(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家

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古賀氏も、亀井氏も、同時選挙やるべし

 自民党岸田派に依然として大きな影響力を持っていると言われる古賀誠元自民党幹事長と安倍首相をはじめとする政界に、歯に衣着せぬ発言を繰り返し行っている亀井静香元金融担当相が、4月8日日本テレビの深層NEWSに出演して、ダブル選挙の可能性について語った。

 亀井「やるのが当たり前でしょ。既定事実だよ。(ダブル選挙)やるよ。安倍首相がバカでない限りはやるよ」

 古賀「これは珍しく(亀井氏と)珍しく一致するね。ダブルの可能性高いと思う。また、やるべきだと思う」

 古賀氏はこの見立ての理由として、今年(2019年)秋に消費税増税を控え、来年には東京オリンピックを控えており、安倍首相の残りの任期(任期は2021年9月)を考えると勝負に出るタイミングは少ない。だからこの夏にダブルに打って出る可能性が高い、と語っている。

 さすがに古賀氏の読みには説得力がある。

「解散の大義」とは何か?

 菅義偉官房長官も解散風を吹かせ始めている。5月17日記者会見で、「不信任案提出は時の政権が衆院解散を行う大義になるか」との質問に対し、「それは当然なるんじゃないでしょうか」と語った。こんな議論は初めて聞いた。

 内閣不信任案が可決されれば、内閣総辞職か、衆院かの解散総選挙になることは、憲法第69条に規定されており、この場合の解散には大義がある。だが不信任案が提出されただけでは、「解散の大義」にはならない。現にほとんどのケースでは、与党が否決して終わっている。

 いくつかの例外はもちろんある。1983年11月中曽根内閣による「田中判決解散」は、ロッキード事件で元首相田中角栄に実刑有罪判決を下されたことが契機となっていた。野党が田中の議員辞職決議案の提出をめぐって国会が空転している中で、闇将軍と言われた田中角栄がみずからへの批判をそらすために、中曽根首相をそそのかしてやらせたと言われている。

 2000年6月、森喜朗内閣での「神の国解散」は、同年5月、神道政治連盟国会議員懇談会で「日本の国、まさに天皇を中心としている神の国である」という発言したことに対し、「政教分離原則に反する」として批判が高まり、内閣支持率も大きく低下した。そこで野党が内閣不信任案を提出したその日に、森首相は解散に打って出た。

 2005年8月の小泉内閣による「郵政解散」も記憶に新しい。郵政民営化法案が否決された場合には解散すると公言していた小泉首相は、解散詔書への署名を拒否する閣僚を罷免してまで解散を強行し、大勝利を収めた。

 この3つの解散のうち、「田中判決解散」「神の国解散」では自民党は大きく議席を減らした。大勝したのは、「郵政解散」だけである。前2つは、解散に大義がなかったからである。解散に大義があるかどうかは、野党が不信任案を提出するか否かなどで決まるものではない。解散によって国民に何を問うかによって決まるのだ。

「統一名簿方式」提案の黒幕は連合か

 当然のことだが野党もダブル選挙に備え始めた。5月17日、立憲民主党の枝野代表は、「衆参ダブル選挙になる可能性もかなり出てきたと思っている。局面が大きく変わったと言ってもいい。我々は野党第1党の責任として、今の政権の暴走を食い止め、これに代わり得る政権の選択肢とならなければならない。そのことに向けて今の与党とその補完勢力を最小化する」と語った。

 立憲民主党と会派を組む岡田克也元外相も、「参院選で野党がまとまると与党にとって不利な状況になる、従ってダブル(衆参同日選)で乗り切るということを(安倍政権は)考えていたが、逆に、野党の今の状況を見て、景気の先行きも不透明な中で今やって野党を潰しにかかる。そういうダブルはあるのかなと思っている」と語っている。

 こんな中で国民民主党の大塚耕平代表代行が、立憲民主党が中心となって、比例代表で野党側の統一名簿を作成すべきだという考えを示したことが注目される。今年1月29日小沢一郎氏と会食した連合(日本労働組合総連合会)の神津里季生(こうづ・りきお)会長は、両氏の間で統一名簿の必要性で一致していた。神津氏は翌30日、記者団に「野党が力を合わせているという姿を象徴的に示すのが統一名簿だ」と語り、意欲を示したそうである。

 なぜ連合が統一名簿に熱心なのか、2つの理由があると思われる。

 第1は、連合の“股裂き”状態をなくすためである。連合は、参院選に組織内候補として10人の擁立を準備している。5人が立憲、5人が国民の比例代表で立候補する予定である。だが支持率が低迷する国民民主党から当選できるのは、せいぜい2人程度と見ているようだ。立憲民主党との統一名簿なら、もっと当選できるというわけである。

 第2は、統一名簿といってもすべての野党が対象ではない。要は立憲民主党と国民民主党の統一名簿ということだ。だとすれば自動的に共産党を排除できることになる。

 だが、1人区では共産党社民党の支持を受けながら比例ではこれらの党を無視するなどということを他の野党が認めるのは、いかにも困難であろう。

 しかも肝心の立憲民主党の枝野代表は、原発政策を例にあげ、「180度違う政策の候補を同じ名簿に載せたら(有権者は)投票しない」「自分の1票で自分の意見と違う人が当選するかもしれないと分かると、わが党の支持者は入れてくれなくなる」と指摘、「統一名簿をやりたい方はわが党以外で進めてほしい」と明確に拒否している。筋が通っている。

ダブル選挙は「行き詰まり解散」という志位氏

 この中で独自の分析をしているのが共産党の志位委員長である。

 5月16日記者会見で、「消費税増税に突っ込んだら、日本経済を壊してしまうことになるが、延期となれば、深刻な安倍政権の責任が問われる。安倍政権が行き詰まりを打開するため、衆議院の解散に打って出る『行き詰まり解散』の可能性はある」と語っている。

 不思議な見解である。安倍政権が消費税増税の中止を決めたとすれば、共産党の主張通りのことを実行したということになる。文句を言う前に、「それが正しい」と言うべきではないのか。もちろん言わんとするところは分かっている。“安倍政権が経済運営に失敗したから、増税できなくなった”と言いたいのだろう。ただこれだと経済運営に失敗していなかったら、「増税しても良い」と言っているように思える。

 事実、5月12日NHK日曜討論で共産党の笠井亮政策委員長は、「景気悪化のなかで消費税を増税した例は過去に一度もない」ということを指摘して、増税中止を迫っている。この論理は、“景気が良ければ上げてもいいですよ”と言っているのと同じことになる。何という愚かな主張だろうか。

 そしていつもの“相手は行き詰まっている”という調子づけのような、無責任な分析だ。

 5月12日に行われた共産党第6回中央委員会総会で志位委員長は、統一地方選挙について次のように語っている。「政治を変える希望と展望を語りました。わが党の訴えは、論戦全体をリードし、有権者の願いや関心にかみあい、共感を広げました」。論戦をリードし、共感を広げたそうである。であれば相当議席が増えたのかと思うと、前回比、道府県議選で111議席から99議席に、政令市議選で136議席から115議席に、区市町村議選で1088議席から998議席に、合わせて123議席も減らしているのである。

 大阪で維新政治を批判し、行き詰まっていると言っていたが、行き詰まっているのは、どう見ても共産党のようだ。

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