一人様2枚まで

「ReoNa ONE-MAN Live “Birth 2019”」
10月20日(日)Zepp Tokyo(東京都
OPEN 17:00 / START 18:00
チケット:自由 ¥5,500(整理番号付 tax in / drink 代別)
※4歳以上チケット必要
ReoNa オフィシャルファンクラブ「ふあんくらぶ」会員先行予約(抽選)
5/20(月)23:59まで受付中
※お一人様2枚まで

関連リンク
ReoNa オフィシャルファンクラブ「ふあんくらぶ」サイトReoNa オフィシャルサイト神崎エルザ starring ReoNa オフィシャルサイト
リスアニ!

掲載:M-ON! Press